「顔つきや表情が変わっていった」子役たちと戦争を学びながら撮影『わたしの知らない子どもたち』二階堂ふみも駆けつけトロントで盛況

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「顔つきや表情が変わっていった」子役たちと戦争を学びながら撮影『わたしの知らない子どもたち』二階堂ふみも駆けつけトロントで盛況


初主演を務める新人・小八重葵美(こやえ あみ)と、世界をまたにかけて国際的に活躍する二階堂ふみをW主演に迎えた『わたしの知らない子どもたち』が、第51回トロント国際映画祭(TIFF)の唯一のコンペティション部門である【プラットフォーム部門】へ正式出品。そのレポートが到着した。

現地時間9月10日~9月20日に開催されたトロント国際映画祭にて日本映画史上初となる、同部門のオープニング上映作品に大抜擢された本作(英題『Children Untold』)。

9月10日の記念すべきオープニング上映には、映画『永い言い訳』以来、10年ぶりに現地に訪れた西川美和監督と、本作が初主演となる小八重が登壇。

上映後、観客からは「本当に心に響く映画です。過去を描いた作品でありながら、物語全体が今の時代にも非常に通じるものだと思います」「子どもたちの存在は強く心に響きます。表情や感情がカメラを突き抜けてくるような力があります」という感動の声が届いた。

さらに、海外メディアからも本作を絶賛する声が多数寄せられた。


「『Children Untold』は、重厚でありながらも優しさを湛えた作品で、観る者の心の奥深くに入り込んでくる力を持っている」(NEXT BEST PICTURE/Anna Miller)、「笠松則通による心を揺さぶる撮影と、原摩利彦による豊かな音楽は称賛に値する。アンサンブル・キャスト全員の演技も素晴らしく、とりわけ子どもたちの演技が際立っている」(THE CONTENDING/Frank J. Avella)「小八重葵美演じる琴子は、最近観た子役の演技の中でも屈指の素晴らしさを見せている」(ASIAN MOVIE PULSE/Panos Kotzathanasis)、「西川は、メランコリーや不条理さ、さらには独特の悲しみに満ちたユーモアの感覚を、より大きく取り入れている」(DMOVIES/victorfraga)「『Children Untold』は、時にかなり身近に感じられる作品でありながら、紛れもなく力強い映画だ」(GAVIN LOVES MOVIES/Gavin Harriss)など、作品のクオリティや主演である小八重の演技が評価されている。

小八重葵美に「この子しかいないと感じました」と監督


翌9月11日の上映後のQ&Aには、西川監督とともに、劇中で親を亡くした子どもたちの保護施設の館長、鷹間乃生を演じた吉田羊がサプライズで駆けつけ登壇。

本映画祭を通して主演である小八重の演技や存在感が評価されている中、西川監督が「(小八重)葵美ちゃんはオーディションで、透明感のあるキラキラした瞳に引き込まれて、この子しかいないと感じました」と語ると、シリアスからコメディまで演じ切る確かな実力で数々の名作を支えてきた吉田も深く頷きながら、監督の言葉に共感を示していた。

また、国内外で評価され、本作でも存在感を放つ役所広司について監督は、「前作の『すばらしき世界』(20)で主演だった役所さんは、本作の制作についても気にかけて度々ご連絡くださいました。切り札として役所さんに漁師の山井甚平という役を演じていただきました」と前作から続く名優との信頼感溢れる交流についても語った。

西川監督は撮影時に難しかったことを聞かれ、「子どもたちは日本の法律で20時までしか撮影できず、さらに夏の真っ暗になる時間が19時半という撮影状況でした。孤児たちは夜中も活動しているような役ではあるので、デイ・フォー・ナイト(日中に撮影した映像を夜間のシーンに見せる撮影・編集方法)での撮影など工夫していました。
また、役柄的に子どもたちが精神的に傷つかないようにという部分もケアしながら撮影していました」と子どもたちの活躍をメインとした作品としての難しさを語った。

「この映画を広めてください」吉田羊、英語でコメント


続いて、本作への出演について聞かれた吉田は「西川監督といえば日本で活動するすべての俳優が一度は監督の作品に出たいと感じるくらい、素晴らしい監督の一人です。そんな監督から今回のお話をいただいて、飛び上がるほど喜び、二つ返事で何としてでもスケジュールをこじ開けて、この作品に参加させていただきました」と、監督への並々ならぬリスペクトと参加への喜びを熱弁。

さらに自身の役について、石綿貞代さんという、戦後に私財をなげうって戦争孤児の救済に取り組んだ方を参考にしたことを語り「友好的で子どもに対しても愛情がある“優しいみんなのお母さん”というようなイメージで演じていましたが、監督からは『もう少し怖い感じで演じてください』という指示を受け、監督は本作で子どもたちから見たこの時代の大人たちや、大人への恐怖心というものも植え付けた戦争を描きたいのだなと解釈して演じさせていただきました」と監督が描こうとするテーマを見据えた役作りに付いて明かした。最後に吉田は「Please spread this film to all.(この映画をみんなに広めてください)」と流ちょうな英語で語り、西川監督は「私が本作を作ったときの目標の一つとして、子どもや若い人たちに観てほしいという思いがあります。戦争が暮らしにどのような影響を及ぼすのか、子どもたちを傷つけるのか、ということを世界中の人たちが知る機会になればと思っています」と真摯な想いを語ると、共感するかのように会場全体が温かい拍手で包まれた。

万雷の拍手と涙に包まれた公式上映!二階堂ふみも駆けつける


さらに、9月19日の2回目の公式上映には西川監督に加え、ドラマ「SHOGUN 将軍」シーズン2の撮影を終えたばかりの二階堂ふみも登壇。

上映後、観客から大きな拍手で迎えられ、西川監督は「とても感激しています。
これだけ大きなスクリーンで沢山の現地の方に観ていただけて、反応がとても気になっていましたが、上映後のお客さんの目にも涙が浮かんでいたり、とても温かい感想もいただけました」と現地での手応えを語る。

二階堂も「皆様の反応を観ながら非常にこみ上げてくるものがあり、今も世界中で戦争が起きている中で、戦争孤児たちに思いを寄せる時間になっていたのではと思います」と胸を熱くさせながら、国境を越えて本作のメッセージが届いている実感を噛み締めるように観客の温かい反響に感無量の面持ちで語った。

琴子(小八重)の元教師であり、戦後の波乱の状況下で希望も失いながら生きる曽根というキャラクターを演じた二階堂は、「私の祖母が沖縄戦を経験していたということもあり、第二次世界大戦、太平洋戦争で起こったことについては非常に多くのことを学ばせていただく機会がありました。その中でも戦後の女性がどのように生きていたか、ということにあまり触れられていないケースも多かったので、資料や当時を知る方たちの証言などを元に演じさせていただきました」と丁寧に役作りを重ねたことを明かした。

子どもたちと戦争を学ぶ「とても貴重で長い時間」


現地の観客からの質問タイムも設けられ、キャスティングのプロセスについて聞かれた西川監督は、「子どもたちは本当に大変でした。主演の琴子役はピアノを弾かなければならないのですが、みんな最初からショパンやドビュッシーを弾けるわけではないので、撮影の1年以上前からオーディションを始めました。主演の小八重葵美ちゃんは内側にパッションと負けず嫌いな性格を持っていて、みなぎる自信がある子で、彼女のキラキラ光る瞳を見たときに満場一致で決定しました」と明かす。

さらに「現在の日本の子どもたちは過去の戦争について学んだり、当時の方の証言を直接聞いたりする経験も少なくなっていて、まずは若いスタッフと一緒に優しい勉強から始めました。
演じる子どもたちがどのような境遇なのか、親や家を失くすということはどのような気持ちなのかということを、週末ごとに集まりながら時間をかけて蓄積していきました、とても貴重で長い時間でした」と、戦争を知らない子どもたちのために丁寧に学びの時間を作りながら制作した背景を語った。

一方、長い時間をかけた子どもたちのキャスティングとは違い、大人のキャスティングについて「安心して任せられる俳優がいいなと思い、二階堂ふみさんに決めました」と二階堂へ寄せる大きな信頼を明かした。

「演じたような子どもたちが世界で増えてほしくない」子役たちの思い


続いて、撮影を通じて琴子を演じた小八重をはじめ劇中で仲間になる5人の子役たちの変化について西川監督は、「主人公の琴子は都市の爆撃を避けるために地方に疎開をしますが、そもそも彼らは“当時子どもたちが疎開をしていた”ということについて、知らない状態から始まりました」と話す。

「幼い子どもが戦争の過去や歴史に向き合うことは、精神的なショックがある可能性がありますし、楽しい時間とは言えなかったと思います。それでも劇中で琴子を含めて仲間となる5人の子役たちは、一緒に長い時間をかけながら少しずつ学習し、当時の子どもたちの境遇を想像したりする中で、戦争というものは今後起きてほしくないし、自分が演じたような子どもたちが世界で増えてほしくない、という感想を持ってくれていたと思います」と語る。

二階堂も「撮影中で子どもたちと直接会う機会は多くはありませんでしたが、撮影前のリハーサルでお会いした時から、撮影を重ねるごとに皆の顔つきや表情が変わっていきました。演じるということで当時の子どもたちの経験を追体験して学んでいるようにも感じました」と子役たちの成長について思いを馳せていた。

また、撮影にかかった時間と子どもたちの精神的サポートについても聞かれ、西川監督は「撮影自体は三か月強ほど。
大人のキャストと違い、子どもたちは予期せぬこともあると懸念していたので、日本の映画撮影にしてはかなりゆったりとしたスケジュールを組んでいました」と明かす。

さらに「インティマシーコーディネーターからもアドバイスをもらい、週に1回ほど定期的にカウンセリングを受けながら撮影を進めていきました」と戦争のテーマを扱うからこそ、子どもたちへのケアも慎重に行っていたと説明。

「子どもたちと映画を作るということはとてもチャレンジングでした。とても柔らかくて純粋な心が壊れてしまわないようにケアをしていかなければいけない。そして、そういう配慮が日本はわりと遅れていると思います。私もそういったことにも気づけたとても良い機会だったと思います。一方で、彼らはとても仲良くなって、チームとして毎日撮影を乗り切っていました。そういう意味で現場は楽しく、遊び場に来るような雰囲気でやってくれていました」と撮影現場での子どもたちの様子も語った。


最後に西川監督「この映画を作るにはいろんなハードルがありました。重たいテーマですし、子どもたちが乗り切れるだろうかと心配しながら作っていましたが、トロントの皆さんが温かく観てくださったということを、キャストやスタッフ全てのメンバーに報告できるのを楽しみにしています」と語り、会場を埋め尽くした現地観客からの惜しみない拍手と歓声に包まれながら、トロントでの公式上映を大盛況のうちに締めくくった。

トロント国際映画祭(TIFF)は、カナダで毎年9月に開催される、北米最大規模を誇る映画祭。最高賞が観客の投票によって決まる「観客賞」(ピープルズチョイス・アワード)を採用しており、ここでの受賞作がその後の米アカデミー賞の最有力候補に直結することから、“アカデミー賞の行方を占う世界で最も重要な前哨戦”として知られる。

本作が出品される「プラットフォーム部門」は、2015年から新設された唯一のコンペティション部門であり、なおかつ、すべての上映作品から選ばれる「観客賞」の対象となっている。さらに、本年度からは、プラットフォーム部門の最高賞である「プラットフォーム・アワード」受賞作品に、米アカデミー賞国際長編映画賞の応募資格が付与されることとなり、同部門への注目度はより一層高まっている。

オープニング上映作は、「この部門のレベルの高さを世界に証明し、プログラム全体のトーンを決定づける最重要作である」と絶対の確信を持って選ばれた“最高峰の1本”とされている。『わたしの知らない子どもたち』は10月16日(金)より全国にて公開。


(シネマカフェ編集部)

■関連作品:
わたしの知らない子どもたち 2026年10月16日より全国にて公開
(C) 2026 K2 Pictures・AOI Pro.

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