【インタビュー】横浜流星×広瀬すず、3回の共演で得た距離感「“頑張らない”状態でいられた」絶対的な信頼関係
横浜流星と広瀬すず。『流浪の月』で初めて顔を合わせた2人は、『片思い世界』に続き『汝、星のごとく』(10月9日公開)で盤石の化学反応を見せつけている。
瀬戸内の島で出会った高校生・櫂(横浜流星)と暁海(広瀬すず)。共に家庭環境に苦しみ、孤独を抱えるふたりは徐々に惹かれ合っていくが、過酷な運命に翻弄され――。
『流浪の月』の原作者でもある凪良ゆうのベストセラーにほれ込んだ横浜が映画化を熱望し、藤井道人監督を引き込んだという意欲作。横浜と広瀬は、15年間にわたる櫂と暁海の歳月を全身全霊の演技で演じ切った。
その豊かな芝居の応酬に影響を与えたのが、2人で歩んだ道のりだ。初めての出会いからお互いに対するリスペクト、自身の課題感まで、撮影の舞台裏と共に語り合っていただいた。
『流浪の月』から築き上げた距離感
――おふたりは映画では3度目のご共演です。初対面時の思い出など教えて下さい。
横浜:『流浪の月』の顔合わせだったと思いますが、李相日監督もいるし、すずちゃんに密着取材するクルーの方々もいて、様々な目線がある空間でした。緊張して「やばい」となったことを覚えています。
広瀬:あれはやばかったですよね(笑)。流星くんにもご迷惑をおかけしてしまい申し訳なかったです。
横浜:いえいえ。李監督の我々に対する質問も独特でした。
「今までテレビ等でお互いを観てどう思ってた?」と聞かれて、すずちゃんは「まつげが長い」って…(笑)。
広瀬:あはは(笑)。
横浜:自分は「何となく強い印象を持っていました」なんて中身のない答えを言ってしまい、とにかく緊張していました。その際の映像を観返すと、自分が初対面で何かをすずちゃんに謝っていて。
広瀬:え?なんでだろう。
横浜:全然できてなくてごめんなさい、ご迷惑をおかけしますがこれからよろしくお願いします、といった気持ちだったんだと思います。
広瀬:きっとお互いに緊張もあって気まずかったんでしょうね。
――横浜さんは『流浪の月』の際、恋人感や“甘え”を表現するのにご苦労されたと仰っていましたね。
広瀬:でも、初めましての状態で強制的に甘えるのって難しいと思います。
横浜:李さんから「芝居じゃうまくできないだろうから練習しておきなさい」と言われて。横浜流星と広瀬すずの初めましての距離ではなく、『流浪の月』の更紗と亮として近づけられるように、とリハーサルなどで何度も顔を合わさせてもらい、お話しさせていただきました。そのなかで、すずちゃんはとにかく受け止めて下さる人と信頼できたから、思い切って飛び込めました。ただ、自分の距離の近づき方はだいぶ遅かったと思います。その際はごめんなさい。
広瀬:そんなことないですよ!それはお互い様だと思います。
――そうした過程を経て、『汝、星のごとく』の距離感が築かれたのですね。
広瀬:本当に、本作の前に『流浪の月』があって良かったなと思います。
横浜:心強かったです。すずちゃんじゃなくて初めましての方と、15年間の櫂と暁海の関係性を創り上げるのはなかなか難しかったかと思います。
「頑張らない」状態でいられる信頼関係
――『汝、星のごとく』の撮影は17歳パートの《夏編》から始まりましたが、猛暑のなかで横浜さんの“汗待ち”が生じ、広瀬さんが笑っていらっしゃったと藤井監督から伺っています。
横浜:そうなんです。自分の汗が止まらなくなっちゃって(笑)。
広瀬:絶対、もうちょっといい話がありましたよね(笑)。
――確かに(笑)。
でも、おふたりの仲の良さや、現場の空気が感じられるエピソードだと思います。櫂と暁海がホテルで再会するシーンの撮影時も、合間におふたりが談笑している姿が印象的でした。
広瀬:信頼している同士だからこそ、言葉は悪いかもしれませんが「頑張らない」状態でいられるんです。流星くんと藤井さん、撮影の今村圭佑さんの温度感もそうですが、皆がマイペースに過ごしながらも誰のペースも崩さず、やりたいことをちゃんとやりきっているのが藤井組に抱いた印象でした。それが素敵で、優しいなって。
――『流浪の月』では広瀬さんが李組の経験者、『汝、星のごとく』では横浜さんが藤井組の経験者という立場でした。それぞれに組の特徴を事前に伝えたりはされましたか?
横浜:李組のときは、聞いてなるほどと思うようなことをたくさん教えていただきました。何から何まで、一からすずちゃんに教えてもらった感覚です。
――『流浪の月』で広瀬さんにお話を伺った際に、李監督はお芝居を真横で見つめてくると仰っていましたね。
広瀬:はい。モニター越しなどではなく、カメラの後ろにいるよ、めちゃくちゃ視界の中に入ってくるよって(笑)。
横浜:また、リハーサルについても教えていただきました。自分の中にこれまであったホン読み(撮影前に行われる台本の読み合わせ)やリハーサルの感覚ではなく、がっつりやる形だからと。
広瀬:『汝、星のごとく』のときはラフな感じで「藤井さんはこういう人だよ」と教えてもらう形だったように思います。
横浜:そうですね。逆に藤井さんに僕が「すずちゃんはこんな人で、藤井組に絶対合うと思う」とお伝えしました。
――現場でちらりとお話を伺った際、横浜さんは広瀬さんの本番でのスイッチの切り替えの速さ、広瀬さんは横浜さんの役に対する献身ぶりをそれぞれ称賛されていましたね。
横浜:『流浪の月』の際にも感じていましたが、すずちゃんの爆発力と瞬発力には感動さえあります。いつも刺激をもらっていますし、すずちゃんが現場にいると本当に心強い。裏表がないから気持ちがいい方ですし、先ほどすずちゃんは「頑張らなくていい」と仰っていましたが変に気を遣わずにいられるのがとてもありがたいです。だからこそ芝居で全力でぶつかり合えるんです。遠慮し合っちゃう部分が全くないんです。
――広瀬さんは暁海を演じるうえで「櫂が変わっても、自分は変わらないようにする」をテーマに掲げていたと仰っていました。いまのお話はそこにも通じますね。
横浜:そうですね。絶対に変わらない存在でいてくれるので、安心して役を生きられました。
広瀬:きっとお芝居だけじゃないかと思いますが、現場で見る流星くんの姿はとにかく目の前の役を担って、全うすることに全てを傾けていました。それこそ変な遠慮なしに、役に没頭していらっしゃるんです。私はどうしても時折自分が出てきてしまって恥ずかしくなったりもしますし、何かがかみ合っていないときにバンッとお芝居がうまく出てこない状態もあります。でも流星くんは、とても上手に器用に、全力で役へと向かっていく。その純粋な真っ直ぐさは桁違いで、私にはとてもまぶしく見えます。本作では体重を落とされていますが、その努力の具合とかける期間の幅、ストイックさすべてを含めて、皆が簡単にできることではないと思います。全員がここまで役に全てを捧げられないし、とても素敵です。
自身が感じるこれからの課題とは?
――『汝、星のごとく』の現場では暁海が「私、ばかになれるから」と涙を流すシーンなどテイクを重ねるなかでも毎回すさまじい入り込みを見せられていましたよね。その広瀬さんが「恥ずかしくなる瞬間がある」と仰っているのが、意外です。
広瀬:恥ずかしくなる瞬間はいっぱいあります(笑)。「櫂ー!」と大声を出すときなどもそうですし、段取り(本番前に行う動きの確認)は特に恥ずかしいです。スタッフの皆さんが近くで見守っているのが視界に入っちゃうと「わっ見られてる」と思いますし「動きやお芝居はこれで合っているんだろうか」って。動きを間違えちゃったときなどは、もう芝居中だから止められなくてごめんなさい、と申し訳なくなりますし。私は常に照れを感じてしまうタイプです。
横浜:そうなんだ。そんな風には全く見えないです。
広瀬:皆が見てる!と思うと照れて笑っちゃうんですよね。現場で仲良くなったスタッフさんには「段取り中にあんまりこっちを見ないで」とお願いしています。そうしたら「いや、別にすずちゃんを見ているわけじゃないから。自分の仕事のために全体を見てるんだよ」と言われて、自意識過剰だった…ってまた恥ずかしくなっちゃって(笑)。それを知らずに「ほう…こんな芝居をするのか」って皆に試されてるのかな、って思っちゃっていたんです。完全に被害妄想でした(笑)。
横浜:いや、でも確かに段取りのときに感じるその感覚はわかります。スタッフさんの目線に緊張しちゃいます。
広瀬:私はそういうもので勢いが落ちてしまうタイプなので、李組でご一緒したときに関係なく猛然と突き進む流星くんのお芝居を見て、すごく羨ましかったです。
横浜:でも自分は藤井さんによく「段取りは0点」と言われます。「え、寝てる?」って(笑)。とりあえずテストに移ろう、本番回しちゃおうってなることも多いです。
――藤井監督は「エンジンがかかるまでに多少助走が必要」と仰っていましたが、そこまでストレートに言われるのですね(笑)。横浜:自分は本当に遅いんだと思います。ワンカットごとに時間をかけられない別の現場などでエンジンがかかりきる前にOKが出てしまい「あっ終わっちゃった…」となることもしばしばなので、今後直していかないといけない自分の課題です。
――これまで幾多の作品に出演されてきたおふたりでも、まだまだご自身に課題を感じられているのですね。
横浜:自分は課題だらけです。つい最近も、綾野剛さんと話していて撃沈してしまって。
広瀬:え?どういう意味でですか?
横浜:「こういう瞬間が台本に書かれていたとしても、それがイコール暗い人間とは限らないんじゃないか」といったような人物の解釈に対して。例えば「広瀬すずはこういう人間である」は人によってそういう風に見えているだけで、明るくふざけている瞬間もあればものすごく落ち込んでいる瞬間もあるものだから、役の生き方はもっと自由なんじゃないか――と。
広瀬:なるほど…。
――最近もある俳優さんから綾野さんに薫陶を受けた話を伺いました。影響力が絶大ですね。
広瀬:それこそ、藤井さんもよく綾野さんのお話をしていますしね。
横浜:剛さんと話して、“俺はまだまだだな”と思ったばかりです。
広瀬:私も課題ばかりですが、これからも冒険し続けたいです。
横浜:はい。自分も冒険し続けます!
【横浜流星】ジャケット¥394,900、シャツ¥237,600、パンツ参考商品、ブーツ¥498,300(すべてアン ドゥムルメステール/エム 03-6721-0406)
(text:SYO/photo:田中舘裕介)
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汝、星のごとく 2026年10月9日より全国東宝系にて公開
©2026「汝、星のごとく」製作委員会©凪良ゆう/講談社