ベネット・ミラー監督インタビュー 『マネーボール』で描きたかった“真髄”とは?
(Photo:cinemacafe.net)
ブラッド・ピットがめまぐるしく動き回る。新たな選手獲得の交渉のために電話をかけて各地を飛び回り、負け続けるチームのロッカールームで怒りを爆発させ、その合間を縫って別れた妻との間の娘に会う。実話に基づいた映画『マネーボール』で彼が演じたのは、全く新しい理論で野球界に革命をもたらし、貧乏球団をプレーオフの常連に育て上げたゼネラル・マネージャー(GM)、ビリー・ビーン。いまなおオークランド・アスレチックスの名物GMとして活躍する男である。監督を務めたのは、2005年に『カポーティ』でアカデミー賞監督賞の候補に名を連ねたベネット・ミラー。野球界の異端児の物語をどのように映画化したのか?来日を果たした彼に話を聞いた。
真実とは、その人物の“真髄”を描くこと
映画の原作となったマイケル・ルイスによって書かれた書籍「マネーボール 奇跡のチームをつくった男」は、伝記や小説というよりも、ビジネス書、マネージメントの書といった色合いが濃い。映画ではブラッド演じるビリーのドラマに焦点を当てているが、映画として物語を構築していくのは決して簡単ではなかった。
「そう、原作はいわゆるケーススタディを解析し、数学的観点を用いて説明するというものだ。