【シネマモード】傷ついても探求する、女の人生 人生に迷うあなたに贈る『サラの鍵』
(Photo:cinemacafe.net)
知らないということは、無邪気に生きられるということだ。それが、『サラの鍵』を観て、まず感じたことだった。この作品は、パリで1942年に起きたユダヤ人迫害事件「ヴェルディヴ事件」を題材に、ホロコーストを生き抜いた女性・サラと、現代に生きるジャーナリストのジュリアとが、時を超えて人生を交差させていく物語だ。
パリに住むユダヤ人家族約8,000人が屋内競輪場<ヴェルディヴ>に送られた事実についてほとんど知らなかった私は、本作によって、その時のユダヤ人検挙がフランス警察や憲兵の積極的な協力によって行われたことに触れた。それは決して快い事実ではないけれど、その歴史についてもっと知りたいと思ったことは確かだ。フランスに対して無邪気な憧れだけを抱くのではなく、その文化が抱える暗い歴史についても正しく把握する必要性を感じてしまったら、もう引き返せない。事実を知り、自分が当時に生きたならどうするだろうかと答えのない答えを探してしまう。そのことで、自分が楽しくなるわけでなく、むしろ辛い思いをするかもしれないにもかかわらず。
そんな自分と、現代のヒロイン・ジュリアを重ねてみると、つくづく私たちは女なのだなと思う。