『はやぶさ 遥かなる帰還』中村ゆり “熱い現場”で手にした成長と変化
(Photo:cinemacafe.net)
2003年の打ち上げから小惑星・イトカワへのタッチダウンとサンプル採取、そして幾多の苦難を乗り越えて2010年に奇跡の帰還を果たすまでの7年を描き出す本作。中村さんが撮影を前に、主演の渡辺謙、瀧本智行監督から直々に言われたのは「7年のはやぶさの旅路において、メンバーの中で一番の成長を見せてほしい」ということだった。
「“役作り”なんていうのもおこがましいですが、とにかく知らないことだらけだったので、はやぶさについて勉強していくところから始めました。私の役のモデルになった方が当時からブログを書いてらっしゃったので、それを読んで当時どんな気持ちでいたのかという参考にさせてもらったり。ただ、モデルの方にあまり引っ張られ過ぎないように気をつけました。私は“キャラ”を作ることはほとんどしないんです。というか、そんなテクニックがない(苦笑)。その中で大事にしてるのは当時の状況や背景を知って、その場に立つこと。これまで、私はなぜか戦時中の設定の作品に出ることが多かったのですが、そういう作品で学んだこと――自分の役だけでなく、全体の背景を見るということは今回も大切にしました」。
そうして、はやぶさと共に研究者たちが歩んだ7年に身を置く中で、夏子という役柄が中村さん自身の想像を超えて変化していくのを感じていたという。
「はやぶさという存在に自然に気持ちが向き、引っ張られていくような感覚はありましたね。自分で泣こうと意図していないシーンで自然に涙が出てきてしまったり。そういう意味でいい流れで現場にいられたんですね」。
冒頭の“熱い現場”の発言は、今回の作品を通じて中村さん自身が手にした成長や変化についての答え。さらにこう続ける。
「そういう熱い思いを出して、気持ち良さそうに仕事している大人たちを見てて、かっこつけずに一生懸命やることってやっぱりかっこいいことなんだなと思いました」。
それは、映画の現場然り。そして実際のはやぶさプロジェクトに携わった研究者たちの姿そのものと言える。
誤解を恐れずに言えば、非常に優秀で専門性の高い知識を持ったいい年した大人たちが、好きなことに打ち込みヤンチャしているような…。
「そう思います(笑)。それってすごく素敵なことなんだなと。自分がやっていることを楽しめてるって素晴らしいことだし、私もまず楽しんでやらなきゃって思いましたね」。
『パッチギ! LOVE&PEACE』で可憐だが強い芯を持ったヒロイン役を務めたのが2007年。近年では『桜田門外ノ変』に『ばかもの』などそれぞれに全く異なる役柄で、心に刺さる存在感を示している彼女も今年で30歳を迎える。「現場が少しずつ分かってきたかな…」と現在の立ち位置をふり返る。
「と言いつつ、いまでも役に入る前はビクビクしてるから変わってないかな(笑)。
でも『パッチギ!』の頃は本当にギリギリの状態で、行きの電車で『私はできる、私はできる』って呪文のように唱えてましたからね…。そう感じるような仕事をしていかなくちゃいけないなと改めて思います。映画にしろドラマにしろ、俳優ありきで作品が決まっていくようなところがあり、それは良くもあり悪くもあるところだと思いますが、私自身は自分の想像を超えて『この監督の言う通りに動いたら私、最強じゃん!』って思えるような監督とお仕事したいですね。クリエイターに乗っかる側なんですよ、私は。30代で、20歳くらいの若いクリエイターと仕事をしてみたいなとか考えてます」。
演じることは楽しい?それとも苦しい?
「どうでしょうね(笑)。気持ちよく演じられたと思ったときほど、後から見て大した芝居してなかったりするんですよ。自分の芝居については『酔っちゃダメ!』って常に言い聞かせてます。
自分でも『もうちょっと堂々とやれよ!』って突っ込みたくなるんですけどね(苦笑)。フラストレーションがたまりそう?そうかも。いつも心配性で終わった後も『あのシーン大丈夫かな? 』って心配でしょうがないんですよ。それで完成した作品観て『あ、意外といいじゃん』とようやくホッとしたり(笑)。でも、現場にいるスタッフのみなさんは、本当に眠る時間を削って年中、映画に関わってる。そういう人と仕事するのが楽しいし、怠けてちゃいけないんだって思えるんです」。
(photo/text:Naoki Kurozu)
hairmake:Kyoko Fujita/stylist:Megumi Kaneko
特集『はやぶさ遥かなる帰還』:絶対にあきらめない宣言2012
http://blog.cinemacafe.net/live/fes/hayabusa/
■関連作品:
はやぶさ遥かなる帰還 2012年2月11日より全国にて公開
© 2012「はやぶさ」製作委員会
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