新海誠監督インタビュー 「万葉集」と“雨”の歌から生まれた、「これは雨宿りの映画」
(Photo:cinemacafe.net)
鳴る神の少し響みて(とよみて) さし曇り雨も降らぬか君を留めむ
「雷が少しだけ鳴り響き、曇り空が広がり雨が降ってくれたら、帰ろうとするあなたを引き留められるのに」――。恋に焦がれ、そして恋に少しだけ臆病な女性の心情を詠み、「万葉集」に収められた一篇の和歌と6月の雨に導かれ、現代の東京を舞台にした切ない恋物語が誕生した。まもなく列島を覆う梅雨前線をおそらく多くの人がうっとうしいと感じているだろうが、この『言の葉の庭』を観たら、雨の路地を静かに歩いてみたくなるのではないだろうか。
監督を務めたのは『秒速5センチメートル』、『星を追う子ども』などアニメーションにして“文学”とも称される独特の詩的な心理描写、映像世界で熱烈な支持を集める新海誠。常に「最新作こそが自分にとって最高傑作」と語る彼のアニメーション作りについて話を聞いた。
靴職人を目指す高校生のタカオと謎めいた年上の女性・ユキノ。約束もないままに雨の日の午前中だけ、雨宿りをしながら庭園で逢瀬を重ねるようになった2人のそれぞれに打ち明けることのできない思いが静かに綴られていく。
最初に監督の脳裏に浮かんだのが、「少し年の離れた男女が雨宿りで出会う物語」。