新海誠監督インタビュー 「万葉集」と“雨”の歌から生まれた、「これは雨宿りの映画」
「ひとつは会話やモノローグで使用する『言葉』の選択。2つ目が『色彩』――僕が自分で色彩設計と撮影監督を兼任してるんですが、キャラクターの動きを描くことはできないけど、色彩に関しては自分が全てコントロールしてます。そして3つ目が『時間軸』。この音楽は何秒で、このカットはコンマ何秒、音楽が途切れた瞬間に足音が…といった部分のコントロールは全て僕がイメージし、作り上げている。それが自分にしかできない強みになればと思ってます」。
何より、新海監督が自身の作品に込めるのは「誰かを励ましたいという思い」だという。「その誰かにはきっと20代の頃の僕、いや、いまの僕自身も含まれている」と続ける。
「20代で自主制作を始めたとき、とにかくつらい自分の現状を何とかしたいって思ってたんですよね。
それこそタカオが『靴を作ることがおれを違う場所へ連れてってくれる』と考えるように。自分の置かれている状況を誰かに肯定してもらえたら、ずいぶん楽になるのに…と大げさかもしれないけど、切実に救いを求めていたんですね。だから自分が求めていたちょっとした救い――『会社に行きたくないな』と思ってた人が『行ってみるか』とか『逆に会社に行かなくても生きていける』って思ってもらえたり――そういう少しでもポジティブな影響を与えることができたら。