「自殺を思いとどまらせるきっかけに」エリック・スティール監督が語る『ブリッジ』
これは今回の企画の中で一番倫理的に懸念していたことなんです。おかげでご家族との関係の中で自分がとても難しい立場に置かれることにはなりましたけどね」。
そう。この作品には橋の映像とともに、亡くなった人の遺族や友人たちのインタビューが織り交ぜられているのだ。最終的にインタビューにかけた時間は実に120時間に及んだそうだが、大切な家族や友人を失った人たちへインタビューすることに問題はなかったのだろうか?
「(橋のある)マリン郡の検死官の方に何人か遺族の方を紹介していただいたんです。僕に話すことで浄化作用が働いたような経験だったとおっしゃってくださった方もいました。話してくれると言ってくださった方には全員お会いしました。一切関わりたくないという方もいらっしゃったし、最初は絶対イヤだと言っていたけれど、最後になって話してくださった方とか、最初は了解してくださったけれど、なんとなく躊躇してしまわれる方とか…本当にそれぞれの家族、それぞれの反応でした」。
しかし最終的に、本作に関わった遺族や友人はみな本作を観たそうだ。中には何度も繰り返し観た人もいるという。
「この映画に参加することによって、同じように大切な人を失ってしまった家族の痛みや嘆きを少しでも和らげることができるかもしれない。