【シネマモード】ジブリ『かぐや姫の物語』…高畑勲が受け継ぐ“美の系譜”
(Photo:cinemacafe.net)
良く知っていると思っていたのに、ちっとも知らなかったことに気がつきました。映画『かぐや姫の物語』を観るまでは――。
日本人にとってファンタジーの原風景でもある「竹取物語」ですが、巨匠・高畑勲監督独自の解釈により、現代人でもじっくりと楽しめる、味わい深い大人の物語へと姿を変えたと言ってもいいのかもしれません。
諸説あるようですが、誕生したのは平安初期とか。成立年、作者ともに未詳なため、物語自体にも謎が多いことでも有名です。かぐや姫は月世界で犯した罪を償うために、地上に下ろされたとされていますが、どんな罪を犯したのかは言及されていません。いわば「竹取物語」最大の謎とも言えるその部分にも斬り込んで、腑に落ちる物語として提示したのが高畑監督の最新作。面白くないはずがありません。
本作では、日本人なら馴染みのあるこの物語が、作品が生み出された時代の空気感を今に伝えるかのように、毛筆調で描かれています。人の手の温かみと、物語がもつ神秘性を同時に感じさせる画調は、“余白の文化”の美を存分に感じさせてくれるのです。
なかでも多く登場する高価な衣の華やかさには驚くばかり。