【シネマモード】着まわし上手はとっても憂鬱な元セレブ…『ブルージャスミン』
(Photo:cinemacafe.net)
ケイト・ブランシェットを主演に迎えたウディ・アレン監督作『ブルージャスミン』。ケイトという実力派美人女優を得て、その“怪演”により、現代をよりいっそうシニカルに、でも的確にとらえた傑作が誕生しました。
ケイトが演じるのは、訳あって人生のどん底に堕ちた、元セレブリティのジャスミン。ニューヨーク社交界の華とも謳われた彼女ですが、実業家の夫に裏切られ、それを機に華麗なる生活が崩壊。サンフランシスコで庶民生活を送る妹・ジンジャーの家に転がり込むことになるのです。
セレブ生活が崩壊してもなお、移動には飛行機のファーストクラスを使い、「エルメス(HERMES)」のスカーフを巻いたバーキンを手に、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のトランクを積み上げて、「シャネル(CHANEL)」のジャケットを羽織るエレガントな彼女は、まさに誰もが思い描く成功者そのもの。でも、内情を知れば、その妙に豪華なアイテムたちが、彼女にとってなけなしの全財産であり、過去への執着の象徴だとすぐに分かるのです。
豪華な生活の名残を感じさせるハイブランドのアイテムは、“元セレブ”となったジャスミンが、何が何でも手放したくなかった必要最小限のものなのでしょう。
住むことのできなくなった夢のような邸宅から、お気に入りの定番アイテム、上質でベーシックなアイテムだけを持ち出し、日常的に着まわすジャスミン。確かにファッションの参考にはなりますが、でも、ちょっと待て。実はそこにこそ、ジャスミンの凋落ぶりと潜在意識が強調されているのです。
クローゼットのスペースに限りがある庶民にとって、着回し術は毎日を生き抜く大切な知恵。“本当におしゃれな人とは着まわし上手”とか “一週間コレだけでコーディネート”などという特集が女性誌でも頻繁に組まれています。いつも同じオフィスに出勤するOLたちにとってみれば、少ないアイテムでいかに衣装持ちだと思わせるかが勝負。誰だって、いつも同じものを着ていると思われたくなどありません。だから、コーディネートで印象を変える工夫を凝らすわけなのです。
でも考えてみれば、セレブは着まわしなんて上手じゃなくてもいいはず。彼らの中には、取り替え、引き換えに、ファッションを楽しんでいる人も少なくありません。1度着たら、その服を処分するという人もいるとか。持っているだけでPRになるほどの有名人なら、買わずともブランドから贈り物として最新作が届いちゃったりするのですから、“着るものがない!”などと言って、悩むことなどないはず。
セレブリティとして優雅な生活の中で磨いたと思われるファッションセンスを武器に、庶民生活の中でも、「シャネル」のジャケットを愛用し、バーキンを持ち歩くジャスミンの根性には恐れ入ります。でもそこで表現されているのは、自分が置かれた現実に直面することを避け、心をニューヨークに残したままという、往生際の悪さ。ジャスミンという名前に秘められた真実を知ればなおのこと、場違いなまでに「シャネル」、「エルメス」を愛用するこだわりに、返り咲きを狙う女の、切なくもしぶとい本音が垣間見えるのです。
(text:cinemacafe.net)
■関連作品:
ブルージャスミン 2014年5月10日より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋 ほか全国にて公開
(C) 2013 Gravier Productions, Inc.
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