【インタビュー】永瀬正敏 映画を愛し、映画に愛された男の30年
(Photo:cinemacafe.net)
「映画に裏切られたと感じたことは一度もないです」。
映画にとり憑かれ、映画にその身を捧げてきた男はためらいなくそう言い切った。苦しいことはたくさんあった。時に壁にぶつかり、戦うこともあった。それでも常に「映画を信じていた」という。それは、10代後半で演技の経験もないままに、デビュー作『ションベンライダー』に参加したときから変わらない。永瀬正敏は、タバコをくゆらせながら懐かしそうに、30年ほど前の記憶を手繰り寄せていく。
「相米慎二さんという鬼監督の下でね(笑)。
1日目も2日目も3日目もリハーサルだけという日が続くんです。何十人もいるスタッフが『今日も本番は回んないのか…』と帰っていく。そりゃド素人でも、オレのせいだって分かりますよ(苦笑)」。
どこが悪いのか?何をどうすればいいのか?相米監督は永瀬さんに対し、一切言葉で伝えようとはしなかった。
「『教えろよ!』とずっと思ってましたよ(笑)。こんなド素人つかまえて、なんで何も教えようとしないんだ?って。でも、相米さんには『お前の役なんだから、お前が一番知ってるに決まってるだろ。オレだって知らねーよ』と言われました。