2015年8月3日 22:00
【シネマモード】巨匠ペドロ・アルモドバルが描く毒舌満載の転落劇『人生スイッチ』
(Photo:cinemacafe.net)
スイッチをぽちっと押したことがありますか?電気のスイッチではなくて、人生のスイッチのことです。あんなことさえしなければ、ここに来さえしなければ、ということは誰にでもあるもの。でも、人生をがらりと切り替えてしまうほどのものは、できれば一生押したくないもの。ところが、アルゼンチン映画『人生スイッチ』に登場するのは、知らず知らずのうちに、ぽちっとやってしまった人ばかりなのです。
仕事先の指定により乗った飛行機で、偶然、隣の乗客と共通の知人を見つけたモデルが、“彼”の名前を発すると、周囲が、「俺も」「私も」と、“彼”を知っている人が続出。ついに、乗客全員が“彼”を知っていたことから、とある陰謀が発覚します。が、気付いたときには時すでに遅し…。そんな風に、ひょんなことで人生の溝に落っこちてしまう人々の、ブラックな笑い満載のオムニバスドラマが展開していくのです。
人はこんな風にして一線を越えるものなのかと考えさせる本作、展開の速さと、奇想天外さ、それなのに明日は我が身だと思えるほどのリアルさがバランスの良く同居しています。登場人物たちは、ごく普通の人々で特におしゃれという訳ではありません。