2016年8月27日 13:00
【シネマモード】“抱きしめる聖者”アンマが語る愛…『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』
そこから、自然に人々を抱擁する“ダルシャン”という行為が始まりました。彼女の抱擁を求めインドを訪れる人は多数。45年間にわたって世界中を訪れ、延べ3,600万人以上の人を抱きしめてきました。国内外で国際的災害支援・自立支援活動を展開する慈善活動家としても知られています。
劇中、アンナとアントワーヌがダルシャンを受けるシーンは、本作のハイライト。そこで、私も体験してきました。実は9年ぶり2回目のダルシャン。来日は27年目26回目というアンマが2007年に来日した際、取材に伺ったのです。
その時と全く変わらない、あたたかい笑顔で迎えられ、ぎゅっと抱きしめられ、まるで母親が幼子の不安を取り去るかのようにあやされます。ただそれだけですが、大地に抱かれるような安心感と、耳元で囁かれる「愛しい娘」という快い響きは、心にじんわりしみわたるよう。あっという間の出来事だった前回に比べ、落ち着いていられた今回でしたが、肉体的接触が少ない文化の中で暮らす私には、今回もとても親密で特別な経験でした。世界を抱きしめ続けるというシンプルな行為。だからこそ、アンマの中にある慈悲深さを実感できるのかもしれません。肉体的接触は身体の痛みを軽減するという研究もあるだけに、抱きしめられることで軽くなる心の痛みもあるはず。