2017年11月22日 21:00
【シネマモード】アキ・カウリスマキが侘び寂びの様式美で語る今のヨーロッパ
世の中にやってきては去っていく流行。時代の空気や人々の気分をとらえ、左右することもあるだけに、多くのクリエイターたちが常に意識しているものです。ところが、流行に惑わされず、ずっと自分のスタイルを貫く人々もいます。アキ・カウリスマキ監督もそのひとりでしょう。作品全体を覆う静かなムード、孤独を抱えた主人公、愛想のない登場人物、レトロな美術。彼らしいスタイルは、独自の形式美ともいえるでしょう。新作『希望のかなた』もスタイルは相変わらず。ワンシーンだけでそれとわかるアキ・カウリスマキ・ワールドの中で、欧米を悩ませている難民について語っています。
主人公は内戦が激化するシリアから逃れる途中で、妹とはぐれてしまった青年カーリド。空爆ですべてを失ったいま、唯一の希望である妹を探し回るうち、偶然、フィンランドのヘルシンキにたどり着きます。この街は人に優しいと耳にしていたにもかかわらず、多くの難民に悩まされている行政は決して寛容ではなく、市民の中の受け入れ反対派から差別や暴力を受けるカーリド。その現実にがっかりしていたときに出会ったのが、レストランオーナーのヴィクストロムです。彼もまた孤独で、失意の中から新しい人生をスタートしようとしていました。