【インタビュー】リリー・フランキー×安藤サクラ 憤りと切なさと母性…そして社会に蔓延する「絆」
――これまで是枝作品に抱いていた印象、実際に参加されてみての感想は?
安藤:ひとの息づかいだったり、肌の感触がすごく近くて、見ていて同じ空間にいるような気持ちになるんですよね。参加してみて「あぁ、監督がこういう現場の空気を作っているからなんだな」と感じました。普段の呼吸のままカメラの前にいられるんですよね。他の現場だと、カチンコが鳴ってから「カット」の声が掛かるまで、真空パックのように空気が凝縮されるんですけど、是枝さんの現場はそれがないんです。独特でしたね。ニュートラルな気持ちのまま、自分のウチからこの家族の家、カメラの前に行くことができました。
――カメラの前で、ご自身とは異なる信代という役を演じなくてはいけないのに、素の安藤サクラのままでいられるということが、良いことだったんですか?
安藤:今回、本当にそういう“役になる”ということを全く考えず、現場に行って、ただこの家族に会いに行く感覚でした。リリーさんが演じた治や家族との関係も、一緒に過ごす時間の中で育まれていったし、監督がそれに寄り沿うようにその場、その場で台本を足し引きしながら作っていきました。
――治が連れて帰ってきた少女を家に置くことに、信代は最初は「ウチは養護施設じゃないんだから」