幸せのきっかけはここにもvol.2 『クヌート』が伝える、互いに手を取り合う幸せ
(Photo:cinemacafe.net)
だからでしょうか。違う種の動物たちが奇跡的に寄り添っている姿を見ると、小さな理想郷を見た気がしてしまうのです。
映画『クヌート』もそう。クヌートは、世界で最も知られたホッキョクグマでしょう。2006年12月にドイツのベルリン動物園で誕生。母親から育児放棄されたため、世界でも成功例の少ない人工哺育されたことは、ご存知の通り。ぬいぐるみと見まがうような世にもかわいい姿は、繰り返し、繰り返し、TVやネットに登場しました。そんなクヌートが、飼育係のトーマス・デルフラインをはじめ、人間たちの助けを借りて(実際に、泳ぎを習ったりしています)、すくすくと育っていく姿を追いかけていきます。
でも、この映画で紹介されているのは、そんなほのぼのとした話ばかりではありません。以前、このコラムでもご紹介したことがありますが、ホッキョクグマは絶滅危惧種。しかも、国際自然保護連合=IUCN(http://www.iucn.jp/)の発表しているレッドリスト(世界の絶滅の恐れのある生物種のリスト)でも、トップレベルにランクされています。
作品では、そんな背景を考慮しつつ、北極で暮らす野性のホッキョクグマと、ロシアのベラルーシで生きる母親のいないヒグマが直面している現実をも記録。さらには、育児放棄された動物=クヌートが、人間から人工哺育されてまで生きるべきなのかという論争があったことまでも言及しています。
クヌートをきっかけに考える環境問題、そして生。すでにこういった問題を真剣に受け止めている人には、さらに深く考えるきっかけとなることでしょう。
もちろん、クヌートとトーマスのように、仲良く手を取り合えるなら、それもいいけれど、これは実際の自然界ではありえない関係。
人間とクマがひとつ屋根の下で暮らすことは決して自然界の理想ではないはずです。本来は、互いに距離をとりながら、お互いの違いを尊重し、お互いの生活を侵さないように生きていくのが自然界のバランスを保つことに繋がるはず。異なる種の生き物が仲良くなるということは、抱き合うということばかりではありません。では、どうやって自然と関わることがベストなのか。
きっとこの作品が、本当の意味で自然と共存すること、本当の意味で手を取り合うことの幸せについて、みなが自分なりの答えを見つけるきっかけとなってくれるはずです。
(text:June Makiguchi)
『クヌート』特集
http://www.cinemacafe.net/ad/knut/
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クヌート 2009年7月25日より角川シネマ新宿ほか全国にて公開
© Dokfilm Fernsehproduktion © Zoo Berlin
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