『蟹工船』高良健吾、21歳の“求道者” 分かり易からず、余計なことはせず――
(Photo:cinemacafe.net)
「信用して任されるからこそ、俳優はしっかりしなくてはいけない」
まず、この作品に出ることが決まったときの心境を尋ねると、SABU監督との奇縁について明かしてくれた。
「実は、僕にとっての初めての映画の現場が、SABU監督の『疾走』という作品のエキストラだったんです。縁を感じましたし、SABU監督が誘ってくれるならぜひ出たい、という気持ちでした」。
蟹工船という狭い空間の中で、演劇を思わせるような不思議な世界観を醸し出すSABU演出。実際に仕事をしてみて、どのように感じたのだろうか?
「基本的にSABU監督は役者に任せてくれます。その上で『画はおれに任せろ!』という感じですね。役者を信用してくださるので、だからこそ、役者はしっかりしなければならないんです」。
逆に高良さんから監督に意見を求めたことは?と尋ねると静かにかぶりをふった。
「僕は基本的に、演じる前から監督に聞くのは好きじゃないんです。とりあえずやってみて、それでダメだったら何か言われるし、良ければ本番に行こうという話になる。聞いて得られるのは安心感だけで、その安心感は僕にとって必要のないものだと思っています」。
さらに、実際の役作りについて尋ねると「自分のイメージを言葉にするのは難しいんですが…」と前置きした上で、こんな風に説明してくれた。
「強く感じるのは、『結局は“僕”なんだ』ということですね。容姿も声も心も脳ミソも僕であり、これまで生きてきた21年間から出てくるものなんだ、と。それを踏まえた上で、脚本に乗っかることを考えます。それから、“分かり易いことはしない”、“余計なことはしない”ということ。特に今回は人数も多いですから、自分が『したい!したい!』という感じではなく、そこにいるという気持ちでやりました」。
演じることで増していく“恐怖”
言葉では言い表せない――。そんな心の叫びを演技という表現に託すかのように、次々と個性的なキャラクターを演じる高良さん。
あえて、自らの言葉での説明を求めた。ここ数年、様々な作品に出演してきて、自身の中で感じる変化、成長は?
「一生懸命にやること、自分に出せることを全て出そうという気持ちは変わってないです。でも僕自身、観客や監督、カメラに向かって、夢や何かを与えたいと思って演じたことはなくて、ただ、目の前にいる役者さんに対して『伝われ』という気持ちで演じています。演じるごとに怖さが増えていきますよ。何も知らなかった頃は得るものしかなかったので、それは武器でもあったし、知っていくことで分からなくなったりもしますし。『何であの頃みたいな素直なことができないんだ?』という思いもあります。役者というものが自分でもよくわかんないです」。
最後に、今後目指す俳優像について尋ねると「当たり前のことを当たり前にできる俳優」という言葉が出てきた。
「お茶を飲む、ご飯を食べる、会話をするといった、私生活で何気なくしていることが、演技の中でも当たり前にできるようになりたいですね」。
爽やかな笑みを口元に浮かべつつ、求道者のような言葉を口にする21歳。まだまだこの先、私たちを楽しませてくれそうだ。
(photo:Yoshio Kumagai)
■関連作品:
蟹工船 2009年7月4日よりシネマライズ、テアトル新宿ほか全国にて公開
© 2009「蟹工船」製作委員会
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