『蟹工船』高良健吾、21歳の“求道者” 分かり易からず、余計なことはせず――
(Photo:cinemacafe.net)
物語に静かに溶け込みつつ、異彩を放つ――。矛盾しているようだが、そんな表現が当てはまる。『M』や『サッド ヴァケイション』における屈折した感情を抱えた少年に、『蛇にピアス』の激情と寂寥を感じさせる恋人、『フィッシュストーリー』では歌声に自らの思いを乗せるパンキッシュなボーカリストと、近年、話題作と言われる作品で独特の存在感を示す高良健吾。なぜか目を奪われてしまう“何か”を21歳にして備えている。80年前に発表されたプロレタリア文学の代表作を現代に蘇らせた『蟹工船』でも、過酷な環境下に置かれた労働者を、コミカルとシリアスの境界を往きつ戻りつ見事に演じた高良さん。その演技に込めた思いとは?
「信用して任されるからこそ、俳優はしっかりしなくてはいけない」
まず、この作品に出ることが決まったときの心境を尋ねると、SABU監督との奇縁について明かしてくれた。
「実は、僕にとっての初めての映画の現場が、SABU監督の『疾走』という作品のエキストラだったんです。縁を感じましたし、SABU監督が誘ってくれるならぜひ出たい、という気持ちでした」。
蟹工船という狭い空間の中で、演劇を思わせるような不思議な世界観を醸し出すSABU演出。