2020年1月14日 19:30
【ネタバレあり】映画をそれ以前/それ以降に分ける、危険な傑作『パラサイト』
《text:宇野維正》
※本記事は、映画の重要な展開・結末について触れています。必ずご鑑賞後にお読みください。
カンヌ映画祭でのパルムドール受賞を皮切りに、数々の映画賞に輝き、先日発表された米アカデミー賞では作品賞、監督賞、撮影賞、編集賞、美術賞、国際映画賞の6部門にノミネートされたポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』。そんな歴史的快挙を成し遂げることにもなった作品の見事さに打ちのめされながらも、富裕層家族の妻の美しさに見惚れて、観終わった後すぐに「チョ・ヨジョン」の名前をググったのは自分だけではないだろう。
“トロフィーワイフ”とは?
半地下家族に富裕層家族を最初に紹介した長男の友人いわく、「ヤング&シンプル」な妻を演じたチョ・ヨジョン。物語が進行するにつれて、その言葉の意味するところが「若くて飾らない」というよりも「未熟でお人好し」であることが明らかになっていくわけだが、そんな妻をチャーミングに演じたチョ・ヨジョンは、これまで映画よりもドラマを中心に活躍してきた女優だ(なので、韓流ドラマを熱心に追っていない自分にとっては本作が初遭遇となった)。半地下家族の夫を演じた主演のソン・ガンホを筆頭に、富裕層家族の夫を演じたホン・サンス作品常連のイ・ソンギュン、半地下家族の妻を演じたイ・チャンドン作品の常連チャン・へジンといった、アートハウス系韓国映画の秀作でお馴染みの名優たちの間に入って、チョ・ヨジョンの天然にも思えるような「陰のなさ」