松山ケンイチ『カムイ外伝』インタビュー 孤高のヒーロー誕生の陰にあった挫折、恐怖
(Photo:cinemacafe.net)
いかにして彼はカムイへと“変身”を遂げたのか?
闘う“70年代”に魅力「実は、いまの時代にあまりない題材だと思う」
松山さん自身が感じたこの作品の魅力を尋ねると、原作が発表された“70年代”という時代をキーワードとして挙げてくれた。
「70年代前半って、僕は生まれてもいないんですが、この頃の作品って“闘うこと”を題材にしたものが多い気がするんです。それは、実はいまの時代にはあまりないものだと思うし、これまで自分の中になかった価値観に触れて、すごく新鮮な気持ちになりました」。
では、映画への出演を決める上で大切にしていることは?そんな質問を「仕事を選ぶほどはオファーはないですよ(笑)」とかわしつつ、何者かを“演じる”ことの面白さをこう表現する。
「そのキャラクターが、自分にはないものや理解できない部分を持っていると、演じてみたくなりますね。逆に、絶対に自分にしか出来ないようなキャラクターにしたいという思いもあります。そうやって、常に挑戦しながらキャラクターを作り上げていくということを、どこかで意識しているのかもしれません」。このあたりに、原作に負けないキャラクターを作り上げていく秘密がありそうだ。
だが、今回のカムイという役に関してはこれまでに演じてきた役とは勝手が違った。
「これまでは、自分がそのキャラクターであるということを100%信頼して演じていました。でも、今回に関しては明らかに違う気持ちで生きているキャラクターで、時代も異なる。自分と似ている部分が全くなくて、“向き合う”ということが出来なかった。常にどこか疑心暗鬼になっていて…撮影中に挫折感や『この役を演じ続けることはできないんじゃないか?』という恐怖を感じたのも初めてのことでした」。ケガの功名?カムイと同じく“追い詰められた”精神状態
加えて、撮影現場でケガを負ったという事実も、重圧となって松山さんを苦しめた。
「肉体的にももちろんですが、もう二度とケガで撮影を中断させるわけにはいかない、という変な精神状態で。カムイと似ている部分が全くないって思っていましたが、“追い詰められる”という意味では同じでしたね。
逆に、なろうと思ってもなかなかそんな精神状態になれるわけでもないので……それが良いのか悪いのかわからないですけど(苦笑)」。
それでは、クランクアップの瞬間はさぞかしホッとしただろうと思いきや、「そういう気持ちもあんまりなくて。自分がカムイを演じてどうだったんだろう?って思いがいまだに続いてますね」。そこが松山さんらしいと言えばそうなのだが…。
最後に、松山さん自身が好きなシーンを聞いてみた。例によってしばらく沈黙を置いて出した答えは、激しいアクションの場面ではなく、意外なシーン。
「やはりこの作品は、アクションだけでなく人間ドラマがすごくしっかりしてるんです。すごく悲しい人間ドラマですけど。
(小雪さん演じる)スガルとのシーンで『おれは(刺客の)追忍ではなく、抜け忍だ』って正直に打ち明けるんですが、スガルは『いや、お前は追忍だ』と拒否する。そこはカムイの不器用さと忍びの世界の厳しさ、社会の厳しさが感じられる良いシーンだな、と脚本を読んだときから思ってました」。
10月公開の『カイジ 〜人生逆転ゲーム〜』、そして来年は『ノルウェイの森』と本作と同じく原作モノの公開が控えるが、本作を観れば「この役を松山ケンイチに!」という監督たちの思いが理解できるはずだ。
(photo:HIRAROCK)
■関連作品:
カムイ外伝 2009年9月19日より丸の内ピカデリー2ほか全国にて公開
© 2009「カムイ外伝」製作委員会
■関連記事:
【どちらを観る?】愛か自由か?松ケン『カムイ外伝』VS小栗旬『TAJOMARU』
ファッション小噺vol.112日本女優の美肌のヒミツはこれだった!
松山ケンイチ、忍術で壁渡りも何のその?崔洋一「カムイは彼しかいない!」
松ケン×クドカン登場!『カムイ外伝』完成披露試写会に50組100名様ご招待
倖田來未「新しい自分に挑戦したい」『カムイ外伝』で日本語オペラを歌う!