【レビュー】『マティアス&マキシム』お互いにとって唯一無二の恋ならば、それでいい
グザヴィエ・ドランがナタリー・ポートマンやキット・ハリントンなどを迎えた、初めての英語作品となる前作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』を観たとき、これは彼の集大成であり、もしかしたら、もう映画を撮らないつもりなのかも…という思いが一瞬よぎってしまった。
ドランの作品はいつでも自伝的で、左腕にタトゥーを入れるほど心酔する『ハリー・ポッター』のダンブルドアことマイケル・ガンボンが、“瞬く間に時代の寵児になった”主人公ジョンに示唆を与える役として特別出演していたからだ。
だが、そうではなかった。同作の撮影1年前から準備していたという『マティアス&マキシム』で、彼は原点に帰ってきたのだ。
成熟期のドランが“ホーム”に帰ってきた
この最新作でドランは、『トム・アット・ザ・ファーム』以来6年ぶりに役者として自身の監督作品に出演している。故郷であるカナダ・モントリオールを舞台にケベック訛りのフランス語を話しながら、実際の友人たちと生み出した『マティアス&マキシム』は恋と友情の青春ストーリー。
もはや早熟の天才でも、“アンファン・テリブル”(恐るべき子ども)でもない成熟期に入ったドランが演じたのは、設定は異なれども『マイ・マザー』の少年から10年たったような姿だった。