【どちらを観る?】奇才×ファンタジー『ラブリーボーン』&『Dr.パルナサスの鏡』
(Photo:cinemacafe.net)
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』ではアカデミー賞監督賞にも輝いたピーター・ジャクソンと、『未来世紀ブラジル』から『ブラザーズ・グリム』まで数々の注目作を放ち、熱狂的なファンを増やし続けているテリー・ギリアム。ふたりの奇才が手掛けたファンタジーが続けて公開される。
アリス・シーボルトのベストセラー小説を映画化した『ラブリーボーン』は、14歳の少女・スージーの死というショッキングな展開から始まる。変質的な隣人に殺されたスージーは、無念を抱えたまま天国へ。天国と現世の間に留まり、残された家族や初恋の男の子を見守っていく。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで驚異の映像世界を作り上げたピーター・ジャクソンだけに、スージーが身を置く世界のビジュアルも思い入れたっぷりのもの。美しくもおどろおどろしく、どこか不安を駆り立てる映像を、スージー自身の内面にリンクさせている。そんな映像世界に囲まれ、永遠に14歳の姿のまま、心だけ月日を重ねていくスージーの矛盾がやるせない。
家族の再生ドラマや殺害犯を巡るサスペンスにも2時間強の尺の中で言及しているため、初恋の男の子の日常が自分の存在なしに過ぎていく切なさを知り、幼かった妹に年齢を追い越されていくスージーの複雑な心の変遷がやや粗雑に描かれている感もあるが、そこは天才女優シアーシャ・ローナンの熱演がフォローしている。