2021年9月19日 12:30
【レビュー】他者の痛みと向き合った先に何があるのか『君は永遠にそいつらより若い』が投げかけるメッセージ
この映画での当事者は、暴力や、児童虐待やネグレクトの被害者である。常にホリガイは、こうした当事者たちの痛みと出会ってしまい、自らの非当事者性と知らず知らずに向き合ってしまっているのである。もしかしたら、ネグレクトを前にして無力感を味わったホミネも大きな意味でいえば当事者だったかもしれないし、そう考えれば、ホリガイだって当事者になってしまう可能性もある。
当事者をどうにか助けたいと思う非当事者たちは、「あのとき自分に何ができたのだろうか」ということで悩んでしまうものなのだろうし、その経験が人を優しく強くしていくのかもしれない。このように、ホリガイが自分自身だけを見つめるのではなく、他者の痛みに寄り添わずにいられないことは、彼女が児童福祉士という職業を選んだことにも大いに関わってくるし、そのことで、彼女の物語は終わらずに、この先もつらいけれど続いていくのだということがわかる。
この映画は、個人的な痛みを描きつつも、その痛みをどうすれば分かち合えるのか、この痛みを味わう人をひとりでも少なくするにはどうしたらいいのかということに向き合っている。実は、そのことを突き詰めると、身近なものの善意や優しさで助け合うことだけではなく、公共の福祉や、もっと言えば行政などの働きが切実に必要なのだということが見えてくるのだ。