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【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”

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【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”


大河ドラマ「龍馬伝」(2010年)、「平清盛」(2012年)、大河ファンタジー「精霊の守り人」(2015年~18年)を経て、「岸辺露伴は動かない」(2020年)でも人物デザイン監修を務めることになった柘植伊佐夫。

だが原作は独特の世界観、デザイン性が貫かれ熱狂的とも言えるファンを持つ荒木飛呂彦による人気漫画。果たしてこの新たなチャレンジに柘植さんはどう立ち向かったのか? そして岸辺露伴のヘアバンドの色と素材はどのように決まったのか…? インタビュー【後編】をお届け!

原作者・荒木飛呂彦からの言葉原作の極彩色からあえてモノトーンの世界へ…そのアプローチの真意は?



【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”
「岸辺露伴は動かない」で人物デザイン監修を務めた柘植伊佐夫氏
――「岸辺露伴は動かない」以前にも、漫画原作の実写化には数多く参加されていますが、小説原作やオリジナル脚本の作品とは違うものですか?

やはり違いますね。文字原作ではなく漫画やアニメなどのビジュアルが存在する作品が原作の場合、当然ですが既にファンの方にはイメージが刷り込まれているので、それをまず「裏切らない」ということは大切にしています。実写化されるということは“力”がある作品であり、つまりファンも多いということ。そのファンの方たちを裏切るのは無意味なことだと思います。

とはいえ「裏切らない」ということは、単に原作をそのまま“トレース”すればいいというわけでもありません。それでは「その程度ならつくるなよ」と思われてしまいますから(苦笑)。
期待以上のものにしないと、やはりファンの方たちに満足していただけないと思っています。

具体的につくっていく上で、通過しなければいけない“記号”というものは、原作の中に必ずあります。岸辺露伴であれば、ギザギザのヘアバンドとかですね。とはいえ、漫画は二次元の世界にファンタジー的に虚構として存在するものです。たとえドキュメンタリーを題材にした漫画を描こうが、それは紙の上に描かれている虚構なわけです。

でも、その虚構を原作・原案にして映像で描こうとすると、話は全く違ってきます。それこそ、いまこの場で“岸辺露伴”をつくるとしたら、この部屋の壁はどういう素材なの? イスの形状は? といった非常に生々しい現実に沿って虚構の世界を描かなくてはならないんです。単に“記号”を取り出してそこに置けばいいというものではないので、その表現の按配を決めていく必要があります。


ものの形や素材はどうするのか? (動きの)滞空時間はどれくらいだとちょうどいいのか? 上着を着せた方がいいのか? 脱がす時間はどれくらいがいいのか? そういった細かい部分を詰めていくことで、二次元の原作で表現されている力と、映像によって描かれる力がイコールになっていくんだと思います。単に形をなぞればいいんだというわけではありません。

【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”
「岸辺露伴は動かない」第5話
――具体的に「岸辺露伴は動かない」の制作において、どのようなことを重視し、岸辺露伴、泉京香といった人物像を作り上げていったのでしょうか?

最初にまだプロデューサーが決まっていただけくらいの頃、(渡辺)一貴さんから「これをやろうと思っています」とお話をいただいた時には、既に一貴さんは、原作の極彩色の世界ではなく、モノトーンな感じで収めていきたいってことはおっしゃっていました。

それはかなり賢いアプローチだなと思いました。なぜかというと、そもそもこの漫画は、映像化することのリスクの高い原作だと思うんですよね。あまりに虚構性が強いので、この現実の世界でロケーションをやって…となると、嘘が嘘としてバレちゃうんです。でも、そこからある程度の“色” “彩度”を抜いていくことで形になっていくんですよね。

結果的にエピソードが進む中で、モノトーンばかりではなくいろんな色彩が出てくるんですけど、まず概念としてモノトーン化していこうというのがありました。


――原作者の荒木飛呂彦先生ともお話をされたと伺いました。

編集担当の方を通してやりとりさせていただきました。衣装デザインを描いていく中で、荒木先生に目を通していただくプロセスがあったんですが、最初に少し原作に寄せたデザインをお渡ししたところ「わりと原作から離れていただいて大丈夫です」ということをおっしゃってくださって、そこから少しシフトしていきました。

こちらもどれくらい切り込めるのか? 「あまりに原作から離れてはいけないだろうな」という思いは当然、ありましたし、一方で「原作から少し離れてもやれるだろう」というせめぎ合い、葛藤もありました。そこで荒木先生が「全然、離れてくれて大丈夫です。なんならヘアバンドすらなくても大丈夫ですよ」とまでおっしゃってくださったんです。

漫画のイメージを抽出することがきちんとできれば、“記号”そのものにこだわっているわけではないということをおっしゃっているんだと感じて、そこから一気に描きやすくなりまして、そこから実際のドラマでも使われたルックがすぐに出てきましたね。

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「岸辺露伴は動かない」第6話
――最終的にヘアバンドは残すということを選んだわけですね?

そうです。
一貴さんとも話をして「残した方がいいだろう」と。あのギザギザの感じを残した方がいいなと思ってて、でもすごくリスキーなアイテムだなとは思いました。ただ、ヘアバンドの色を黒にしたことで、高橋一生さんの髪はある程度の長さがあるので、髪の動きとギザギザのヘアバンドが混ざって渾然一体となるなと思って、そこを狙いました。

ギザギザだけが輪郭として出てくるのではなく、髪と混ざってどこからが髪の毛で、どこからヘアバンドなのかわからない状況になるといいなと思ってつくりました。

――原作の本編の「ジョジョの奇妙な冒険」において、第三部の主人公・空条承太郎の髪の毛と帽子が一体化しているという描写がありますが、それとも重なりますね。

僕もそれは思いました。荒木先生の描くヘアスタイルって、境目がわからないものが多くあるので、そういう意味でもちょうどいいなと思いました。

――ちなみにあのヘアバンドの素材は何なんですか?

フェイクレザーですね。
今回の4~6話でもフェイクレザーなんですけど、今回のほうが素材的には少し硬めになっています。それはパッと見にはなかなかわかりにくい、本当にギリギリの違いなんですけど、前回の1~3話までと今回の4~6話の違いを表しているのかなと思います。

――この「岸辺露伴は動かない」における衣装・扮装のチーム編成についてもお伺いします。トップに人物デザイン監修の柘植さんがいて、その下に衣装制作で玉置博人さん、スタイリストで羽石輝さん、ヘアメイクとして荒木美穂さんと金山貴成さんが入っています。それぞれの役割、柘植さんとどのように仕事を進めていくのかということも教えてください。

僕はこのチームで動くことが多いんですが、衣装に関しては、まず僕がデザインを描き、素材の方向性も決めていきます。そこで決まったデザイン、クリエイティブディレクションを玉置に落として、玉置は衣装の制作に入ります。玉置の下にはそれぞれの専門分野を持った縫い子がいて、彼がそのチームを束ねています。
デザインやクリエイティブに最適な縫い子を玉置が差配し、実際に衣装を制作していくわけです。

場合によっては予測がつかない生地になることもあるわけで、僕のほうから玉置に「ここはどういう素材がいいと思うか?」と投げて、玉置から「こういうのとこういうのもありますがどうですか?」と返ってきて、その中から選ぶといったこともあります。制作のプロセスとしては、現代美術の工房に近いかもしれませんね。

スタイリストの羽石には、つくりもの(=実際に素材から縫い子が作り上げていく衣装)以外の衣装の“選び”をやってもらいます。こちらから「こういうワンピースがほしい」とディレクションをして、そうすると羽石は候補になるワンピースを選んできます。その中からイメージに合うものを選んでいきます。

岸辺露伴が着けているサスペンダーや小物、今回はチェーンなども出てくるんですけど、そういうものも羽石が集めてきます。小物に関しても、こちらが最初にイメージするデザインを描いて渡す場合もありますし、最初に羽石にいくつか集めてもらって、選ぶ場合もあります。


今回、カフスボタンをつくっているんですけど、これはストーリーにも関わってくるちょっと特殊なカフスなんですね。それは僕が「こういうのをつくって」とデザインを渡して、作ってもらっています。チェーンに関しては羽石がすごくチェーンが好きで(笑)、「こういう感じですか?それともこんなのはどうですか?」といっぱい持ってきてくれた中から選びました。

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「岸辺露伴は動かない」第4話
ヘアメイクについては、今回の第4話「ザ・ラン」には、原作を読まれている方はわかると思いますが、頭にトゲトゲとしたものが付いたヘアスタイルの登場人物が出てきます。最初の時点で僕から「あの“角”はドラマでも絶対に付けるからね」ということは伝えました(笑)。

そうすると当然「じゃあ、角の素材はどうしようか?」という話になるわけです。

――角の素材…(笑)。

そこにはもはや、理由など存在しないわけです(笑)。あの頭で普通のヘアスタイルとして、存在しうる角ってどういうものなのか――? 僕はとにかく「角は付けるから」ということは伝えるんですが、どういう素材、形状にするかという部分は、ヘアメイクチームが考えてくれました。最終的に、黒い羽根を切ったものを付けています。

岸辺露伴、ジムへ! トレーニングウェアはどうあるべきか?



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「岸辺露伴は動かない」第4話
――衣装合わせで実際に俳優さんに衣装を身に着けてもらって、話し合うという機会もあるかと思いますが、どのように進めていくのでしょうか?

僕は衣装合わせの回数が多い方だと思います。少なくとも3回はしますし、そこで高橋(一生)さんとも「どういう感じにしようか?」とやりとりをするわけです。

前回の1~3話を経たことで、今回の4~6話になると、もう一生さんの好みのパンツの形というのも出てきて、ご自身の体型に一番合うと感じる形があるんですね。今回、第4話の「ザ・ラン」ではジムのランニングマシンで走るシーンが多くあって、体の線とも関係してくるんですね。なので、あえて「高橋さんが普段から履いてらっしゃる好きなパンツを貸してくれませんか?」とお願いして、2本ほど貸していただきました。それぞれ微妙に違うんですが、そこに「なぜそのパンツが好きなのか?」という“解”が詰まっているわけです。それを参考に「ザ・ラン」のパンツの形は決めました。

これは前作で築いた関係性があるからこそ、できたやり方だなと思いますね。信頼関係がないとそういうクリエイティブのやり方ってできないですからね。

――飯豊まりえさんが演じる編集者・泉京香も個性的で存在感のあるキャラクターであり、前作でも衣装やバッグ類などが大きな話題を呼びました。

飯豊さんともいろんなやりとりがありました。前回は好評をいただいたんですが、逆に今回、泉京香の衣装に関しては、非常に難しい局面だなと感じていました。というのも、前作の好評を受けて、調子に乗ってさらに燃料を投下して攻め過ぎてしまうと、たいがい叩かれてしまうものなんですよね。不思議なもので、同じアプローチで同じことをしていても、2度目になると「自意識過剰」というふうに受け取られてしまったりするんです。

泉京香というキャラクターのかわいさを飯豊さんを通じて表現するのが僕の役割です。そこで今回は、あえてちょっと引いています。前回のシーズンでは、思い切り前に出していますが、それはなぜかというと、先ほども説明しましたように露伴をモノトーンで引き気味の色調にしているからです。そこでバランスをとるために、あえて泉京香のエネルギーを前に出しているんです。

でも今回は、露伴のほうがコーディネート数も多くて、“エネルギー値”も高めなんですよ。特に今回、4話と5話は男性ゲストを迎えての“男の世界”という感じが強めなので、なので、京香は少し抑え気味にしています。これはすごく“音楽的”なチューニングだなと思いますね。

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「岸辺露伴は動かない」泉京香(飯豊まりえ)
――いまお話に出た第5話「背中の正面」のゲストは市川猿之助さんですから、たしかに非常に“強い”画になりそうですね。原作の漫画(「ジョジョの奇妙な冒険」)では、やや弱々しい印象の男性で描かれていたので意外です。

すごくおもしろくなってます(笑)。“強い” “弱い”というのは、周りとの関係値の中でどれだけ浮くのか? 混ざれないのか? ということと関係しているんだと思います。例えば猿之助さんも出演されていたドラマ「半沢直樹」だと、猿之助さんが強さを押し出しても、周りのキャラクターも非常に強いので、そこで変に浮き過ぎるってことはないんですよね。

今回の作品でも、とても“強い”表現が出てくる部分はあるんですが、それで浮いたり、違和感があるかというとそれはないです。なぜなら、そもそもこの作品自体が“違和感”を醸し出しているからだと思います。

“普通”ってすごく難しいことで、作品の世界線に沿った上でのことなんです。ものすごく違和感が漂う作品の中で、「普通のキャラクター」として地味な人物を出したら、それはそれで悪目立ちしてしまったりもします。作品の世界、周囲のキャラクターとの関係の中で強さや弱さを表現しています。

【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”
「岸辺露伴は動かない」乙雅三(市川猿之助)
――作品の世界観や空気感といったものは、前作で築いたものを前提にしつつ、変化している部分もあるのでしょうか?

それはあると思います。前回の3話は強烈な原作ということもあって、つくっているこちらにも“恐る恐る”という感じで「これくらいの感じであれば、見てくださるみなさんに納得していただけるんじゃないか?」と測りながら制作している部分はありました。今回はもう少しアクセルを踏めるというところがあって、ドラマ的な世界観を築くことができたので、それに則りつつ、さらに踏み込んだ表現に転換できるので、その分では少し変化があって、今回のほうがより“原作寄り”の表現ができていると思います。

原作の“奇妙さ”をより深く表現! 前作からの進化と挑戦



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「岸辺露伴は動かない」第6話
――改めて放送を控える「岸辺露伴は動かない」の4話~6話について、柘植さんの視点で魅力やここを楽しんでほしいというポイントを教えていただければと思います。

1話、2話、3話がある程度のご支持を得られたという思いがある中で、今回の続編をつくれることになって、やはり前作よりもさらに踏み込んだ荒木先生の“原作感”をもう少し色濃く入れられていると思います。1~3話で貫かれた文脈を踏襲しつつ、原作にある“奇妙な”世界観、ファンタジー的な世界をより深く描けていると思います。

――第4~6話のラインナップ(「ザ・ラン」「背中の正面」「六壁坂」)が発表されて、「これぞ『ジョジョ』の世界! これぞ『岸辺露伴』!」と原作ファンの期待もさらに高まっていると思います。

そうなんですよね(笑)。原作が本来持っている怪奇色が強まっていて、楽しんでいただけると思います。「これをやっちゃって、次があったらどうするの?」という感じです(笑)。

――ここから再び、柘植さんの仕事観などについてお聞きできればと思います。人物デザイン監修という仕事のやりがい、おもしろさについて教えてください。

先ほども説明しましたが、僕自身は自然にこの仕事をやることになってしまったという経緯がありまして、例えば「画家になりたい」みたいな感じで目指してこの仕事に就いたわけではなく、流れ流れてこの仕事をやるようになったんですね。

その中で「人物像を美しくしたい」「人物像の本質的な表現をしたい」という思いは、ヘアメイクとしてこの世界に入った頃からいまに至るまで終始一貫していて変わりません。心から美しい人物――表層的な部分だけでなく、本質に近いという意味で美しい人物を作るというのが僕が仕事をする上でのテーマなので、そういう意味でやりがいを感じる仕事だなと思います。とはいえ、僕の場合、受注仕事なので、監督や俳優さん、プロデューサー、局から依頼があって初めてできる仕事で、一貫して受動的なんです。“やりがい”という気持ちは能動的なものですけど、環境的、肉体的な状況は受動的なので、不思議な感じですね(笑)。

【映画と仕事 vol.13 後編】岸辺露伴のつくり方! 人物デザイン監修・柘植伊佐夫が明かす、高橋一生の私物のパンツから割り出した“最適解”

――柘植さんが現在の仕事をする上で、最も影響を受けた存在(ひと・もの・作品など)は何ですか?

すごく月並みなんですけど(レオナルド・)ダ・ヴィンチですね。実家にルーブル美術館の本があって、しかも全集なのにそのうちの1冊しかなくて(笑)、そこに「モナ・リザ」や「岩窟の聖母」があって、それがすごく好きで、子どもながらにずっと見てましたね。なので、自分の中の美的な基準点というのはルネサンスにあって、すごく古典的だと思います。

――美容と人物デザインのラボとして、一般の方・プロフェッショナルを目指す方を問わず参加できる「コントラポスト」を主宰されていますが、ご自身のお仕事における次の世代の育成といったことは意識されているんでしょうか?

うーん、その意識がないわけではないですし、講師などのお話をいただいたり、実際に以前、ヘアメイクのセミナーを行なって優秀なヘアメイクがそこから輩出されたりということもあったんですが、すごく積極的に若い世代にこちらから何かを教えたいというよりは、尋ねられたら教えるというスタンスですね。

自分がやっていることって、すごく伝えにくいことなんです。あと、“縁”が大事だったりもするんですよね。だから「こういうことを教えるから、興味のある人は集まって!」という感じの学校教育型のスタイルには向いてないと思います。つまり、“師弟関係”とか“学び”ということの本質を理解できないと、この仕事って伝えていけないと思うんです。人物デザインであったり、新しいクリエイティブを後世に伝えていこうという関係って、学校教育型のやり方だとあまりに一様なものになり過ぎてしまって、核の部分が伝わりにくいんじゃないかと感じています。

一方で、広く薄く、システマティックなやり方であっても、そこから何かを拾いあげることができる人たちというのが、多くはなくともいて、それによって伝わっていくということもありうるので、一概にそのやり方を否定するつもりもありませんが…。――柘植さんがやられているような人物デザインやクリエイティブ、もしくは映画やドラマの世界での仕事を志している若い人たちに何かメッセージや「こういうことを大切に」というアドバイスなどがあればお願いします。

そうですね…、このくらいの年齢になると、過去の自分がやったことが、未来の自分を追いかけてくるんですよ(苦笑)。良いことをやれば、それはそれで良いことが追いかけてくるし、悪いことをやれば、悪いことも追いかけてくるんです。

でもホルモンバランスのせいなのか、若い頃ってなかなか理性的なことばかりをするわけでもないし、むしろそういう理性的でない部分が良かったりもするわけで、野放図にやるのはいいと思うんです。とはいえ、必ず自分がやったことは、自分の未来に影を落とすので(笑)、そのことだけは肝に銘じて置いたほうがいいよと言いたいですね。必ずですから(笑)!心して行動したほうがいいよと。

(photo / text:Naoki Kurozu)

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