中国市場の締め付けとシリーズ作品以外の危機 「パンデミック&配信シフト」以降も激震が続く映画界
《text:宇野維正》
当初の予測から正常化までの時間は大幅にずれ込むことになってしまったが、2021年の映画界は「パンデミックからの回復」の1年となった。昨年に続いて、本稿では海外と日本、それぞれの映画界で2021年に起こったことについて、前後編に分けて振り返っていきたい。昨年の記事では最後に「2020年の映画界に本当は何が起こっていたのか?ーーそれに多くの人が気づくのは、きっと2021年になってからだ」と締めたわけだが、年末になってその真実が見えてきたのではないか。そして、それは多くの映画人や映画ファンにとって「不都合な真実」と言えるものであることを最初に断っておきたい。
パンデミックの影響によって、例年よりも約2ヶ月遅い4月に会場の収容人数を大幅に制限したかたちで開催された第93回アカデミー賞も大きな盛り上がりを見せることなく、昨年3月からの重い空気が払拭されない状況が続いていた2021年の前半。公開の延期&再延期が続いていたブロックバスター作品の口火を切ったのは、3月に北米公開された『ゴジラvsコング』(日本公開は7月)だった。同作はオープニング5日間で4810万ドル(約55億円)