【インタビュー】マッツ・ミケルセン 役への向き合い方を語る「どう演じればいいか、答えを探し続けるのが俳優の人生」
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で、シリーズはいよいよ佳境に。闇の魔法使い、グリンデルバルドは世界支配に向けて着実な動きを見せ、ニュートやダンブルドアは彼の企みを阻止すべく決意を固める。そんな物語世界で鍵を握るのはやはり、すべての元凶となるグリンデルバルド。さらには、彼を演じるマッツ・ミケルセン。そこでリモートインタビューを行い、作品について、現在の彼自身について話を聞いた。
ダンブルドアとの違いは「夢の追い方」
シリーズ最大の悪役として、前2作でも存在感を放ったグリンデルバルド。互いを無二の存在と認めながら、やがて道を分かつグリンデルバルドとダンブルドア(ジュード・ロウ)の関係が、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』ではこれまで以上に影を深く落とす。
「かなり若いころからお互いを知り尽くしてきた2人だからね。
2人とも非常に強い魔力を持ち、それゆえに生まれる孤独を抱えている。そんな2人が出会い、相通ずるものを見出し、よく似た夢を追い、友情を育んだ。知っての通り、ある事件を境に別々の道を行くのだけど。夢の追い方の違いが、2人の道を分けた原因の1つだと思う。とは言え、彼らには強いつながりがあるし、相手の中に自分自身を見ているところがある。だからこそ、互いへの落胆を隠せないんだ。分身同士でありながらも、全く違う2人だから」。
ダンブルドア先生がニュート(エディ・レッドメイン)らに慕われるように、グリンデルバルドにも人を惹きつけて離さない魅力がある。
ただし、魅力的であると同時に、危険なのがグリンデルバルドの厄介なところ。ダンブルドアとの違いであるという「夢の追い方」も、あまりに残忍だ。
「人を惹きつける魅力を持ちながら、非常に危険な思考も持ち合わせている。権力を手にした者にとって、それほど最高の資質はないだろうね。そんな権力者は現実の歴史上にもいたし、身近にも意外といる。人はなぜか、そういった力を持つ人に惹かれるんだ。賢さや身体能力の高さを見出し、パワフルな存在だと捉えるのだろうね」。
例えば「ハンニバル」でマッツが演じたハンニバル・レクター博士も、魅力と危険が混在する人物だった。
魅力的、けれど危険。魅力的、けれど危険。その複雑さ、危うさをどうしようもないほど巧妙に演じるのも、俳優マッツ・ミケルセンだ。「演じていて楽しいかは…どうだろう?(笑)興味深いキャラクターたちではあるよね」と笑う。
「これはよく言っていることなのだけど、グリンデルバルドと同じ資質はダンブルドアにもあると思う。面白いことにね。何を美しいと見なすか、醜いと見なすか。それこそが映画作りにおけるジレンマなんじゃないかな。
何が善で、何が悪か。それを決めるのも決めないのも映画。もちろん、僕たちの人生においても同じことが言えるのだけどね。だから…、そうだね。そういったキャラクターを演じるのは確かに楽しいことかもしれない」。
「どう演じたらいいか、答えをずっと探し続けるのが俳優の人生」
「現実世界で起きていることに注意を向けられるのもエンターテインメントなら、現実逃避をさせてくれるのもエンターテインメント」とも語るマッツは、近作の『アナザーラウンド』や『ライダーズ・オブ・ジャスティス』でも名演を披露。すでに撮影済みの『インディ・ジョーンズ』最新作にも期待が高まっている。まさに、「現実世界で起きていることに注意を向けられる」作品から「現実逃避をさせてくれる」作品まで。
幅広い作品に望まれ、巡り合う秘訣でもあるのだろうか。もちろん、名優であること以外に。
「どうだろう?正直なところ、秘訣は分からない。指(人差し指と中指)をクロスして、幸運を祈るくらいはしているかもしれないけど。『役が僕に来ますように!電話がかかってきますように!』ってね(笑)。でも、それはきっとみんなやっていることだと思う。確かに君の言う通り、いまのところすごくいい流れで来ているし、これが続けばいいなと願っている。いい流れが来た理由は本当に分からないけど、僕の仕事を気に入ってくれているのだと思いたいな。
『マッツが演じるキャラクターがいる』といろいろな作品で思ってもらえたり、『マッツならどんな企画も可能だ』と思ってもらえたりしていたらすごくうれしい」。
“いい俳優とは?”の答えは、「いまだに分からない」という。
「俳優としてどうあるべきか、どんな俳優が理想なのか。一言でシンプルに言い表すことはできない。むしろ、俳優にとってはすごく難しい問題なんだ。なぜなら、どう演じたらいいか、答えをずっと探し続けるのが俳優の人生。ある意味、探し続ける旅の道のり自体が俳優であることを指すと思う。もちろん、その過程で小さな方法や手段には出会えるのだけど、『これ!』という正解に出会うことは絶対にない。
そう考えると、僕の俳優としてのモットーは、『仕事をし続けること』かもしれないね。仕事をし続けてさえいれば、何か学べることがあるかもしれないから」。
(text:Hikaru Watanabe)
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ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 2022年4月8日より全国にて公開
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