【シネマモード】人間とは、ないものねだりな生き物なのね。『17歳の肖像』
(Photo:cinemacafe.net)
とにかく、すこぶる評判が良い『17歳の肖像』。主演の新星、キャリー・マリガンが本年度のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、さらには作品賞、脚色賞にも選ばれているということは、キャスティングが良く、脚本が素晴らしく、作品としての総合評価ももちろん高いという、バランスの取れた秀作であるということの証明でもあります。脚色したのが、『ぼくのプレミア・ライフ』『アバウト・ア・ボーイ』『ハイ・フィデリティ』の作家ニック・ホーンビィで、監督が世界を大いに泣いて笑わらせた『幸せになるためのイタリア語講座』のロネ・シェルフィグですから、外すはずもありませんよね。
少女時代の揺らぎをとても丁寧に、大人から見れば痛いくらいに懐かしく描いているこの作品、青春物語というよりは人生ドラマ。大人に憧れる世間知らずの少女が、現実世界へと入っていく覚悟を決めるまでを緻密に描写しながら、大人たちがもつ大人特有の“スレ”を密かに皮肉る。ピーター・サースガード演じる上っ面のいい大人、ヒロインの両親のように善良だけれど無神経でだまされやすい大人、知的だけれど頭の固い教師陣など、早熟で知識欲いっぱいのヒロインを取り巻く大人のタイプもいろいろです。