『イニシェリン島の精霊』リアルさとオリジナリティあふれるこだわりの衣装デザインに注目
マーティン・マクドナー監督作『イニシェリン島の精霊』では、作品の世界観にリアリティをもたらすため、衣装デザインもこだわり抜かれている。スタッフと監督のコメントからその魅力を紐解いていく。
1920年代、アイルランドにある仮想の島・イニシェリン島を舞台に、心優しく気のいい男パードリック(コリン・ファレル)と音楽を愛する初老の男コルム(ブレンダン・グリーソン)の親友同士が仲違いしていくさまを描く本作。
荘厳な大自然と島民の閉鎖感が同居した島独特の空気感をリアルに描くため、実際にアイルランドの島で撮影が行われたが、そのこだわりはロケーションだけでなく、衣装デザインへも注がれた。
本作では、1920年代のアイルランドを描いた『マイケル・コリンズ』や『アイルランド・ライジング』でアシスタントとして衣装に携わり、ケン・ローチ監督の『麦の穂をゆらす風』では衣装を担当するなど、当時のアイルランドの衣服に手慣れているニー・ヴァルドウニグが衣装デザインを担当した。
当時の人々は互いに似たような装いをしていたようだが、ヴァルドウニグは「マーティンは“皆が制服を着ているようにはしたくない”と言った。