2023年2月16日 18:30
中国の若者たちが羨んだ、貧しい農民夫婦の物語『小さき麦の花』
2022年の夏、ある農村の夫婦の物語が中国の若者たちの心を掴んだ。スター不在、低予算の映画『小さき麦の花』が異例のヒットを記録し、レビューサイト「豆瓣(ドウバン)」では平均8.5(10点満点)という高い評価を獲得した。アクションや特撮が売りの愛国ヒーローものやコメディがヒットの定石になっていた中国映画市場に起きた「奇跡」だ。
舞台は2011年、中国北西部に位置する農村。貧しい農民の有鉄(ヨウティエ)は馬(マー)家の四男坊で、三男の家で暮らしている。三男にとっては、中年になっても独り者の弟に家にいられては体裁が悪い。そこで、体に障がいがあり、やはり家族から厄介者扱いされている貴英(クイイン)との見合いを持ちかける。ヨウティエとクイインはこうして出会い、夫婦となる。
寡黙で愚直なヨウティエと、子供が産めない体で、すぐに失禁してしまうクイイン。あえて言い方を選ばなければ、貧しい農村の中でも底辺の暮らしを強いられた夫婦だ。そんな2人が感情を育み、暮らしを紡いでいく姿を、やはり中国北西部の農村で育ったリー・ルイジュン監督が丁寧に映し出す。
殺伐とした人間関係に疲れた?若者たちが支持
筆者の知人である中国在住の30代女性は、この映画の夫婦が「羨ましい」