2023年5月20日 14:00
【レビュー】韓国映画の母と娘の幻想を打ち破るリアリズム『同じ下着を着るふたりの女』
先日の第59回百想芸術大賞がそうであったように、韓国ドラマでは女性主人公や女性脚本家らの作品が高い評価を集めている。映画界でも興行収入を稼ぐ大作映画としてはまだまだでも、インディペンデント映画には日本でも話題を呼んだ『はちどり』のキム・ボラから、ぺ・ドゥナと再タッグを組んだ『あしたの少女』のチョン・ジュリ、キム・へスを主演に迎えた『ひかり探して』のパク・チワン、『野球少女』イ・ジュヨン主演の『なまず』のイ・オクソプなど、今後が楽しみな同世代の女性映画作家たちが次々と現れている。
『同じ下着を着るふたりの女』という、風変わりなタイトルの長編デビュー作を手がけたキム・セイン監督は、この系譜に連なる新時代の女性映画作家の1人だ。“同じ下着を着るふたりの女”とは実の母と娘のことではあるが、これまでの韓国映画ではあまり見ることのなかった母娘の愛憎関係が痛々しいまでに描かれている。
母娘関係の幻想を打ち破る!?
例えば、ベストセラーを映画化したキム・ドヨン監督『82年生まれ、キム・ジヨン』には、ワンオペや姑との関係、再就職の困難などから心を病んでしまった現代に生きる娘(チョン・ユミ)の悲痛に共感を寄せ、申し訳ないと涙を流す母(キム・ミギョン)