ヴェネチアで主演男優賞を獲ったイタリアの名優が語る“家族”
(Photo:cinemacafe.net)
物語で描かれる時代は1930年代から50年代。父と母と娘の3人が、互いにわだかまりを持ちつつも取り繕い、つつましくも幸せに暮らしていた。だが、ある殺人事件と忍び寄る戦火をきっかけに、平穏に見えた生活が少しずつほころびを見せていく。最初にこの物語に触れたときの印象を尋ねると「力強く、そして重要な意味を持つ作品だと感じた」という答えが返ってきた。
「私が演じた父・ミケーレ。この役を演じることで、自分のキャリアにまた新たな風を吹き込ませることができると感じたんだ。物語に流れる空気に、舞台の匂いを感じたしね」。
シルヴィオは、当時と現代のイタリアにおける家族や父親の存在について言及しつつ、この物語ならではの家族の関係の面白さをこう語る。
「やはりこの物語の時代は、父親こそが一家の長たる存在。法律上、離婚が認められておらず、夫を裏切った妻に対する刑罰まであったわけで、当然、現代とは違う。みなさん、いろんな映画などを観てご存知でしょうが、現代のイタリアでは家族の中心にいるのは“ママ”だからね(笑)。でも、30年代から50年代を描いているにもかかわらず、ここで描かれる一家では、父親が母親としての役割を果たしたり、母親が父性を発揮したりしています。
この逆転現象が面白いところだね」。
ちなみに、娘のジョヴァンナ役のアルバ・ロルヴァケルの起用を監督に提案したのはほかならぬシルヴィオなのだとか。
「そう、この役には若さと確実な実力が必要でした。実際に現場で彼女の才能を目の当たりにした人々は、みんな驚いていたよ。彼女とは、似たフィーリングを分かち合うことができて、現場を離れても非常に良い関係を保つことができたんだ」。と、ここで「“いい関係”と言っても、別に付き合ってるわけじゃないよ」と加えるところがさすが、イタリア男(?)。ちなみに、自身が考える父と娘の理想的な関係は?との質問には少し困ったようにこう答えた。
「両親が常によい見本を示し続ける…と言いつつ頭で考えていることを実践することほど難しいことはないけどね(苦笑)。
たとえ、笑顔で会話をしていても、何を考えているのか読み取るのは難しい…それは日本の家族だって同じでしょう?」
「映画を観て、ステレオタイプではないイタリアの姿を見てほしい」と異国のファンに向けたメッセージも。
「イタリア人というと、どうしてもにぎやかで、信用できないといったイメージを持つ方が多いでしょう(苦笑)。逆に日本について緻密な技術を持ち、東洋におけるスタンダードを確立した国、というイメージを我々が持っているようね。でも、映画を観てステレオタイプの先にあるものを見つけて、『もっと知りたい』という好奇心が生まれてくれたらこんなに嬉しいことはありません」。
「美しくない国で美しい映画を撮ることはできないのだから――」。最後に優しくこう付け加えた。
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