【インタビュー】エレガンス・ブラットン監督、『インスペクション』は観た人が「自分には価値がある」と分かる作品に
意志に胸を打たれる方は多いかと思います。ご自身の経験も踏まえ、なぜ折れずにいられたのでしょう?
僕自身においては、自力でつかみ取らないと誰も与えてくれなかったからです。何の保障もないからこそ、信じるしかありませんでした。そして『インスペクション ここで生きる』においては、希望や不安という意味では100%自伝です。むしろ、言いたかったことややりたかったことという心の中の願望においては、実際に僕の身に起きたこと以上にリアルですらあります。
フレンチは、自分がゲイだから弱く、それが理由で本物の男として認められていないとずっと信じていて、現状を変えるために海兵隊に入ります。でもブートキャンプを体験し、隊員の誰もが「自分は本物の男になれないかもしれない」という不安を抱いていると気づくのです。そして「自分は独りではない」と知った彼は、“ラディカル・エンパシー(革新的な思いやり)”を用いてある種、戦略的に優しさを見せていきます。
移民やリベラル(自由主義)寄りの白人の海兵隊員を選んで、相手の繊細な部分に触れて寄り添おうとするのです。
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軍服を着ていなければフレンチのことなど相手にしなかった仲間に対して、不可欠な存在になろうと努めること――その体験を通して彼は「自分には実は何の問題もなく、問題なのは自分を変えないと馴染めない社会だ」