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1分でできる世界遺産小話 (16) 世界遺産にとって最大のイベント、「世界遺産委員会」の裏側とは?(前編)

マイナビニュース
1分でできる世界遺産小話 (16) 世界遺産にとって最大のイベント、「世界遺産委員会」の裏側とは?(前編)
ワールドカップ、終わりましたね! 朝4時や5時に起きてテレビ観戦し、寝不足の日々を過ごした方も多かったのではないでしょうか。一方、世界遺産業界にとって年に一度の最大のイベントだった世界遺産委員会も、6月25日に終了しました。

『富岡製糸場と絹産業遺産群』の世界遺産登録も、ワールドカップのニュースに押され気味であまり扱いが大きくなかったのが残念でしたが、実は今回の会議では様々な出来事がありました。そこで今回と次回の2回に分けて、あまり報道されていない、世界遺産委員会について解説します!

○世界遺産を決める会議は年に1度のみ

今年、世界遺産はついに1,000件の大台を突破して、1,007件となりました。こんなにたくさんの世界遺産が、これまでにどうやって誕生したのかというと、1978年に世界遺産第一号の12件が決まって以降、毎年少しずつ増えていったのです。

増える、といっても日々少しずつ増えているのではなく、1年に1度開催される世界遺産委員会のみで審議が行われるのであり、この会議以外で世界遺産が誕生することはありません。毎年決まった数が増えるのではなく、多少のばらつきはありますが、例年約20件前後が誕生します。なお、現在の保有国トップ3は、1位イタリア(50件)、2位中国(47件)、3位スペイン(44件)となっています。


各国は事前に世界遺産登録を目指す物件を推薦しており、年間で合計約50件の推薦があります。この推薦は各国政府による自薦なのですが、それでは客観的に見て本当に世界遺産にふさわしい価値があるのかどうか分かりません。そこで、文化財や自然保護の専門家による審査が行われます。その審査結果を参考にして、世界遺産委員会の場で最終的に決議を行っています。

そもそも世界遺産とは、世界遺産条約を締約している191カ国の中から登録されるのですが、さすがに全締約国が一堂に会して審議を行うわけには行きません。そこで、21カ国の委員国を選出し、合議制で決めているのです。

○来年はドイツ開催

会議が開催されるのは、世界遺産を保有している国で持ち回りとなっています。今年は第38回世界遺産委員会が、6月15日~25日にかけてカタールのドーハで開催されました。
会場は、磯崎新氏が設計したカタール国立コンベンションセンターです。時期は固定ではないのですが、ここ最近は6~7月にかけて2週間弱の日程で開催されることが多いです。開催地は、昨年はカンボジアの首都プノンペン、一昨年はロシアのサンクトペテルブルクでした。来年はドイツのボンが決定しています。開催国イコール議長国ということで、今年はカタールのマヤサ王女が議長を務めました。「富岡」登録を告げる、木づちをたたいていた女性です。

カタールといえば、会議の初日に、紛争・災害によって崩壊の恐れがある世界遺産を守るための新たな基金として、1,000万ドル(約10億円)の寄付をすると表明しました! 10億円……。さすが世界有数の成長国です。
カタールはFIFAワールドカップ2022の開催も決まっていますし、国際社会で果たす役割がどんどん大きくなっていきそうですね。

ところで委員国以外にも、会議にはオブザーバーという形での参加(傍聴)が可能です。例えば、将来的に世界遺産登録を目指す物件を保有する自治体の担当者の方や、報道関係者、世界遺産に関する情報を扱っている関係者・研究者などです。筆者もいずれ、ぜひ委員会を見に行きたいと思っています。

次回は、今年新しく誕生した世界遺産の中での注目物件や、世界遺産委員会で問題視されている課題などについて詳しくお話していきたいと思います。

○筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)
「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。


○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて

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