キヤノン「EOS M2」長期試用レポート第1回 - 標準ズーム+単焦点レンズで楽しむ女性ポートレートの巻
キヤノン「EOS M2」は、手のひらサイズのコンパクトボディに、APS-Cサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。その魅力のひとつは、多彩なEF、EF-S、EF-Mレンズのすべてが利用できること。長期レポートの第1回は、基本レンズである標準ズームと、アダプターを介して装着できる低価格の単焦点レンズを取り上げよう。
関連記事
キヤノン、撮像面位相差AFが大幅に性能向上したミラーレス一眼「EOS M2」(2013年12月3日)
キヤノンのミラーレス「EOS M」シリーズには、専用の「EF-M」レンズとして、今のところ標準ズーム、広角ズーム、望遠ズーム、広角単焦点レンズの4本がラインアップされている。まだ種類は豊富とはいえないが、いずれもコンパクトで使い勝手のいいレンズである。
このうち基本の1本といえるのは、EOS M2の各種レンズキットの付属レンズでもある標準ズーム「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」だ。ビギナーなら、あれこれと交換レンズを揃える前に、まずはこの標準ズームをきっちりと使いこなすことをオススメする。
スペック的に際立ったところはないが、低価格ながら写りは良好だ。
解像感はまずまず高く、各種の収差は目立たないように低減されている。また210gと軽量ながら、外装やマウント部に剛性感の高い金属素材を採用している点もポイントが高い。同社の一眼レフ「EOS Kiss」シリーズのキットレンズに比べ、見た目の高級感で上回る。
下の写真は、この標準ズームの18mm側で写したもの。露出をややオーバー気味に設定することで、夕方ながら昼間のような明るいイメージにしてみた。
次の写真は、同じ場所で外部ストロボを発光させて撮ったもの。撮影時刻はほぼ同じだが、こちらは露出を2段下げることで、背景を見た目に近い明るさで再現した。ストロボのオン/オフによって、まったく雰囲気が異なる写真になることが分かるだろう。
次は、同じく外部ストロボを使いながら少しトリッキーな撮り方を試したもの。シャッター速度を1/5秒の低速にセットし、シャッターを切ると同時にあえてカメラを動かすことで、ブレを作り出した。
また「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」は、接写に強いことも特長だ。最短の撮影距離はズーム全域で25cmで、最大撮影倍率は0.25倍。マクロレンズほどではないが、ちょっとした接写が楽しめる。
●フィルム時代から人気の低価格単焦点レンズを試す
今回使ったもう1本のレンズは、開放値が明るい単焦点レンズ「EF50mm F1.8 II」だ。これは、一眼レフ「EOS」シリーズ用のレンズであり、EOS M2には「マウントアダプター EF-EOS M」を使うことで装着可能になる。もともとはフルサイズ用の標準レンズだが、EOS M2に装着した際は、焦点距離80mm相当の中望遠レンズとして活用できる。
ちょうどポートレート用に最適な焦点距離だ。
このレンズのいちばんの特長は、実売1万円前後の低価格にもかかわらず、切れ味鋭い描写が得られること。それと同時に、開放値F1.8によるボケの表現力も楽しめる。下の2枚は、標準ズーム「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」と「EF50mm F1.8 II」をそれぞれの開放値で撮り比べたもの。開放値に3段以上の差があるため、背景部分のボケ具合にも大きな違いが出ている。
レンズの外装は樹脂素材で、その作りは少々チープな印象が残る。EF-Mレンズとは違って、オートフォーカスの駆動音がギーギーと鳴ることや、マニュアルフォーカスの際に、フォーカスリングの回転操作があまり滑らかでないことなども指摘できる。とはいえ、この価格の安さと写りの良さを考えれば、外装や操作感に関する弱点には目をつぶってもいいと思える。
しかも、レンズの重量は130gと軽いので、マウントアダプター経由でEOS M2に装着しても全体のバランスはちょうどいい。このレンズの発売は1990年。実に20年以上に渡ってロングセラーを続けているレンズなのである。
キット付属の標準ズームを基本にしつつ、限られた予算内で大きなボケ表現を味わうには50mmの単焦点レンズがオススメ。というのが今回の結論だ。
(モデル:砂川陽香)