"東洋のガラパゴス"奄美大島で山・川・海を全て楽しむ旅がしたい!-写真40枚
鹿児島と沖縄の間に浮かぶ奄美群島。群島の中で最大の島である奄美大島は、極めて古い時代に大陸から離れて孤島化し、一度も海没しなかった歴史をもっている。そのため、動植物たちは独自に進化を遂げ、固有種の豊かな極めて貴重な地域となった。「東洋のガラパゴス」とも称される奄美大島では、いたるところで"ここだけの出合い・体験"が待っている。そんな旅がしたいと思ったら、迷わず奄美大島に行くしかない!
○東京から2時間で行ける自然の宝庫
奄美大島には群島の玄関口である奄美空港や名瀬港があり、鹿児島や各島などとの人・モノの流通の要となっている。群島間以外の空の旅なら、JALグループが運行する羽田/伊丹/福岡/鹿児島/沖縄発着のほか、ANAが100%出資する低コスト航空会社(LCC)のバニラエアが7月に就航した成田発着がある。東京からの場合は片道2時間程度のフライトなので、「仕事が忙しくてノープランのまま乗っちゃった!」という人でも、飛行機の中で旅の予定を考える余裕はありそうだ。
電車のない島ではクルマでの移動が一般的。
現地では、2時間程度から1日かけて行うものまで様々な自然体験ツアーが用意されており、空きがあればその場で電話予約することも可能だ。そこで今回、奄美大島を満喫するポイントとして、「山・川・海」をテーマにしたアクティビティを体験することにした。
○神秘を感じる原生林はゴジラファンの聖地!?
まず「山」である。奄美大島には希少野生動植物が生息・生育する亜熱帯照葉樹林が広がっており、現在は暫定リスト入りが保留されているが、徳之島や沖縄本島北部、西表島などとともに、「奄美・琉球」としてユネスコの世界遺産登録を目指している。
島の中心地よりやや南西に位置する「金作原(きんさくばる)原生林」は、奄美大島の中でも天然林が半分以上残っていることで有名な原生林。樹齢100年を越すであろう「イタジイ」や「イジュ」などもあり、巨大すぎる「ヒカゲヘゴ」を見上げると神秘さを感じずにはいられない。
このあたりは映画「ゴジラ」の舞台にもなったため、自前のミニゴジラを携えて記念撮影をするファンもいるそう。原生林の奥からは様々な野鳥のさえずりが聞こえてくるが、地元のガイドはさえずりを聞き分けて野鳥の名前や特徴なども教えてくれるので、ガイドを利用することをオススメしたい。
○睡眠中の野鳥をそっと観察
奄美大島の山と言えば、「アマミノクロウサギ」(以下、クロウサギ)も貴重な存在。奄美大島と徳之島にしか生息しておらず、国の特別天然記念物にも指定されている。通常のウサギと違って全身が黒いほか、耳や足は短くずんぐりとした体型で動きもややにぶい。離島という外敵が比較的少ない環境ゆえに、独自の進化をしてきたと考えられている。道路には「飛び出し注意」と書かれたクロウサギの標識があり、奄美市公式キャラ「コクトくん」も、元々はクロウサギだったという設定である。
しかし、クロウサギは絶滅危惧種に指定されている上に夜行性のため、地元の人でもなかなかお目にかかれないという。そこで今回、奄美大島観光協会事務局長の西條和久さんに案内してもらい、夜の森へと出掛けることにした。
道中、燃えるような赤いくちばしで"火の鳥"とも称される「リュウキュウアカショウビン」やさえずりに特徴がある「オオトラツグミ」、紫藍色の翼の「ルリカケス」、子育て中の「アオバズク」などにも遭遇。
野鳥たちは電線の上で寝ていることが多かったが、これは毒蛇の「ハブ」などに狙われてもすぐに気付いて逃げられるように、ということらしい。一方、目線を落としてみると、無毒だが褐色系の毒々しい模様が入った「アカマタ」や、長い足で人をびっくりさせるほどの跳躍力をもつ「アマミハナサキガエル」などもいた。
○すぐに隠れてしまうクロウサギたち
しかし、目的のクロウサギは臆病な性格なので、なかなか姿を現してくれない。道の中央にクロウサギのふんを見かけることがあったが、見晴らしの利く開けたところでないと、クロウサギは安心して用をたせないからだそう。逆に言うとこの時はクロウサギも動けないので、シャッターチャンスと言えるだろう。ナイトツアーはクルマで走りながら2時間程度行ったが、その間、何度となくクロウサギを見ることができた。しかし、この遭遇率は"本当にラッキー"の部類に入るそうだ。
なお、先にも触れたように、山の中には奄美大島の生態ピラミッドの頂点に立つハブもいる。
とはいえ、地元の人でも自然のハブに遭遇することはまれで、あえてハブの生息する場所へは近づかないことが島の暗黙のルールとなっているようだ。ハブは毒蛇のため、マイナスのイメージが強いかもしれないが、「ハブがいたからこそ、奄美大島の自然が守られてきた」とハブをテーマにしたショップ「原ハブ屋奄美」の原武広さんは言う。●夜のマングローブは一味違う! 奄美大島の川や海で"THE・南国"を満喫
○繊細な花は一夜だけ
続いては「川」。ここでの見どころはマングローブである。マングローブは海水と淡水の混ざった水域に生息する樹木の総称であり、樹木は「メヒルギ」や「オヒルギ」など様々な種類がある。
もし時間があれば、夜と早朝のマングローブを見ていただきたい。マングローブは夜、辺りに甘い香りまき散らしながら、「サガリバナ」という繊細な花を咲かせる。その花は一夜で散ってしまうので、早朝には散った花が川面でただよい、幻想的な雰囲気が楽しめる。
奄美大島の中央部には71ヘクタール以上にわたって広がる、国内で2番目に大きいマングローブ原生林があり、そばには絶滅危惧種の「リュウキュウアユ」のほか、野鳥や貝、カニなどが生息している。干潮時には片方のはさみが大きいカニの「シオマネキ」にも出合えるが、マングローブのトンネルをカヌーでくぐりたいなら、満潮時に訪れるようにしよう。
カヌーは操作も簡単なので、子供から年配者まで気軽に楽しめる。ゆったりとした流れに身を任せ、ただボーっとするだけでも気持ちが安らいでくる。マングローブのそばをよく見ると、小さなカニがあちこちにいる。カニ探しに夢中になって友人たちに置いていかれても、焦らずマイペースでパドルをこごう。
○ウミガメに会いに行こう!
南国の奄美大島で楽しめる自然と言えば、やはりエメラルドグリーンに輝く海である。奄美群島の周辺には220種近くものサンゴが生息しており、その空間は魚や貝、エビたちなど多様な海生生物の生息・産卵場所となっている。
また、ふだんは海洋を回遊するウミガメたちも、産卵期(4~8月)にはメスだけが奄美群島に上陸。ふ化(6~10月)の時期には、ふ化した小亀たちが数日かけて地表近くに移動し、夜には一斉に海に向かって歩み始める。奄美群島はウミガメの生息にとっても重要な場所なのである。なお、ウミガメに会えるシーズンは限定されているが、「奄美海洋展示館」では大水槽で「アカウミガメ」や「アオウミガメ」が見られるほか、直接エサをあげることもできる。
海がテーマの体験ツアーでは、ダイビングやウインドサーフィン、洞窟探検、また、サンゴの海上をモーターグライダーで遊覧飛行という体験も可能。もちろん、泳ぐという選択もある。地元の人は日差しの強い日中を避け、ちょっと涼しくなってきた時間帯を狙って海に繰り出すそうだが、南国らしさを実感するなら、太陽が高い内に光り輝く海を楽しんでいただきたい。
※取材協力:ぐーんと奄美、奄美大島観光協会、バニラエア
※記事中の情報は2014年8月取材時のもの
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