ソロシネマ宅配便 第2回 第2回『初恋』バージョンアップした“令和版Vシネマ”
懐かしいな。
あらゆるシーンから血と体液と90年代のむせ返るような臭いが漂う『初恋』を観ながら、そう思った。昔の友だちと再会したような、まるでデジャヴのような、そんな映画体験である。
個人的に最近ヒマだ。コロナ余波でプロ野球もオープン戦全試合無観客で行われ、飲み会みたいな集まりも全然ない。進行中の企画はことごとく途中で止まり、テレビじゃトイレットペーパーという究極の日常の象徴が不足なんてセコいデマが飛び交う。こんな時だからこそ、劇場の暗闇にまぎれて映画の世界に逃げ込みたくなる。
物語は天涯孤独のボクサー葛城レオ(窪田正孝)が、「助けて!」と走ってきた少女を追う男を反射的にぶん殴り気絶させたところから動き出す。
殴り倒された中年男は刑事の大伴(大森南朋)で若手ヤクザの加瀬(染谷将太)と組の資金源のブツを横取りしようと、囚われの少女モニカ(小西桜子)を使ったのである。試合でKO負けを食らい、さらに難病の宣告をされ自身の未来に絶望していた葛城レオは、なし崩し的にモニカと行動をともにする。
主人公は崖っぷちボクサー、組織に追われる悲劇の美少女、あがき続ける時代遅れの男たち、バイオレンス、裏切り、チャイニーズマフィア、拳銃、カーアクション……。