理研、毛根に統合失調症や自閉症を診断する指標となる遺伝子を発見
この成果は理研脳科学総合研究センター 分子精神科学研究チームの前川素子 研究員、同 吉川武男 チームリーダー、東京都医学総合研究所、浜松医科大学、山口大学、慶応義塾大学からなる共同研究グループによるもので、米科学雑誌「Biological Psychiatry」のオンライン版に掲載された。
統合失調症や自閉症などの精神疾患では、遺伝子の発現状態を含めて脳に何らかの変調が生じることが原因と考えられている。しかし、脳の一部を採取することはできないため、現在の診断は患者の行動や体験、家族の情報などに基づくところが大きく、客観的な「生物学的診断ツール」がないため、精神疾患の早期診断を補助する「バイオマーカー」の開発が待たれていた。
同研究グループは、脳の細胞と同じ外胚葉由来であり、サンプルの採取が容易な頭皮の毛根細胞に着目。解析の結果、脳だけで発現していると考えられていた遺伝子の多くが、毛根細胞でも発現していることを見いだし、毛根細胞が脳内の遺伝子発現の状態を反映している可能性を突き止めた。さらに詳しく調査した結果、統合失調症の人では脂肪酸結合タンパク質(FABP)の1つであるFABP4をつくる「FABP4遺伝子」の発現量が対照群に比べ約40%低下し、自閉症の方の毛根細胞では神経系の細胞同士の結合に関与する「CNTNAP2遺伝子」の発現が低下していることが判明した。
毛根細胞は血液と比べて外部からの刺激や体の状態に影響されにくく、採取も簡単なため、生きた脳の状態を反映している可能性のある、簡便なバイオマーカー診断法の基盤となる可能性が高い。
同研究グループは、今後この方法で疾患の発症をどこまでさかのぼれるかを検証することにより、精神疾患の予防法開発や早期治療導入の判定、さらに新しい角度からの創薬のヒントを提供できる可能性があると考えているという。
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