目指すはTOEIC 800点レベルの機械翻訳! ドコモが翻訳の合弁会社「みらい翻訳」を設立
NTTドコモは29日、翻訳事業の合弁会社「みらい翻訳」を設立すると発表した。東京オリンピックが開催される2020年までに、世界最高レベルの精度の機械翻訳技術の開発、およびサービスの提供を目指す。都内で開催された共同記者会見では、会社設立の背景や今後のロードマップなどが説明された。
○会社の設立背景
合弁会社のパートナーとして選ばれたのは、韓国に本社を置く翻訳ソフトウェアの開発会社シストランと、大阪府に本社を置く音声認識・翻訳システムの開発会社フュートレックの2社。NTTドコモを含むこの3社から、それぞれ社員が新会社に派遣される。みらい翻訳は2014年10月下旬の始業を予定する。記者会見の冒頭、NTTドコモ執行役員 R&D戦略部長の栄藤稔氏が登壇して概要を説明した。
栄藤氏は「海外渡航者は年間で1600万人に上る。
また、日本には海外から月間100万人の観光客が訪れている。にも関わらず、日本人は英語が話せない。TOEICの成績は、実施している48か国の中で40位にとどまっている。2020年に東京オリンピックが開催されるが、外国のお客様に対して"おもてなし"ができるレベルには至っていないのが現状」と話す。言語の壁を乗り越えることが責務で、ビッグデータに基づく高精度な機械翻訳を提供することでそれを解決していきたい、と今回の会社設立に至った背景を説明した。
●ビジネス利用も想定
みらい翻訳では「コンシューマ向けサービス」と「企業向けソリューション」の両分野で事業を展開する。コンシューマ向けサービスでは、日常生活の利用シーンを想定。買い物、観光、交通などに役立つ翻訳サービスを提供する。
企業向けソリューションでは、法律、教育などの専門分野における同時通訳や社内文書の翻訳サービスを目指す。
栄藤氏は「NTTドコモが有するデータと技術を、この新会社にすべて注ぎ込む」と意気込む。まずは日・英・中・韓の言語間でサービスを展開し、ゆくゆくはアジア諸国(ベトナム、タイ、インドネシアなど)にも言語を拡大していく。栄藤氏によれば、日本における翻訳・通訳の市場規模は現在2,500億円ほど。新会社では、この市場でマーケットシェアを獲得していく考えだという。将来的には、新たな市場の開拓も視野に入れている。栄藤氏は「機械翻訳の精度が上がれば、新しい市場を開拓していくことも可能になる。例えば、黒電話を見ていただけでは、いまの携帯電話の市場は見えてこなかった。
まだ見えていない市場の開拓にも、大きな期待をしている」と説明した。
現在の、機械翻訳のレベルはTOEIC 600点の水準。これを2016年にはTOEIC 700点以上の水準に、2019年にはTOEIC 800点の水準に到達するよう精度を上げていく。そのために、NTTドコモをはじめとする企業や、関係機関などから大量の対訳コーパスを集めることが必須となる。それに加え、専門技術者が継続的にチューニングを行っていくとのこと。栄藤氏は「現代のロゼッタストーンをたくさん集めて、翻訳をつくっていく。いかに多くのデータを集められるか、が勝負の世界になる」と説明した。
●ドコモが提供するデータの規模感
○質疑応答
最後に質疑応答の時間がもうけられ、記者団の質問に栄藤氏が回答した。
NTTドコモが提供するデータの内容について「通話の内容なども提供されるのか」との質問に、栄藤氏は「権利関係の問題があるので、お答えできない」と回答。提供されるデータの規模感については「最低でも数百万」と回答した。
コンシューマ向けのサービスを提供する場合、ビジネスの形としてはB to B to Cになるとのこと。つまり、中間業者を介して一般利用者にサービスが提供される。中間業者として想定しているのはNTTドコモだが、KDDI(au)やソフトバンクなど他キャリアから依頼があれば提供する考えだという。
Google翻訳のように、ビッグデータの解析だけである程度の翻訳が可能なサービスもあるが、との質問には「特定の会社様のサービスについてコメントできる立場にはない。現在、機械翻訳の分野では飛び抜けたサービスはないと感じている。それぞれに一長一短がある。
質の良いコーパスを、どれだけ持てるかが重要になる。それに関しては、自信がある」と回答した。2020年までに、日・英・中・韓の言語間でストレスのないコミュニケーションが図れる精度のサービスを提供していきたいとのことだった。