パナソニック、新生Technics誕生を高らかに宣言 - 技術者による非公式集団からブランドを再生した道のり
パナソニックは9月29日、東京六本木のサントリーホールで、「Technics(テクニクス)」ブランドの復活と新製品を発表する報道関係者向けのイベントを開催した。
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Technicsは、松下電器産業(現パナソニック)が1965年にスタートさせたオーディオブランド。しかし、2008年に発売したアナログターンテーブル「SL-1200MK6」を最後に、そのブランドは幕を閉じていた。発表会が行われた会場の外には、かつてのTechnicsブランドの製品を数多く展示。今回発表される製品が、かつてのTechnicsブランドを継承するものであることをアピールしていた。
発表会は、5人編成のジャズバンドの演奏からスタートした。演奏終了後にステージに登場したパナソニック アプライアンス社 上席副社長 ホームエンターテインメント事業部楠見雄規部長は、「過去のTechnicsからさらに進化した、まったく新しいTechnicsを、Technics誕生をここに宣言します」と、Technicsの復活を宣言。そして、「ここで新生Technicsの生みの親を紹介します」と、一人の人物をステージに呼び出した。
そこに現れたのは、先ほどまで、ステージでピアノを演奏していた人物。Technicsの開発をリードしてきた統括ディレクターの小川理子氏だ。
小川氏はステージで、ブランド復活の背景やフィロソフィ(哲学)について語り、最後に発表された製品の技術説明を行った(製品に関しては、ニュース記事を参照のこと)。●Technics復活の背景にあるもの
ステージに立った小川氏は「ハイレゾといった高品位な音楽ソースが手軽に入手できるようになり、手軽さ重視から高品位なオーディオにもう一度スポットライトが当たりはじめている。Technicsが目指しているものをもう一度世に問う絶好の機会と考えた」とTechnics復活の意味について述べている。小川氏の語ったTechnics復活までの動きは、以下のようになる。
同社はブルーレイディスク(BD)プレーヤーで、ハイレゾ音声データをデコードして高音質再生する技術を培い、さらにDSP技術をベースに、デジタルリマスター、オーバーサンプリングといった高音質化技術を開発している。高品位な音作りのための技術は内部に蓄積されていた。
Technics復活の動きは、2008年の秋ごろにスタートした。ハイレゾ音源の広がりにも後押しされる形で、技術者のリーダー格である井谷氏を中心に、音にこだわりのある設計メンバーが、「今こそ、普遍で感動を呼ぶTechnicsの音作りが実現できるはずだ」と自主的に集まり始めたのがきっかけだという。
井谷氏はTechnics最初のCDプレーヤーを世に送り出した人物。その後、DVDやBDプレーヤーの設計を担当してきた。また、デジタル技術に精通するとともに、音に対する深い見識を持っており、この非公式な集団を牽引していた。
同じ頃、オーディオ事業を新たに整備しようと動きがあり、井谷氏はTechnics復活に対する思いを実現するために、プロジェクトの正式な発足を訴え、昨年(2013年)8月に正式なプロジェクトとして認定された。
プロジェクトにおいて開発が進んでいくなかで、2014年2月、あるプロジェクトメンバーから小川氏にアプローチがあったという。「感動の音とは何か」。
新しい時代が求める部分であり、これまでのTechnicsを越える部分が見つからず、小川氏に相談を持ちかけたのが、小川氏がこのプレジェクトに参加したきっかけだという。
小川氏は、音響技術者時代、音響心理、音響生理の観点から、感動の音とは何かという研究しており、さらに、冒頭に行われたステージのように、演奏者としての一面も持っている。「感性の領域に踏み込むと、技術に裏打ちされた確証を得ることが難しいことは理解できました。同時に、演奏者としての経験から、人の感性や感情について思うところがあり、それを率直に伝えました」。それから3カ月後、小川氏は統括ディレクターとしてプロジェクトに参加することになる。
「音と音楽に無限の可能性を感じています。志をひとつにしたメンバーが、何かに惹かれるように終結したのも、音と音楽がもつ無限の可能性ではないかと思っています」。
ここで発表された、Technicsの新しいブランドメッセージは「Rediscover Music」。
音楽には世代も国境もなく、純粋に音楽を愛する人のために感動を届けていく。人生には感動体験が重要で、Technicsを通じて、それを届けたいという気持ちが込められているという。
○新生Technicsの哲学とは?
音楽の楽しみ方は多様化している。Technicsでは「サウンド」「テクノロジー」「デザイン」の3つのフィロソフィによって、デジタルネットワーク時代の音楽の感動を届けたいとしている。
新生Technicsのサウンド哲学を小川氏は、「音の入り口から出口まで、微細なレベルを追求する高精度な信号処理と伝送を極めるとともに、演奏家と聴く人が求める普遍的な価値を持つ音へのこだわり」だと語っている。
また、音にこだわる選任体制を構築し、よい音を構成する素材は部品を選定。さらに、回路構成や構造の見極め、物理特性の評価を行うとともに、サウンドコミュニティによる総合的で厳正な音質評価も行っているという。
新生Technicsの技術哲学は、Technicsの技術のよきDNAを継承しつつ、高解像度のフルデジタル技術を導入することだという。
これにより、アーティストがまるで目の前に浮かび上がるようなクリアなサウンドイメージと豊かな空間表現を生み出すことを目標としているという。
新生Technicsのデザイン哲学について小川氏は、「奇をてらわず、音響技術に忠実である。素材や作り方など細かい部分にまでこだわり、長年愛されて使ってもらえるような、時代を超えた普遍的な価値を持たせる」としている。
最終的には、音楽で感動を味わえる上質な空間を創出することが、パナソニックの考える新生Technicsのフィロソフィとのことだ。
○新製品の試聴会も開催
会場で発表された製品は、「Reference System」シリーズが、パワーアンプの「SE-R1」、ネットワークオーディオコントロールプレーヤー「SU-R1」、スピーカーシステム「SB-R1」。そして「Premium System」シリーズが、インテグレーテッドアンプ「SU-C700」、ネットワークオーディオプレーヤー「ST-C700」、コンパクトディスクプレーヤー「SL-C700」、スピーカーシステム「SB-C700」だ。発表会終了後、これら新製品の試聴会も開催された。