CAE/CFDのオープン化とクラウド活用をテーマとしたカンファレンスが開催
カンファレンス形式となって10回目となる今回は、メインテーマとして「大規模・最適設計・ワークフローマネジメントのための総合ソリューション」を掲げ、「ものづくりの価値づくり」を解説する基調講演、航空宇宙、重電重機、自動車、化学、電機電子、そして量子化学など、多彩な分野における事例の講演が予定されている。
なお、サブテーマとして「クラウドコンピュータ・オープンソース・SDMの設計利用」と掲げられているように、今回のカンファレンスでは「CAE/CFDのクラウド化とオープンソース化」が一つの注目点となっている。
そこで今回、同社の代表取締役社長である藤川泰彦氏に、クラウド化とオープンソース化によって変わる、CAE/CFDの未来について語っていただいた。
○CAE/CFDの発展に立ちはだかる情報共有とライセンスの問題
学術研究・航空・宇宙・医療などの専門分野から、自動車・家電・家具や調理器具などの身近なものまで、現在の社会ではさまざまな分野でCAE/CFDが利用されている。ヴァーチャル解析を繰り返し、試作による実験の精度を高め、ものづくりの効率化とコスト削減を行うCAE/CFDは、今後さらに活躍の場を増やしていくことだろう。
「これまでのCAE/CFDソフトウェアは、主に大学の研究室や企業の開発部門などに所属する、専門家が扱っていました。ですが、利用シーンが今以上に広がると、専門家だけではとても手が足りません。これからは現場の設計者を含め、より多くの人がCAE/CFDソフトウェアを活用できる環境が求められてくることでしょう」(藤川氏)
現場にまでCAE/CFDの利用が広がれば、解析回数を増やして精度を高めたり、現場ならではの意見を反映したりと、製品の質の向上につながるはずだ。だが、そこには大きな2つの問題が立ちはだかる。
1つは情報共有について。現在の製造現場は、日本国内のみならず世界各地に広がっている。それぞれの場所でCAE/CFDを活用するためには、必要な情報を共有できる環境が必要不可欠だ。
もう1つはライセンスについてである。
これまでのCAE/CFDソフトウェアは、CPU固定ライセンスであるケースが多かった。つまり、現場で利用するためには、その分、追加のライセンスが発生することになる。ライセンスごとにユーザー数が制限されている場合も多く、利用範囲を広げようとすると莫大なコストが掛かってしまう。
「この2つの問題を解決するキーワード、それがクラウドとオープンソースなのです」(藤川氏)
○クラウドとオープンソースがCAE/CFDの未来を変える
場所や端末を問わずアクセスできるクラウドは、情報共有の手段として、まさに打ってつけだ。またオープンソースのソフトウェアであれば、CPUやユーザー数の追加によるコスト増も抑えることができる。
「クラウドとオープンソース。現在のIT分野において、この2つの潮流を避けることはできません。これはCAE/CFD分野においても同様です」(藤川氏)
クラウドやオープンソースに対する懸念として、特に多く挙げられるのがセキュリティ面だろう。
だが、近年のクラウドサービスには、充分に強固なセキュリティ対策を実施しているものが多く、安全性は高い。バグや脆弱性が発見された場合でも、ソースコードが公開されているオープンソースであれば、素早い対応が可能だ。そういった点から、現状のクラウドやオープンソースのセキュリティレベルは、けっして低くないといえる。
「それでもセキュティ面に不安を感じるのであれば、情報を仕分けして利用すればいいのです」(藤川氏)
導入当初は、汎用性の高い問題をオープンソースのソフトウェアで解析する。それだけでも「利便性はかなり向上するはず」と藤川氏は主張する。
「スマートフォンやタブレットは、今後さらに普及していきます。いずれはCAE/CFD分野でも、その対応を求められることは間違いありません。その場合、既存のシステムや考え方だけで対処するのは不可能です。
CAE/CFDが発展するには、クラウドやオープンソースなどの新しい技術や仕組みを、恐れずに勇気を持って利用する。そのためのチェンジマインドが絶対に必要です。今回のカンファレンスでは、それを多くの方々に訴えていきたいと考えています」(藤川氏)
○CAE/CFDの"今とこれから"を体感する「VINAS Users Conference 2014」
毎年、多彩な催しが実施される「VINAS Users Conference 2014」。今回は2日間に渡り、「CFDプリ・ポストプロセス」「最適設計・ワークフロー・SDM」「ターボ機械最適設計とオープンCFDソルバ」「HPクラウドコンピューティングと高速計算技術」の4テーマについて、40を超える講演が行われる。航空・宇宙分野からはNASAとJAXAの日米両巨頭が登場。そのほかにも、自動車における空力や設計解析、スーパーコンピュータ「京」を利用した事例など、注目度が高いプログラムが目白押しとなっている。
また特別講演としては、東京大学 生産技術研究所の加藤千幸教授による「大規模流体解析の産業応用」と慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の白坂成功准教授による「いま世界でおきているシステム開発方法論の革新」。基調講演には、一橋大学 イノベーション研究センター センター長 延岡健太郎教授による「製造業におけるものづくりと価値づくりのマネジメント」が実施される。
通常、特別講演や基調講演などは、カンファレンスの冒頭を飾るケースが多い。だが今回のユーザーカンファレンスでは、初日プログラムの最後に行われることになっている。
「ユーザーカンファレンスと銘打っていますが、特別講演と基調講演は私たちの製品とは関係なく、CAE/CFDの現在を総括し、将来を見据えるものとして位置づけています。間違いなく面白い話になるので、できるだけ多くの方に聴いていただきたい。そこで、この時間帯に設定しました。やっぱり、午前中よりも夕方のほうが参加しやすいでしょうから(笑)」(藤川氏)
なお、当日には、テーマにあるクラウドとタブレットエンジニアリングを実際に体験できる催しも実施される予定。「もしiPhoneやiPadをお持ちでしたら、ぜひお持ちいただき、タブレットエンジニアリングを体感してください」と藤川氏。
詳しいプログラム内容や申し込み方法は、「VINAS Users Conference 2014公式ページ」を参照してもらいたい。
新たな技術を体感する場として、業界内の情報交換の場として、これからの「日本のものづくり」を担う多くの人々に、同カンファレンスを大いに有効活用していただきたい。
○イベント概要
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