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アドビが提唱する、モバイルとデスクトップを連携させたワークフローの実現 -「Adobe MAX 2014」初日基調講演

マイナビニュース
アドビが提唱する、モバイルとデスクトップを連携させたワークフローの実現 -「Adobe MAX 2014」初日基調講演
●アップデートされた新しいモバイルアプリ群
10月6日から8日(太平洋夏時間)にかけての3日間、米カリフォルニア州ロサンゼルスにあるロサンゼルスコンベンションセンターおよびノキアシアターにおいてAdobe Systems主催のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX 2014」が開催されている。

初日の基調講演では、Adobe SystemsのCEOであるShantanu Narayen氏や、デジタルメディア事業部門担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるDavid Wadhwani氏らが登壇し、同社の新しいクリエイティブツールおよびサービスの発表や、新技術・新機能の紹介などが行われた。

○アップデートされた新しいモバイルアプリ群

この基調講演で特に大きな割合を占めたのはモバイル関連の話題だった。モバイル部門では以下に挙げる9つのツールの新リリースまたは大幅アップデートが発表され、それぞれのツールについての新機能の紹介やデモが行われた。

・Illustrator Draw(アップデート、元Adobe Ideas)
・Illustrator Line(アップデート、元Adobe Line)
・Photoshop Sketch(アップデート、元Adobe Sckecth)
・Photoshop Mix(アップデート)
・Ligthtroom Mobile(アップデート)
・Premiere Clip(新リリース)
・Adobe Color(アップデート、元Adobe Kuler)
・Adobe Brush(新リリース)
・Adobe Shape(新リリース)

Premiere ClipはiPhoneやiPadで使うことができる映像作成ツール。モバイル端末上で動画や静止画像をつなげて簡単にムービークリップを作成することができる。ライセンスを気にせずに使えるBGMも付属。作成した映像はそのまま公開することもできるが、Premiere Proと同期させてより高度な編集を行うことも可能だ。


Adobe Brushは写真や画像から簡単にブラシを作ることができるブラシ作成ツール。カメラで撮れるものであればなんでもブラシの素材することが可能で、作成したブラシは他の描画ツールで利用できる。また、Adobe Shapeはカメラで撮影した写真から輪郭などをベクター画像として取り込み、加工することができるアプリである。

○コラボレーションによって新しいワークフローを実現

これらのツールはいずれもCreative Cloudを介してデスクトップのクリエイティブツールと連携させることができるという特徴がある。モバイルで作業した結果はリアルタイムにデスクトップに反映され、シームレスなワークフローを構築することができるという。

例えばBrushで作成したブラシはPhotoshopやIllustrutorで即座に利用することができる。iPhoneやiPad上でベクトルデータのイラストを描くことができるIllustrator Drawや、同じくベクトル画像ベースの製図ツールである Illustrator Lineでは、作成した成果物をIllustratorに送ってより詳細な編集が可能だ。Premiere Clipは前述のようにPremiere Proと連携する。


セッション中のデモでは、手書きの線をiPhoneのカメラで撮影し、それを元にBrushでブラシを作成したり、Colorで作成したカラーパレットをIllustratorやPhotoshopで利用する様子などが紹介された。

このようなコラボレーションを可能にしているのが、2014年6月のアップデートで発表された「クリエイティブプロファイル」である。Creative Cloudの新しいツールは、クリエイティブプロファイルによってあらゆるアセットを共有することができる。フォントやカラーパレット、ブラシ、ファイル、イラストや写真など、共有したい要素をクラウド上に登録すれば、他のデスクトップアプリ/モバイルアプリから呼び出して使うことが可能になるわけだ。

アドビからはこれまでも様々なモバイルアプリが提供されていたが、それはあくまでもモバイルの世界に閉じており、デスクトップの作業と連動させることが難しいという問題があった。クリエイティブプロファイルはその問題を解決し、いつどこで行った作業であっても、次の作業につなげることができるようになる。

さらに、クラウド上に保存されたアセットは「クリエイティブライブラリ」として管理され、異なるデバイスやユーザの間でも共有することが可能になる。クラウドストレージでファイルを共有するというスタイルから一歩進んで、デザイン素材そのものを共有するという新しいスタイルのコラボレーションが実現されている。
●「Creative SDK」や「Behance」の新機能を紹介
○アドビの技術をサードパーティに提供する「Creative SDK」

Creative Cloudと連携し、サードパーティ製のアプリからアドビのデザインツールの技術を利用することができる「Creative SDK」もパブリックベータがスタートした。これは、Creative Cloudに用意された機能やサービスにクラウド経由でアクセスすることができる開発キットであり、これを利用することでCreative Cloud上のリソースと連携したり、Photoshopをはじめとするデザインツールの機能を自前のアプリに組み込んだりといったことが可能になる。

すでに様々な機能がCreative SDKとして提供されており、最近アドビが買収したAviary社の技術なども導入される予定とのこと。基調講演ではCreative SDKの利用事例としてAviaryによる「threadless」というサービスが紹介された。threadlessは好きなデザインのTシャツを作ることができるサービスだが、Creative SDKによってクリエイティブプロファイルのアセットをデザインに利用できるようになっているという。Creative SDKでは今後も様々な機能を追加していく予定という。

○企業とクリエイターの結びつきを助ける「Behance Talent Search」

「デスクトップとモバイルのコラボレーション、サードパーティとのコラボレーションも素晴らしいが、コミュニティとのコラボレーションにも素晴らしいものがある」というWadhwani氏の言葉とともに、Behanceに追加された新機能も紹介された。「Talent Search」と呼ばれるこの新機能では、デザインの発注元となる企業やユーザーが、発注したい仕事に合った最適なクリエイターの発見を手助けする検索サービスである。


従来の検索機能と大きく異なるのは、Behance上で公開されている作品などを元に「クリエイティブグラフ」というクリエイティビティに特化した独自のグラフを構築し、それに基づいて人物の推薦を行うという点である。これによって、例えば「同じスタイルのイラストを描く人」などという条件での検索が可能になっているとのことだ。

○Web制作のワークフローを改善する「Creative Cloud Extract」
デスクトップアプリケーションでも様々なアップデートが行われている。特に、今回のメインテーマともなっているコラボレーションという面では「Creative Cloud Extract」という機能が登場した。これはPhotoshopを利用したWeb制作のワークフローを改善するものである。

具体的には、Photoshopで作成したWebのデザインから画像のアセットを切り出す作業に対して、レイヤーやレイヤーグループごとに最適なアセットを自動で書き出すことができるようになった。また、Dreamweaver側ではCreative Cloud上のPSDファイルを開いて指定したレイヤーのCSS表現を見ることができるようになった。これによって、Photoshopを使うデザイナーとDreamweaverを使うデベロッパーが、お互いにCreative Cloud上でPSDファイルを共有して作業を行うことが可能になる。


デザイナーとデベロッパーの意思疎通の不足は、Web開発の現場では深刻な問題だった。Creative Cloud Extractを使えば、両者が同じ情報をそれぞれが望む形で扱えるようになるため、よりスムーズな開発を実現できるとのことである。

○タッチ操作に最適化されたUIの提供

デスクトップアプリケーションにおけるもう一つの興味深い試みとしては、タッチデバイスへの対応が挙げられる。近年ではデスクトップPCでもタッチディスプレイを搭載する機種が増えてきた。そこで、タッチに最適化されたUIを提供することで作業の効率を上げられないかという試みである。

その第一弾として発表されたのがIllustratorの「タッチワークスペース」。これはMicrosoft Windows 8やMicrosoft Surface Pro 3のタッチ操作に最適化されたIllustratorの新しいUIで、タッチやジェスチャーの操作だけで直感的にイラストが描けるようになっているもの。指で操作しやすいように全体的にUIがシンプルになっているほか、精度の高くないラインを自動で補正するジョインツールなど、タッチ操作によるデザインをサポートする機能が追加されている。


基調講演の最後に、マイクロソフトCEOのSatya Nadella氏が登場し、Narayen氏と共にアドビとマイクロソフトがパートナーシップを強化していくことを発表した。そしてすでに現れているその成果として、Microsoft Surface Pro 3に最適化されたPhotoshopのタッチワークスペースの紹介が行われた。自然なタッチ操作だけでPhotoshopを扱えるように工夫されたこのUIについて、「マイクロソフトの協力が無ければ実現できなかった」とNarayen氏は語っている。

アドビとマイクロソフトのパートナーシップはまだ初期の段階であり、クリエイティビティを強化するという目的に今後も協力して取り組んでいくとのこと。最後に、Adobe MAX参加者全員にMicrosoft Surface Pro 3をプレゼントするという発表があり、会場は大いに盛り上がった。

○まとめ

以上、初日の基調講演で発表された内容をまとめると次のようになる。

・Creative Cloudの幅を広げる9つのモバイルアプリのリリース/アップデート
・モバイルと連携する13のデスクトップアプリケーションのアップデート
・クリエイティブプロファイルを中心とした新しいコラボレーションの実現
・Creative SDKのパブリックベータ開始
・企業とクリエイターのより良いマッチングをサポートするBehanceのTalent Searchの開始
・Creative Cloud ExtractによるWeb制作ワークフローの改善
・タッチデバイスに最適化されたUIの提供

今回発表された内容によって、Creative Cloudが単なるコンテンツの共有サービスではなく、ワークフローを創出する新しいクラウドサービスへと進化し始めたという印象を受ける。それと同時に、それぞれのツールは最新のトレンドを積極的に取り入れている。
これからの進化にも期待が持てると思わせてくれる講演だったのではないだろうか。

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