ソロシネマ宅配便 第6回 高良健吾、史上最高のハマり役 - 映画『横道世之介』
人は時間を持て余すと、とりあえず掃除をする。
部屋の掃除とは、いわば自分の過去を探る行為でもある。買ったことすら忘れかけていた100均ショップの便利グッズや、15年位前の吉野家の割引券とかがなぜか出てくる。
気づいたら夏日だった外出自粛の大型連休。社会人になってこれだけまとまった時間があるのは初めてだ。仕事に燃え、ある時は仕事に逃げていた中年男たちは、家で慣れない大掃除をして、過去と向き合うハメになる。で、本棚の隙間から学生時代の写真なんかを見つけて思うわけだ。あいつ今なにやってんのかなあ……と。
そんな2020年の5月にこそ、オススメしたい家シネマこそ『横道世之介』である。
結論から書くと、この映画は個人的に人生ベスト3に入るレベルの傑作だ。2013年春の劇場公開時に3度映画館で観賞し、ブルーレイを買い年2ペースで見て、iTunesでダウンロードしたサントラは繰り返し聴いている。
吉田修一の原作小説を、沖田修一監督が映画化(共同脚本には前田司郎)。18歳の横道世之介(高良健吾)が大学入学のため長崎から上京してきた1987年春から物語は始まり、16年後の2003年のある出来事に着地する。