「生活をもっと単純に」 - 指輪型コントローラ「Ring」が目指す新しい未来
ログバーは29日、指の動きでアプリや家電を操作できるコントロールデバイス「Ring」の販売開始に関する記者会見を開催し、製品の詳細と今後の展開予定について説明した。また、30日より11月3日までの間、東京・神宮前の表参道ヒルズにデモスペース「Ring Store」を開設し、来場者がRingの使い方を体験できるようにする。
Ringは10日から同社Webサイトで一般販売されており、価格は269.99ドル(約29,000円)。
「Ring」は、モーションセンサーとBluetooth Low Energy対応の通信機能を搭載した指輪型のコントローラで、iOSまたはAndroid搭載のモバイル機器と組み合わせて使用する。
指の動き(ジェスチャー)で空中に図形を描くと、Bluetoothでペアリングされたモバイル機器上の専用アプリがジェスチャーの種類を認識し、音楽の再生・停止や音量調整、Twitterへの位置情報の投稿など、あらかじめ設定した動作を行う。ジェスチャーは専用アプリで自由に編集できるので、アルファベットやハートマークなど簡単な文字・記号に動作を割り当てることも可能。
また、クラウド連携機能を特徴としており、インターネットに接続された家電などの制御が可能。現在のところ、フィリップスのLED照明「hue」、Belkinのリモート電源スイッチ「WeMo」に対応しており、ジェスチャーで照明のオン/オフなどが可能。
ネットサービスやインターネット接続型デバイスの開発者向けにSDKを提供する予定で、今後Ring対応のサービスや製品を自由に開発することもできるようになる見込み。
Ringのモーションセンサーのデータからジェスチャーの種類を識別する処理はアプリ側で行っており、クラウド側へはジェスチャーの認識結果(および位置情報、OAuth認証情報)を送信しているので、センサーの制御に関する知識は不要で、一般的なWebサービスの開発者であれば容易にRing対応のプログラムを開発できるとしている。
電源は内蔵のリチウムポリマー電池(3.7V/22mA)で、使用頻度にもよるがバッテリー駆動時間は1~3日間。同社の社内テストでは、通常の使用であれば3日程度は充電なしでも使い続けられると評価しているという。また、製品仕様ではペアリングしたモバイル機器との通信距離は見通し5m以内とされているが、Bluetoothと同じ2.4GHz帯で強い電波が飛んでいる場合は通信が不安定になることもあるので、そのような環境では2m以内での使用を推奨するとしている。
●開発コンセプトは「生活のショートカット」
○開発コンセプトは「生活のショートカット」 - 今後はデザインに注力
「我々の生活はボタンとかスイッチとか、マウスとかタッチパネルとかに囲まれていて、何をするときも毎回何ステップかの操作が必要。それをRingのワンジェスチャーでできるようにしたい。生活はもっと単純にできるはず。
生活を"ショートカット"できるのが新しい未来だと思う」
ログバー代表取締役の吉田卓郎氏は、Ringの開発動機をこのように話した。
例えば、ハイヤーサービスの「Uber」は配車APIをサードパーティーに公開しているが、このAPIにRingからアクセスすれば、ワンジェスチャーでユーザー情報と現在位置をUber側に伝えられるので、スマートフォンのアプリを起動して迎車位置を指定して、といった操作なしに車を呼ぶことができると説明する。
「Ringは何をコントロールできるのかとよく聞かれるが、『クラウドをコントロールできる』というだけで説明は終わる。直接つながらなくたってネット越しでつながっている。車だってインターネットにつながっているし、テレビもTwitterもつながっている。僕らは1個1個のデバイスにわざわざ対応するなんて面倒くさいことはしたくない。Ringはクラウドにつながっている、あとはみなさんどうぞ好きにやってください」(吉田氏)
また、同じウェアラブルデバイスという点で、スマートウオッチやスマートグラスなどの装着型モバイル機器とライバル関係になるのではないかという見方に対しては、Ringは情報の入力機器であり、その結果を時計型や眼鏡型のディスプレイで見ることでむしろ機器の使い方が広がっていくと指摘。「競合だとは思っていない。
Ringはそれらウェアラブルデバイスのパートナーになれる」(吉田氏)。
前述の通り、ジェスチャーの認識はiOS・Android上のアプリで行っているため、Ring単体で直接家電をコントロールするといった使い方はできない。開発当初はRing側にジェスチャーの処理機能を持たせることも検討したが、機能拡張の柔軟性やクラウドとの相性を考慮した結果、現状ではポケットに入れたスマートフォンなどとセットで使うスタイルが最適と判断したという。また、現在はRingで操作できる家電製品が限られているが、今後「Ring Hub」と呼ばれる中継器に相当する周辺機器を用意し、より幅広い製品をRingでコントロールできるようにする予定ということだが、この日の説明会ではRing Hubに盛り込む機能や発売時期について具体的な情報は得られなかった。
Ringはクラウドファンディングサービス「Kickstarter」で資金を調達して開発され、25万ドルの目標金額を1日半で達成し、最終的に88万ドルもの資金を集めたことで大きく注目されたが、当初予定からの出荷の遅れや、コンセプト映像と実際の製品とのデザインの乖離などでネガティブな意味でも話題になった。
これに対して吉田氏は、現在生産の遅れを取り戻しており、Kickstarterでの支援者に対しては11月中に製品の出荷を完了できる見込み、当初のイメージよりも大型になった原因は、最初の製品で動作時間に不満が出ないようバッテリー容量に余裕を持たせたためと説明した。今月より同社Webサイトで一般販売も開始しているが、発送までは注文後4~7週間程度を要する。
吉田氏は今後の方向性について「我々はRingをファッションのひとつとして位置づけている」と話し、Ring自体はできるだけシンプルに保ち、より優れたデザインの追求に力を入れていく考えを示した。
「毎日身につけるジュエリーとしての部分を突き詰めていきたい」と強調し、今後は宝飾品メーカーとの協業なども視野に入れていくという。
期間限定で開設するデモスペース「Ring Store」は表参道ヒルズ西館1階で、11月3日までの各日11時から20時30分までの営業(最終日は19時終了)。Ringを使用した家電のオン/オフなどを実際に体験できる。