中村倫也、常に“遊び心”を大事に「隙あらばふざけたい」 “ポジティブな諦め”でたどり着いた心地よさ
●ひつじのショーンと共通点「遊びが好きなのは一緒かもしれない」
俳優の中村倫也が、世界中で愛されるクレイ・アニメーションのキャラクター「ひつじのショーン」の30周年公式アンバサダー“ショーンバサダー”に就任した。ファン歴10年以上という中村にインタビューし、ショーンとの共通点を聞くとともに、年齢や経験を重ねていく中での自身の変化や今の仕事に対する思いを聞いた。
発明家のウォレスと忠犬グルミットによる大ヒットコメディ『ウォレスとグルミット 危機一髪!』(1995年) に初登場したひつじのキャラクター・ショーン。2007年からはショーンを主人公にしたスピンオフのテレビシリーズ『ひつじのショーン』も放送がスタートした。
中村は30周年公式アンバサダーに就任し、現在、東京・渋谷の東京アニメセンターで開催中の「ひつじのショーン展 with ウォレスとグルミット」(5月16日~6月29日)で、展示物の数々を音声で紹介するナビゲーターを務めている。
ショーンとの共通点について、中村は「遊びが好きなのは一緒かもしれないですね」と語る。
「ショーンはいろんな遊びを開発するんですけど、僕も真面目な作品をやっているときでも、隙あらばふざけたい。みんなで遊びたいという、そういうところは似ていると思います」
子供の頃からふざけるのが好きな性格だったという。
「小学校時代からみんなで何かして遊ぶのが好きで、つまらなそうにしている子も巻き込んで、一緒に楽しく遊ぶのが好きな子供でした。自分だけ楽しくても楽しくない。僕はサッカーとか運動が得意だったんですけど、フィールドの端っこでパスを呼ばないようにしているような子にいかにゴールを決めさせるかということをしていたタイプで、みんなと笑っているのが好きなんです」
○どんどん小学校時代のピュアな自分に「めっきり幼児返りをしている」
その性格のまま大人になり、どんな現場でも遊びたくなるそうで、近年さらに遊び心が高まっているそうだ。
「めっきり幼児返りをしていて、どんどん小学校時代のピュアな自分に戻ってきています。もともとこういう性格だったんだなと日々感じる年頃で、最終的には幼稚園児みたいな50代、60代になるんだろうなと(笑)。そうなれたら最高ですよね」
“幼児返り”の理由について、「年を重ねて無駄に装うもの、まとうものがなくなってきて、素の自分がどんどん出せるようになっているのかなと思います」と分析する。
「仕事において、こう見られたい、こうアピールしたいというのは、知ってもらうためには大事なことですが、そういうのも通り過ぎて、今は『自分こんなんですみません』みたいなスタンスで生きているので、すごく気楽です」
そういった自身の変化は、仕事が増えて生活が安定したことも影響していると語る。
「生活の安定が人間の心に与える影響は大きいと思います。
心に余裕が出てきたことで、変に空回ったりするでもなく、空回っても、それすらも受け入れていくという。自分が経験してきたこととか、考え方とか、いろんなものが今ストンと落ちるところに落ちている感じがあります」
中村とショーンは“ゆるふわ”な魅力も共通点として挙げられる。
「ショーンも見た目はゆるふわですけど、中身は機敏で賢くて。僕も温度感や声質はまったりおっとりしていますが、中身はバキバキです(笑)。昭和な感じもありますし、いろんなことを先回りして考えるタイプでもあるので」
●「自分にいい意味での諦めがついているので、すごく心地いいです」
2005年に俳優デビューしてから今年20周年の節目を迎える。
今の状況について「ありがたいことに、すごく居心地のいい暮らし方というか、居心地のいいテンポ感で仕事をさせてもらっています」と述べ、「自分にいい意味での諦めがついているので、無駄にあくせくすることもなく、すごく心地いいです」と穏やかな表情を見せる。
「諦めるってネガティブなワードに思われがちですが、僕にとってはポジティブなイメージです。必要以上に自分に期待しないというか、どうあがいても無理なことが年齢とともにわかってきているので。
『あと5センチ身長があったらな』とか『もうちょっと目鼻立ちがパッチリしていたらな』とか、役によって思うことはありますが、努力で変われるものではないのでしょうがない。役者として自分という素材をいかに使うかという面でも、できないことは諦めています」
諦めの境地に至ったのは34~35歳頃だという。
「もともとそういう癖はあったんです。30代で実感したことのおおよそは20代の頃から想定していて、そうなるんだろうなと思って生きてきて、そのときが来たみたいな感じです」
最後に今後の抱負を聞くと、「先のことはわからないです。明日何があるかわからないですから。年齢を重ねてシンプルになってきていて、一つ一つ、一日一日を頑張って生きていくだけというか、そういう風にこれからもやっていけたらと思います」と語っていた。
■中村倫也
1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年に俳優デビュー。
以来、数々のドラマ・映画・舞台に出演。近年では、ドラマ『Shrink―精神科医ヨワイ―』、映画『ミッシング』、『ラストマイル』、『あの人が消えた』などに出演。その他、Prime Video『No Activity』シーズン2、『最強新コンビ決定戦 THE ゴールデンコンビ』、『ベストフレンドハウス』が配信中。また、エッセイ集『THE やんごとなき雑談』、初の料理本『THE やんごとなき雑炊』が発売中。今後の待機作として、7月期のTBS系金曜ドラマ『DOPE麻薬取締部特捜課』、舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』(9月より上映)などがある。