秋葉原にハードウェア・スタートアップの新拠点「DMM.make AKIBA」誕生 - 総額5億円を投じた最新設備で本格的ものづくり
DMM.comは10月31日、総額約5億円の費用を投じ、ハードウェア・スタートアップの新拠点「DMM.make AKIBA」を東京都・秋葉原に開設すると発表した。運営開始の11月11日に先立ち、同日、記者向けに施設の一部が先行公開された。
コンセプトは、「モノを作りたい人が必要とする、全てを」。最新の業務用3Dプリンタや3D CAD、各種計測機器、試験機器など、量産に必要な約150点の機材を設置。設計から小ロット生産までに必要な設備を1拠点に集約し、ハードウェア・スタートアップを総合的に支援する、ものづくりの「聖地」を目指す。
「DMM.make AKIBA」は、富士ソフト秋葉原ビルの10階~12階を改修して開設。ハードウェアの開発、環境試験、量産試作、小ロット量産までが行える「DMM.make AKIBA Studio」、ハードウェア開発のコンサルティングを行う「DMM.make AKIBA Hub」、シェアオフィスやイベントスペースを備える「DMM.make AKIBA Base」の3機能で構成され、それぞれ同ビルの10階、11階、12階に分かれている。
富士ソフト秋葉原ビルは、東京都千代田区神田練塀町3に所在。
運営はDMM.comが担当する。施設を見学できるオープン前ツアーへの申し込みも同日より開始する。
○DMM.make AKIBA Studio
「DMM.make AKIBA Studio」は、ハードウェアの開発に必要な最新機材が揃う、実際の"ものづくり"が行えるワークスペース。全体の広さは624.57平方メートル。
電子工作や量産試作の開発に必要な基板実装や業務用3Dプリンタなどの大型機械に加え、熱衝撃や恒温恒湿、荷重破壊、水圧試験、技適基準適合、HDMIやUSBなどの試験機などを揃える。
専属スタッフが常駐し、操作に一定の知識や技術が必要な設備にはサポートが入るほか、操作に関する講習を受講し合格すれば、利用者自身で機材を操作することも可能だ。
○DMM.make AKIBA Hub
「DMM.make AKIBA Hub」は、ハードウェア開発、販売に関するコンサルティング窓口。「DMM.make AKIBA Studio」およびDMMの3Dプリント設備を使った造形の相談、部品や工場選定など製造の相談、試作製造や起業資金調達の相談などを受け付ける。
広さは354.15平方メートル。
○DMM.make AKIBA Base
「DMM.make AKIBA Base」はオフィススペース、イベントスペース用のフロア。「TeamRoom」と呼ばれる25の個室エリアは各部屋にテーブルとイスが用意され、3名以上で利用できる。
「FreeAddress」と呼ばれるイベントスペースは、バーカウンターも設置され、カフェのような印象。約60名が着席できるスペースにプロジェクタを用意し、セミナーや新製品発表会の場としても利用できる。今後は飲食サービスの提供も予定する。
TeamRoomでは会社登記や所在表記、郵便受取などの法人業務が可能で、FreeAddressでもオプション契約で上記業務に対応する。なお、TeamRoomの利用には面接が必要。
全体で1,134平方メートルの広さとなる。
●「DMM.make AKIBA」を利用するには?
施設を利用するには、同施設の会員登録と、初期費用、月額料金が必要。対象利用者は、20歳以上のハードウェア開発志望者や起業志望者で、10月31日より利用者の募集を受け付けている。利用期間は最短2カ月間から。
基本料金は、オフィススペース「DMM.make AKIBA Base」のFreeAddress自由席が初期費用40,000円、月額料金20,000円。TeamRoom3(利用可能人数3名)が初期費用240,000円、月額料金120,000円。TeamRoom6(利用可能人数6名)が初期費用480,000円、月額料金240,000円。
ワークスペース「DMM.make AKIBA Studio」の利用は初期費用30,000円、月額料金15,000円。
「DMM.make AKIBA Base」と「DMM.make AKIBA Studio」の両方を利用する場合(Studio+Baseプラン)は、初期費用60,000円、月額料金30,000円。なお、TeamRoom契約者は「DMM.make AKIBA Studio」も利用できる。
なお、FreeAddressおよび「DMM.make AKIBA Studio」、Studio+Baseについては、11月10日までに利用申し込みを行うと、初期費用および2015年1月まで約3カ月の月額料金が無料となる。
△:Lockerオプション契約者は利用可能。
▲:事前購入資材のみ一時預かり可
○あとは『モノを作りたい』気持ちだけ(DMM.com 吉田氏)
「DMM.make AKIBA」には、ネット接続型の家電製造メーカーCerevo、IoT関連のスタートアップ向けに投資を行うABBALabが、10月31日付で移転。施設運営や造形設備はDMM.comが担当するが、Cerevoは同施設に導入する設備監修を行っており、開設後も電子機器設備の運営やノウハウ提供を担当する。また、「DMM.make AKIBA」の設備を使用した製品開発も行う。
設備の監修はCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏が行った。
2007年に設立したCerevoは、当時から小ロット生産によるハードウェアを開発してきた。「DMM.make AKIBA」では、Cerevo設立当時に、スタートアップが利用できるこのような施設があれば、という思いも踏まえ、導入設備などを考えたという。
企画検討から回路設計、3D設計、試作試験など、ハードウェア製品はプロダクトを量産化させるまでに多くの設備が必要だが、「DMM.make AKIBA」では、ベア基板製造や金型作成、量産立ち上げラインを除く全工程が行える。
「DMM.make AKIBAは道場に似ている。黒帯の人もいれば、気軽な気持ちでとりあえずやってみようと門を叩く人もいると思う。利用者だけでは難しい部分はサポートもする。『作りたい』という気持ちが大事」(岩佐氏)。
ABBALabは、IoTハードウェア分野のスタートアップ企業やエンジニア向け投資プログラム「ABBALab Farm プログラム」を提供する。
プログラムの対象となった企業やエンジニアには、製品の試作や生産モデルの開発など、段階に応じて必要な資金提供やスキル教育の支援を行う。
資金提供プログラムは、同社が主体となる予算型と、利用者が法人化し主体となる投資型を用意。プロトタイプ作成後、クラウドファンディングなどでの少量生産、審査などを経て、適量生産モデル化した際にリターンを回収する。デモイベントの運営や、メジャーメーカーとのアライアンスもサポート予定だ。
企業・エンジニア向け投資プログラムを担当するABBALab代表取締役の小笠原治氏は、ものづくりをトータルでサポートする同施設の利用者は「作らない言い訳はできない」と語る。「せっかくの技術を職場の企画書だけで終わらせず、実現して欲しい。お金の言い訳をする方もいる。電子工作なら数千円、数万円程度だが、製品化となると数十万円、数百万円が必要。
でも数百万円で悩んでいるのであれば、ここへ来て手を動かして欲しい」(小笠原氏)。
実際の運営に携わるDMM.comの3Dプリント事業部企画営業プロデューサーの吉田賢造氏は、ものづくりに必要な機材全てを集約した「拠点」を強調。
「恒温恒湿試験機や水深30mの耐水試験が行える耐水試験機、目玉となる半田自動印刷機や自動実装機、全てが揃っている。あとは『モノを作りたい』という利用者の気持ちだけ。それだけあればモノが作れる設備を揃えた」と話す。
DMM.comがDMM.make AKIBAを開設した背景は、クラウドファンディングなどに代表されるように、ものづくりのブームが到来していると説明。支援策として3Dプリントサービス「DMM 3D プリント」やハードウェア開発情報コミュニティ「DMM.make」を展開してきたが、世界に通用するものづくり支援プラットフォームとして、今回「DMM.make AKIBA」を開設した。
しかし、施設開設に投じた約5億円という金額に対し、利用料金は低額に設定されている。これに関し吉田氏は「設備投資の回収という意味では正直厳しい。しかし、今後、ハードウェア開発に成功した企業へDMM.comの流通サービスの利用提案などは予定している。この施設からヒット商品を生む企業が2つ、3つと出てきてくれれば」と希望を語った。
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