愛あるセレクトをしたいママのみかた

「セブン銀行」が目指す人にやさしいユーザーインタフェース - ATMの使いやすさの秘密

マイナビニュース
「セブン銀行」が目指す人にやさしいユーザーインタフェース -  ATMの使いやすさの秘密
●“みんなのATM”をキーワードに進化したセブン銀行ATM

セブン銀行(旧:アイワイバンク銀行)が開業され、今年で13年。全国に設置されたATMの数はついに20,000台を超えた。ATMを中心とした事業を行っているセブン銀行において、ATMはまさに銀行の“顔”だ。それを踏まえ、セブン銀行は「いつでも どこでも だれでも 安心して使える “みんなのATM”」を合言葉にしてATMの改善を続けている。ユーザーインタフェース(以下:UI)やATM本体は日々更新されており、利便性や安全性は劇的に向上している。

とはいえ日頃利用するものだけに、逆にその変化に気づかないことも多いだろう。今回はそんなATMの変遷と現在のUIについて、セブン銀行・ATMソリューション部の水村氏、柏熊氏にお話を伺った。セブン銀行の歴史とともに、ATMの特徴とそのデザイン作成過程に迫っていこう。


○「セブン銀行」ATMの取り組みの歴史

2014年9月現在では日本の金融機関590社以上のカードや国際ブランドカードにまで対応しているセブン銀行ATM。セブン銀行は「セブン-イレブンにATMがあったらいいのに」という、お客様のニーズをふまえて生まれた。

セブン銀行が目指しているのは「いつでも、どこでも、誰でも、安心して」使えるATMサービスを提供し続けることだという。しかし2001年にアイワイバンク銀行として営業を開始した直後は、自行のカードと三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)のカードしか使えなかった。そこでセブン銀行がまず注力したのは、提携先を開拓し、使えるカードを増やすこと。開業当初の画面から存在するUIのコンセプトがある。それは“入れたカードの提携先の画面になる”ことだ。A銀行のイメージが緑なら背景や画面も緑に、B銀行のイメージが黄色だったら黄色にという具合にUIが変化する。
慣れ親しんだ銀行と同様の取引画面が表示されるので、安心して利用できるというわけだ。

○“ATMでできること”を増やした第2世代

2005年になると提携先は500社以上に拡大し、ATMの数も10,000台を上回るまでとなる。これに伴い、ATMの進化は新たなフェーズへ入る。2007年から導入を開始した第2世代のATMでは「ATMでできることを増やす」、つまりサービスの強化が行われている。まず、ATMで使えるカードが海外も含め大幅に増加したため、“どのカードが使えるか”を一画面に表示することが難しくなった。そのため、利用できるカードは検索によって調べる形へと変化した。カード挿入後の画面もリニューアルが行われ、英語も併記された、より今日に近い洗練された画面へと変わる。また従来は提携金融機関をお知らせするための厚紙のボードを掲示していたが、2ndディスプレイが搭載されるようになり、ペーパーレスで情報を発信できるよう強化が施された。
これにより、ATMのメンテナンス日時のアナウンスなど、本体と連動したタイムリーな情報配信が行えるようになる。また選挙の情報などが掲載されることもあるという。

全国への進出が完了し、またセブン&アイグループ店舗外への設置例も増えてきたことから、設置された都道府県や公共交通機関、店舗ごとに表示する画面を変更するという試みも行われている。例えば、空港なら外国人利用者向けのアナウンスを増やす、証券会社内ならば証券会社からのアナウンスを表示するなどだ。たった1台だけでも、違う画面を表示するよう制御が可能だという。また電子マネーの普及に伴い、「nanaco」の取引が可能となった。

●モニタ評価によって操作性を追求した第3世代ATM
○“誰にでも使えるATM”を目指した第3世代

ATM設置台数がついに15,000台を突破した2010年ころには、セブン銀行ATMはすっかり身近なものとなった。コンビニが銀行取引の場として普及し、もはや店舗にはATMが設置されていて当たり前となり、セブン銀行ATMの進化は第3フェーズへと移行する。


次なるテーマは“誰にでも使いやすいATMにする”ことだ。使いやすいUIには正解というものがない。そこでセブン銀行では「顧客の評価に耳を傾ける」ということに注力してATMの操作性改善を進めた。具体的には、UIを検討、デザインした後にすぐに会議室などにATMを設置し、モニタ評価を実施するという手法を採用している。男女や年代、利用経験や頻度、利用するカードや機能ごとに利用者の目線の動きやそれぞれの操作時間を計測。そこから、一画面ごとにUIを検証していくという気の遠くなるようなモニタによって評価が行われた。

モニタ評価の結果、取引内容を誤解したまま操作を進めていたり、戻りたいときに必要なボタンが無かったりなど、UIの細かな改善点が見えてきたという。例えば、人間の視線は画面の左上から右下に流れるが、操作ボタンがその流れに沿った位置に配置されていなかったり、“連続取引”という言葉が誤解を生み、スムーズな操作が行えなかったりといった点だ。
これらの調査によって、操作手順をステップ表示して現在の取引内容をカラー表現するといった変更が行われた。

現金やカード、レシートなどの取り忘れ時の音声ガイダンスが変化したのも第3世代からだ。それまでは「現金が出ます」といった具体的なキーワードを含んだ音声が再生されていたが、これは安全性の面から不安を感じるという声があり、「お忘れ物にご注意ください」といった内容に変更された。さらに、ATMの前に顧客がいるかどうかをセンサーで感知し、ATMの前にいる場合は音声再生までのタイマーが延長され、受取りを急かさせることも無くなっている。同時に画面演出に合わせて取引時のチャイム音も変更された。これは、データの読み込み時間や動作の待ち時間のストレス軽減のためだという。また、より一層の見やすさ追求のため、ユニバーサルデザインフォントを採用。視認性や識別性、表示適正に優れており、年齢や性別、能力などに関わらず、できるだけ多くの人々にとって使いやすいデザインへと変更された。


なお、操作性の追求は現在進行形で行われているものだ。全国に設置されたATMの操作状況はデータベースとして集計されており、どこの画面でどれだけ操作に戸惑っているかという分析が常に進められている。例えば、ATMの操作時間から混雑している店舗や時間を推測することも可能だという。

ここまでが、セブン銀行ATMのおおまかな歴史だ。次ページでは、現在適用されている最新のUIのディティールをチェックしてみよう。

●季節ごとに起動画面が変わる遊び心も
○文字を大きくし背景は白地に

現在のUIへのリニューアルに際しては、最終的に3案のデザインに絞られたという。従来のUIを踏襲しながらも文字を大きくし丸みを帯びたデザインに変更したもの、UIを大きく変化させてイラストも追加したもの、そして現行のUIという3案だ。モニタ評価を行った結果、多くの票が入ったのはイラスト付きのものだったが、年間6億件の取引を支えているリピーター層を重視して「情報量は少なく、シンプルに」を体現した“従来のUIで文字を大きくしたもの”を採用した。


単純に文字を大きくしすぎると画面が見づらくなるし、文字を減らしすぎても情報が正確に伝わらない可能性がある。文章については、コールセンターとチームを組み考察。冗長にならないよう、わかりやすい文章にしているという。わかりやすく簡潔な文章にしたことで、文字を大きくしたのである。また、文字の後ろを白くしたのは、提携金融機関ごとに基調となるカラーが変わるため、場合によっては読みづらくなる。それを防ぐための措置だという。

また、アニメーションを多用しているのも最新のUIの特徴だ。操作してもらいたい箇所の矢印を動かしたり、次に押すべきボタンの周囲がぐるぐる回ったりと、ユーザーが次にどの操作をすればよいのか判断しやすくなっている。さらにカードや明細書、現金が出てくるタイミングに合わせアニメーションを表示。取り忘れを防ぐ効果を生み出している。

UIについての“トリビア”もある。カードを挿入して取引が開始されると起動画面が表示されるのだが、その画面が季節ごとに異なる。9月1日から3カ月は“秋”、12月1日から3カ月は“冬”、3月1日から3カ月は“春”、6月1日から3カ月は“夏”をイメージさせる画面となる。水村氏によると、この変化に気づくユーザーも多いようで、直近の9月1日には「セブンのATMが秋になった!」というようなツイートが散見されたそうだ。

ブラッシュアップの手はさらに明細票までに及んだ。“どんな取引をし、取引金額はいくらで、手数料と残高はどれくらいか”といった必要な情報を大きく表記し、その他の情報はそれよりも小さく表記するよう変更された。さらに可読性を上げるため、一項目あたり一行を利用している。また、コールセンターへご連絡いただいた際、オペレーターに伝えていただく「照会コード」には電話のマークを付け、どの数字を読み上げていただきたいのかお客様に説明しやすくした。

日ごろ何気なく使用しているセブン銀行ATM。開業当時は現在のUIほどにデザインが洗練されておらず、操作に戸惑うこともあったようだ。だが、つねに改善に努め、さらにその改善アイデアは果てることがない。もしセブン銀行ATMを利用することがあったら、そのUIに注目してほしい。いつの間にかさりげなく、さらなる進化を遂げているはずだ。

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード