東芝、日立が過去最高レベルの水準もソニーなどでは構造改革に遅れ - 電機大手8社の2014年度第2四半期・決算まとめ(前編)
電機大手8社から、2014年度第2四半期(2014年4月~9月)の連結業績が発表された。8社合計の売上高は前年同期比2.4%増の21兆8,572億円、営業利益は12.0%増の6,945億円、四半期純利益は2.7%減の2,331億円となった。8社合計の営業利益率は3.2%となった(※各社合計数値は億単位で切り捨て合算したもの)。本稿では、折り返し地点を過ぎた2014年度の業績をみていく。
○本業は回復したか? 東芝は過去3番目の高水準、日立は四半期単独で過去最高
売上高および営業利益は前年実績から回復。内訳をみても、本業での回復ぶりを示すものとなったが、最終利益(四半期純利益)では8社合計が前年割れとなり、一部企業での構造改革の遅れが浮き彫りになる決算内容となった。
売上高では日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、三菱電機の上位6社が前年実績を上回ったが、シャープ、NECの2社が前年割れの実績となった。だが、NECでは「事業の非連結化の影響などにより減収となっており、現在注力する事業ベースでは約3%の増収になる」(NECの遠藤信博社長)と述べた。
営業利益では、NECが携帯電話事業の赤字解消やパブリックおよびシステムプラットフォーム事業での採算改善により大幅な回復を見せたほか、三菱電機、日立製作所、パナソニックが2桁の成長率を達成。一方でシャープが前年割れ、ソニーが赤字転落となった。三菱電機は営業利益率で6.1%という高い水準を達成したのが特筆できるほか、東芝では過去3番目の水準、日立製作所では第2四半期単独で過去最高となったという。
そして四半期純利益では、日立製作所、三菱電機、富士通、東芝が高い成長率を達成。シャープも前年同期の赤字から黒字へと転換。東芝では「リーマンショック後では過去最高益になった」と回復ぶりを強調した。だが、ソニーは最終赤字幅を大きく増やした。
●2014年度通期での業績見通しはソニー、シャープを除き上方修正が相次ぐ
一方で、今回の業績発表に併せて、2014年度通期見通しを修正する企業が相次いだ。
8社中5社が修正を発表している。
日立製作所は売上高、営業利益、当期純利益のすべてを上方修正。「営業利益率は6.1%となるが、実行面ではもう少し高いところを目指したい」(日立製作所の中村豊明執行役副社長兼CFO)と強気の姿勢をみせる。
パナソニックは、営業利益と当期純利益を上方修正。「今回の修正により、2015年度を最終年度とする中期経営計画の営業利益目標である3,500億円を、1年前倒しで2014年度に達成する。今年度の営業利益率見通しは4.5%となるが、5%の達成が視野に入ってきた。今年度中に前倒しで達成したい」(パナソニック・津賀一宏社長)と、こちらも強気の姿勢をみせる。そして、三菱電機も売上高、営業利益、当期純利益で上方修正を発表してみせた。
これに対して、下方修正を発表したのは2社。ソニーは営業利益と当期純利益を下方修正。シャープは売上高を下方修正した。これにより、通期で営業赤字見通しはソニー1社。当期純損失でもソニーだけが赤字見通しだ。
ソニーの吉田憲一郎CFOは、「モバイル・コミュニケーション分野における営業権1,760億円減損の影響によるもの。また、コーポレート(本社機能)の高コスト体質、エレクトロニクスの低収益という課題がある。為替も全体としてはマイナスに振れている」と下方修正の理由を語った。
この結果、電機大手8社の通期見通しは、売上高が前年比0.6%増の46兆6,700億円、営業利益は8.7%増の1兆9,000億円、当期純利益は25.2%増の6,950億円となった。営業利益率は4.1%と、4%台への回復を見込むことになる。
●消費増税や冷夏によるエアコン売上減少の影響は?
こうして電機大手8社の動きを俯瞰すると全体的には回復基調にあることがわかる。そして、営業利益の伸び率が2桁を伺おうとしている点にも強い回復感が感じられる。だが、この背景には円安の影響があることも加味しなくてはならないだろう。
では、電機大手8社の2014年度上期決算をもとに、いくつかの領域から電機業界の動きを見てみよう。
○消費増税後も大きな落ち込みはさほどなく、海外市場が好調だった白物家電
白物家電分野では、家電各社の主力となる国内市場において、消費増税前の駆け込み需要の反動とともに、昨年の猛暑とは対照的となった冷夏の影響により、エアコンの売れ行きが鈍化したことが指摘されているが、結果としては予想以上の落ち込みにはなっていないようだ。シャープでは、白物家電をはじめとする健康・環境事業の売上高は前年同期比1.8%増の1,628億円、営業利益が19.8%減の77億円。
「消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動や、天候不順の影響があったものの、前年同期を上回る売上高を確保できた。特に、今年3月の駆け込み需要によって販売台数は空前のものとなった影響で、4月以降は実売が減少したものの、その在庫を補充するといった動きがあった。また、海外における空気清浄機の販売が好調であった」と、シャープの高橋興三社長は語る。
パナソニックでは、アプライアンス社の売上高が前年同期比1%増の9,164億円、営業利益は141%増の324億円と増収増益。「エアコンは、日本での天候不順の影響があったが、中国での増販効果が出ているのがプラス要素」(パナソニックの河井英明代表取締役専務)とする。
日立製作所では、生活・エコシステムの売上高は前年同期比4%増の3,883億円、営業利益は84億円増の143億円となった。空調事業を中心に海外での売上高が増加したのが要因。好調ぶりを受けて、2014年度通期の同部門の営業利益見通しを上方修正している。
東芝は、ライフスタイル部門の売上高が前年同期比5%減の5,822億円、営業利益が59億円改善したものの293億円の赤字。だが、構造改革費用を除くと295億円の増益になると説明した。同部門の業績のなかには家庭電器以外にも、PCやテレビが含まれており、家庭電器だけでは売上高が前年同期比4%減の1,179億円。
東芝の前田恵造代表取締役専務は、「白物家電は第1四半期、第2四半期ともに売上高で前年実績を下回っている。消費増税前の駆け込み需要の反動というよりも、エアコンなどの夏場の季節商品の売れ行きが落ちているのが理由。毎週土日に台風が直撃したことも影響している。利益面では、商品力強化や円安対策などにより、大幅な増益となっている。第3四半期以降の消費増税の反動の影響はなくなり、国内事業も前年同期実績を上回るものと予測している」と述べた。
三菱電機は、家庭電器の売上高が前年同期比4%増の4,771億円、営業利益は120億円増の352億円となった。消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動を受けたが、アジア、北米、欧州市場向けの空調機器、国内向けの業務用空調機器に加えて、円安の影響もあり、売上高が増加したという。こうしてみると、白物家電分野は国内の市況に懸念材料があったものの、その影響が限定的であったこと、海外での成長が下支えして、各社とも比較的好調な業績になっているといえよう。
後編では、テレビ、PC、スマートフォンについてみていく。