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Spansionの組み込み向けe.MMC製品の強みとは? - 担当ディテクターに聞いたNAND Flashの戦略

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Spansionの組み込み向けe.MMC製品の強みとは? - 担当ディテクターに聞いたNAND Flashの戦略
●書き込み寿命をシステムレベルで確保
既報の通り、Spansionは組み込み向けにe.MMCのNAND Flash製品をリリースした。この製品発表の記者説明会の後で、もう少し細かい話を同社のNANDマーケティング担当ディレクターであるTouhid Raza氏(Photo01)に伺う事ができたので、その内容を一問一答式にご紹介したいと思う。

Q:まず最初に今回の製品の寿命についてお伺いします。一般にSLC NANDだと10年単位のデータ保持期間と10万回オーダーの書き込み寿命が保障されますが、MLC NANDだと特に書き込み寿命は数千~数万回オーダーまで減ってしまいます。このあたり、今回のeMMC NANDはいかがでしょう?

A:まず今回の製品は、書き込み寿命はシステムレベルで確保している。チップレベルではない。実のところ、データ保持期間はMLC製品でも10年が確保される。違いは書き込み寿命だ。
たとえばJEDECのスペックだと、SLC NANDだと10万回の書き込みで10年のデータ保持がが保障される。MLC NANDだと10年のデータ保持だが書き込み寿命は3000回だ。ところがシステムレベルではデータを内部でどう管理するかが差別化のポイントになるわけだ。われわれは顧客にあわせてのUse caseを定義し、このUse caseの上で10年以上のデータ保持期間を提供する。さらに我々の製品はFlash内部の欠陥を検知できる。たとえばあるブロックの読み込みを読み出したとき、コントローラがそのブロックに欠陥が発生する兆候を検知したら、そのブロックを新しい代替エリアに移動する。こうした方法により、システムレベルではずっと多い書き込み寿命を達成できる。

Q:その仕組みは分かります。
SSDと同じですよね。ただFlash Memoryのプロセスを微細化してゆくと、どんどんエラー頻度があがるため、これに応じてコントローラの方もたとえばECCからAdvanced ECCやLDPCといった具合にエラー検出/訂正能力を強化しています。この製品はどうでしょう?

A:たとえばこの製品の場合、72bitのECCエンジンを利用している。

Q:もう少しコントローラについて。今回はPHISON Electoronicsのコントローラを搭載しているというお話でしたが、これはMLC NANDと同じダイの上に実装されているのでしょうか? それとも異なるダイになっている?
A:コントローラは別のダイになって積層される形になっている。なので8GB品は1枚、16GB品は2枚のMLC NANDのダイを積層する形だ。この世代のコントローラは2枚までのMLC NANDをサポートするので最大16GB品ということになる。次の世代は4枚までサポートできるので、これを使って32GBが実現できることになる。


Q:次にMLC NANDそのものですが、19nm品ということでした。これはSLC NANDと同様にSK Hynixのものですか?

A:いや、現在の製品は東芝の19nm品だ。

Q:どういう戦略でMLC NANDのベンダを選択しているかお聞きして宜しいですか?

A:我々はそもそも複数のサプライヤを持つ戦略を取っており、実際SK Hynixとも長期の契約を結んでいるが、これはSLC NANDに関するものだ。

Q:もう少しMLC NANDについて。たとえば東芝の19nmは同社が1X世代と呼んでいたもので、このあと1Y/1Zと続いてそのあとは3D NANDになります。Samsung Electronicsはすでに3D NANDの量産を開始しました。このあたりはどう思われますか?

A:1Y世代もマッチしていると考えている。我々はフォームファクタ、それと機能を顧客に対して保障している。
今回の場合、コントローラとFlashが分離されているから、たとえばFlashが変更になっても、コントローラがその差異を吸収してくれるので、顧客は同じ(eMMCの)I/Fを利用できる。だから、もし1X世代のものを1Y世代に切り替えても、顧客は同じように利用できる。

Q:つまり将来は、東芝以外のFlashを使う可能性もあるが、その場合でも顧客から見ればまったく同じように扱えることをSpansionが保障する、ということですね?

A:その通りだ。つまるところBOMに一番影響するのは(機器との)I/Fの部分で、そこは現行のままを維持する。これは別にI/Fだけでなく、たとえば温度の影響とか電気的特性とかすべてに言える事だ。もし何らかの理由で互換性をなくす必要が出る場合は、事前に顧客と相談をして理解して頂いてからになる。

Q:もうひとつ。記者説明会の折に、TLC NANDを使う可能性は非常に低いとおっしゃってましたが、では3D NANDについてはどうでしょう?
A:我々自身も3Dの技術はすでに持っているし、3D NANDに必要なCharge Trapの技術はSamsungにライセンスしている。
ただ現在は3D NANDに関しては状況を見守っている状況だ。

Q:NORに関してはSpansion自身が製造、あるいは製造委託をして、それを販売しています。ところがNANDについては基本的にMemoryそのものを他社から購入、パッケージして販売している訳ですよね?

A:大きく言えばその通りだ。ただ顧客の立場から見た場合、Spansionの差別化要因は品質管理とテストとなる。SLC NANDに関して言えば、我々はNAND FlashのウェハをSK Hynixから購入し、その後我々自身のみでテストを行っている。ここで、どうウェハをテストし、それが最終製品にどう影響するかを把握している。

これはeMMCについても同じことが言える。確かにNANDとコントローラを購入しているが、それをどう品質管理し、どうテストするかが最終製品に影響を及ぼすことになる。
我々の価値となる重要な部分は、我々がどれだけ顧客を理解するかだ。顧客の求めている要求を理解した上で、我々はテスト方法をデザインする事になる。我々の品質管理と検証方法、それとツールサポートが最大の差別化要因だ。

●Spansionが組込市場に製品を安定して供給し続けることの意義
Q:ところでちょっと違う話を。今回100ballのパッケージと153ballのパッケージがありますが、これは何故でしょう?

A:一般には153ballが使われる。100ballは一部の自動車業界向けだ。細かく言えば、100ballの方は1mmピッチになっており、パッケージもやや大きい。というのは、顧客の中には153ballの細かなピッチだと製造できない、というところがまだ若干あり、そうした顧客向けにはピッチの大きい100ballが使われる。
ただ組み込み市場ではほとんどが153ballの方になる。

Q:次にもう少し大きな話を。かつてSpansionがNAND Flashのビジネスを始めた時、当時のSpansionはNOR Flashのみを販売するベンダーでしたから、相対的にNAND Flashのビジネスは大きいものでした。ところが今やSpansionは富士通から買収したMCUビジネスが大きなパートを占めており、そもそもFlashビジネスそのものの比率がずっと小さくなっています。なので、NAND Flashのビジネスはさらに比率として小さい訳ですが、今後はどうなのでしょう? もっとNAND Flashのビジネスを大きくされてゆくと思っておられるのか、それともややStableになるのか。

A:我々のFlash Memoryのビジネス戦略は、組み込み市場に製品を安定して供給し続けることにある。マーケットダイナミクスを見ると、たとえばNOR Flashはある一部の領域ではやや縮小しつつある。ただ我々は引き続きマーケットリーダーであり続けるし、NOR Flashに関してはアドレスし続ける。一方SLC NANDは、引き続き成長が望めると見ている。我々は2012年3月ににNAND Flashに参入したが、この年の第3四半期の最初のSLC NANDの売り上げと、2014年の第3四半期の売り上げを比較すると、26倍になっている。我々は引き続きSLC NANDの売り上げは伸びると予測している。また、SPI Flashのビジネスも成長している。

Spansionの目的は組み込みマーケットでのNo.1サプライヤになることで、実際Flashに関してはこれが実現しているし、MCUやAnalogもそうだ。

Q:そのSLC NANDですが、今後数年間の範囲で見た場合伸び続けるのでしょうか? それともどこかで頭打ちになるんでしょうか?

A:マーケット全体としてみれば、頭打ちになると思う。ただSpansionの立場としては、今後数四半期は伸び続けることになると思う。我々はまだ頭打ちの状態には達していない。

Q:eMMCについてはどう見ておられますか?

A:eMMCもSLC NANDと同じように、あるところまでは急速に伸びるだろうと見ている。

Q:数年のオーダーで、ですか?

A:そうなるといいのだがね。

Q:そしてeMMCがある程度頭打ちになりかかる前に、次の製品を投入するという理解でよいですか。

A:我々は強力なマーケティングチームを用意して市場動向を常に見ているが、具体的な将来計画は秘密だ(笑)。

Q:NOR FlashとかSLC NANDに関しては、そもそも競合がこのマーケットから撤退してしまったので、結果としてSpansionは大きなマーケットシェアを確保できました。ところがeMMCに関しては、競合が非常に多いようにも思いますが。A:確かにそうだ。そもそもeMMCは非常に幅広いマーケットで使われており、1つのマーケットではない。それはWirelessだったりTabletだったりするわけだが、組み込みもまた異なるマーケットとなる。我々はeMMCを組み込みマーケットに提供するわけだが、このマーケットは通常のメーカーがマジョリティを取るのは難しい。というのは先にも出てきた品質管理とかテスティングのレベルが異なるからだ。正直なところ、組み込み向けのeMMCというのは割と新しい、これから立ち上がるマーケットであり、我々はこれを正しいタイミングで市場投入できたと考えている。

Q:とは言え、既存のeMMCカードベンダも組み込み向け製品を既に用意しています。

A:その通りだ。組み込み向けの主要なベンダはみなNAND Flashのサプライヤだ。が、1つ指摘しておきたいのは、NAND Flashのサプライヤは(Spansionと比べて)ずっと大きな会社だ。だから、かれらには大きな売り上げが必要になる。そして大きな売り上げは、eMMCではなくSSDでもたらされる。たとえば私がSANDISKだったりSamsungだったりMicronだったりしたら、もっと売り上げを伸ばすために「SSDが組み込みマーケットで重要だ」と言うだろう。彼らにとって、組み込みは数ある市場の1つに過ぎない。我々にとっては、これが唯一の市場だ。これが、我々が顧客へ高いレベルのサポートを行っている理由であり、これが最優先のビジネスである。これはSLC NANDの時も同じだった。

Q:ちょっとSLCに話を戻すと、現行では2GBの製品が最大容量ですが、もう少し大きな容量の製品を提供する予定は?

A:今のところない。より大容量なマーケットはeMMC製品でカバーすることになる。もちろん古いプラットフォームで4GBの容量を、というニーズがない訳ではないが、我々はeMMCにフォーカスする方が得策だと考えた。なので4GB以上はeMMCのみでカバーし、2GB以下がSLC NANDとなる。

Q:ところで記者会見の際に、最近はOSやアプリケーションが肥大化しつつあるので、8~16GBの容量が必要、という話が出たと思いますが、最新のOSやアプリケーションはさらに肥大化が進んでおり、32GBクラスが必要という風潮になっています。ただこうしたマーケットはローエンドのSSDが狙っている部分でもあり、実際組み込みマーケット向けの小容量SSDが出ています。実際今回のeMMC製品はSSDと見事に競合する気がするんですが、いかがでしょう?

A:確かに私は前職でこのマーケットに深く関わっていたのだが(笑)、まぁ実際その通りだ。ただ、だからといって秘密の情報を説明する訳にもいかないのだが(笑)。

我々のゴールの1つ目は、組み込みソリューションのNo.1になることだ。だから、もし組み込みマーケット自体がそちら(eMMCからSSD)に移行するのであれば、我々もそちらに行くことになるだろう。ただ今のところは、私自身の感触で言えば、マーケットの殆どはeMMCベースだ。確かにあなたの言うとおりで、将来はこのマーケットにSSDの需要が伸びてゆくだろう。ただSSDベンダは今のところeMMCというよりはHDDを競合と捉らえている。だから、製品はそちらに向けたものが主眼となる。私は業界の色々な人と話をしたが、誰もが(このマーケットにSSDが来るかという質問に)「たぶん」と答える。もし大容量が必要でStackingをするようなことになれば、SSDに移行するだろう。今はそうしたトレンドを注意深く確認している。

ちょっと5年前に時間を戻してみたい。私は前職で…あまり前職の細かい話はできないのだが、まぁとにかくSSDを市場に投入した時だ。多くの台湾やその他の地域の会社がこれに追従して、性能が高いとかそういったことで競合してきた。ところが、システムに組み込んでみると性能が出ない。すこし時間が経って、やっと業界は何をもって性能を測定すべきかを理解した。たとえばカタログで見ると、200MB/secが出るとか書いてある。「これにどうやって競合しよう」とか大騒ぎしたわけだが、フィールドテストを行ってみるとHDDの方が性能が出るといった状況になっていた。これは、Windows OSの元での転送サイズが、4KB前後の事が多かったからだ。これに関しては記事を書いたこともある。つまり、どうやってSSDを使うべきかを理解することが重要だと思う。組み込み業界の顧客の所に行くと、同じことが必要になる。どうeMMC製品を使うべきか。たとえばアリゾナからニューヨークに車で行くとしたら、高性能なスポーツカーは必要ない。ではどのような車が必要か? これこそが、我々がPHISON Electoronicsとパートナーシップを結んだ理由でもある。我々は顧客のニーズを理解している。先ほどのあなたの質問に戻ると、ではNAND Flashとコントローラをそれぞれ購入すればeMMCは作れる。ではどう差別化するか? 私は顧客のことも、転送サイズも、セキュリティの要求も、その他様々な要求も全部理解している。私はPHISONに行って、こうした事を伝える訳だ。前職でも実は同じ事をしていた。これが差別化に関する答えだ。もし私が次の製品を企画する場合、やはり同じ事をすることになるだろう。

○インタビューを終えて

ということで、時々脱線しつつもいろいろと興味深い話を伺う事が出来た。実際のところ、Flash Processが微細化すると、急速にエラーレートが上がるために世代ごとに異なるエラー訂正技術が必要になり、これをSoC側でカバーするのは非常に困難な状況になっている。このための解はMemory側にFlashのコントローラを搭載することであり、今はeMMCだけだが、この先にはたとえばQSPIとかのI/Fを持つ製品が出てきても不思議ではないだろう。MLC NANDの組み込み業界への導入のあり方を勉強させてもらった、といった感想を抱いたインタビューであった。

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