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中小企業の常識を変える - クラウド会計freeeが成長する理由

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中小企業の常識を変える - クラウド会計freeeが成長する理由
●年末調整・確定申告に向けた新コンセプトを発表

「本業とは関係のない業務を効率化し、個人事業主や中小企業で働く人々がより創造的な活動にフォーカスできるようにしたい」

こうしたコンセプトで2013年3月にリリースしたのが、Webベースのクラウド会計ソフト「freee」だ。Mac対応、ブラウザはIE(Internet Explorer)よりもChromeやSafari優先で対応、簿記の知識がなくても会計・経理作業がいつでもどこからでもサクサクとできる。

インターネットに慣れ親しんだ人が「こんな会計ソフトを待っていた!」と思わず言ってしまうような利便性があり、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを中心に口コミで評判が浸透。ユーザーの声に素早く反応するサポート体制なども好評で、提供開始から1年7カ月で14万事業所が登録するまでに成長した。

そんなfreeeは、次回の確定申告シーズンを前に新たなコンセプト“バックオフィス最適化”を打ち出した。従業員が数人いる中小企業の経理業務を社内全体で大幅に効率化するというものだ。加えて、税理士・会計士向けの取り組みも強化しており、freeeの導入に関して一定水準を満たした人を認定する「freee 認定アドバイザープログラム」を設定、その数は2014年11月現在で600を超えている。

“バックオフィス最適化”とは具体的にどのような効率化を生み出すのか? freee 認定アドバイザープログラムを導入することで、税理士・会計士、そしてエンドユーザーにはどのようなメリットがあるのか? ――次回の確定申告シーズンに向けて実装予定の新機能も含めて、freee 代表取締役 佐々木大輔氏に話を聞いた。


○中小企業向け新コンセプト“バックオフィス最適化”とは

freeeは、あらかじめ登録した銀行やクレジットカードのWeb明細を自動同期して会計帳簿を作成することで、従来の経理業務と比較してその作業を何倍にも効率化するソフトだ。しかし、この機能は個人事業主や1人で運営するような法人では有効だが、複数人で運営する事業や発生主義で記帳したい事業(決済などが行われる前に、いくら支払われるか知りたいなど)の場合には効果が限定的だったという。

そこで打ち出したのが、新コンセプト“バックオフィス最適化”だ。経理業務の自動化と社員との分業によって、これまで経理業務にかかっていた作業時間を大幅に削減する。

佐々木氏は「バックオフィス最適化により、複数人で運営する中小企業でも大きな効率化の効果が期待できます」と話す。freeeが想定する中小企業とは、従業員数が3~50人ほどの法人だが、「人数よりも組織の複雑性や社内運用ルールの厳しさなどがより重要です。freeeは従業員70人超になりますが、社内の経理はfreeeを使ってスムーズにできています」(佐々木氏)としている。

○ターゲット層が広がってもネットでしっかりコミュニケーション

なお、これまでのターゲットユーザーからセグメントを広げることで、ユーザーアプローチに変化はないのだろうか。
それについて佐々木社長は「freeeは変わらずコアなネットユーザーに対して最適なものを提供することに変わりはない。業務効率化に役立つ情報を発信しているfreeeの自社ブログ「経営ハッカー」も含めて、インターネットでしっかりとコミュニケーションを図り、情報発信をしていきます」と変わらぬ方針を示している。

●次回の確定申告シーズン、freeeはもっと便利に
○次回の確定申告シーズン、freeeはもっと便利に

次回の確定申告は、税率変更や白色申告者の記帳義務化など何かと変化があるシーズンとなる。そこへ向けて、freeeでは2014年11月に2つの新機能を発表した。freeeのiPhoneアプリ、もしくはPFU製のドキュメントスキャナ「ScanSnapシリーズ」を使って領収書や請求書を読み取り、OCR化。データを確認し、月末などに未払い分をまとめて一括振込ファイルで振り込むことで、取引先への支払業務を省力化するというものだ。

freeeにとってリリース後初となった前回(2014年)の確定申告時には「自動化」「誰でも使える簡単さ」が、初心者でも使える会計ソフトとして好評を得た。特にチャットサポートは業界初の取り組みとしてユーザー満足度が高かったという。


次回の確定申告シーズンは、「そこからさらに一歩踏み込む」と佐々木氏は言う。具体的には(1)申告書の自動作成、(2)決算書画面のUI改善、(3)モバイル強化、の3点を挙げている。

○(1)青色申告の決算書&申告書をまとめて自動作成

まず、青色申告時に作成する決算書に加え、申告書も自動で作成できるようにする。「これまでの会計ソフトは決算書しか管理できず、申告書も作れますが全てワープロで数字を打ち込んでいくだけの状態でした。個人事業主の場合、医療費や生命保険料は個人の経費ですが、中には事業用の経費として登録してしまう人もいます。すると、従来の会計ソフトは『これは個人経費ですよ』とアナウンスはしてくれますが、後から別で入力が必要でした。freeeは、その仕訳をソフト側で行います。ユーザーは全ての経費を入力してよく、freeeが個人事業主のお金の動きを考えて最適な自動化をします」(佐々木氏)

○(2)決算書と申告書の項目は自分に必要な分だけ、迷わず入力できる

2つ目は、決算書と申告書の最終作成画面の改善だ。
前回の確定申告時に問い合わせが多かった部分だといい、ユーザーがより迷わずに作成できるよう、UIを根本的に見直している。決算書の作成時、多くの人には関係のない項目はボタンで隠しておき、必要な人はクリックで追加入力するようにした。例えば個人事業主で保険料を支払うだけの人などは少ない入力でシンプルに終えられる。

○(3)iOS/Androidアプリのユーザビリティを向上

最も力を入れているのが、モバイルアプリの強化だ。既にアプリで撮影した領収書をOCR化して自動仕訳する機能は実装しているが、それに加え、現在Webで対応しているいくつかの機能をモバイル側でも行えるよう機能向上を図っていく。スマートフォンならではの操作性を活かしたユーザビリティの向上にも取り組んでいくという。

「Webに加えて、iOS/Android両方のアプリをサポートしているのは、クラウド会計ソフトではfreeeだけ。モバイルは現状ある機能をブラッシュアップしつつ、ユーザビリティの向上に力を入れていきます」(佐々木社長)

○サポートはいざとなったら全員体制で

前回の確定申告で好評だったチャットサポートは引き続き行っていく。
従業員数も前回に比べ3倍強の70人以上に増えており、いざとなれば全員体制でサポートできる状態が整っているという。

「現在はエンジニアも交代でサポートに加わり、開発メンバーがそれぞれユーザーと触れ合ってニーズをつかむことで製品開発に活かそうと取り組んでいます」(佐々木社長)

●税理士・会計士もfreeeでより創造的な活動にフォーカス
○税理士・会計士もfreeeでより創造的な活動にフォーカス
freeeが現在、機能拡張とは別で進めているのが税理士や会計士へのセミナー実施だ。社内に税理士や会計士を招いて行うオフラインセミナーを週に1回、地方の人も参加できるオンライン(Web)セミナーをほぼ毎日開催している。

「税理士や会計士さんにとっても、freeeを使いこなすことで、より生産性が上がり、顧問先とのデータのやりとりが簡単になります。結果としてそれがより付加価値の高い、例えばコンサルティングなどの業務にもフォーカスできるようになり、サービス単価が上がる効果があります」(佐々木社長)

これまで法人利用の場合、エンドユーザーがfreeeを使いたいといっても、税理士や会計士側で却下するケースがあったという。その理由は「freeeをよく知らないから、顧問先には薦められない」というのが一番で、freeeではそれを改善するために今回のセミナー実施を決めた経緯がある。

セミナーを実施するようになり、これまでは頭ごなしに「freeeはダメです」と言われてしまっていたのが、「freeeだったら、スタートアップや経理の知識がない顧問先でもそのまま導入できるので、非常に便利」という声が多く聞かれるようになったという。

こうした取り組みの結果、freeeの導入に関して一定水準を満たした「freee 認定アドバイザープログラム」の事業所数も600事業所以上となった。
プログラム受講者からは「freeeは経費精算の機能も付いているので、完全に会計ソフトの域を超えている。どちらかというとERPに近く、従業員全員の効率化を図ろうとする将来性を感じる」といったフォードバックも得ているという。

○freeeは常にイノベーティブなものを出していく

佐々木社長は今後に向けて「まずは年末調整、確定申告という大きなイベントに向けてきちんとリリース予定の機能を実装すること。そしてサポート体制を確立することを目下の抱負に取り組んでいきます」と話した。

freeeは会計ソフトのほかにも給与計算ソフトもリリースしており、スマートフォンアプリの開発も含め、それらをバランスよくブラッシュアップしていこうとしている。

「freeeは常に一番イノベーティブなものを目指している」と佐々木社長が話したように、クラウド会計の域を超えて、中小企業が本業に専念できる環境を作るソフト、また個人事業主や企業がこれからビジネスを始めようとした際に「これさえあれば大丈夫」といわれるソフトに成長している。

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