「生姜」の美人レシピ - 体が温まる朝食スープを薬膳のプロに聞いてみた!
○発汗作用、おなかを温める作用、解毒作用もある生姜
すでに西暦100年ごろに作られた中国の薬典「神農本草経」に、生姜は咳や胸のむかつきなどの症状を改善し、内臓を温め、発汗などによる関節炎や下痢にもいいと書かれていて、その薬効は多岐にわたります。
まずは発汗作用です。薬膳の考え方のもとになっている中医学では、風邪などの邪気は体内に侵入する前に発汗させて邪気を追い払うのですが、生姜には発汗作用があり、ぞくぞくっと寒気のする風邪の初期症状に効果的といわれています。
つぎに、おなかを温める作用。胃腸を温め、消化を良くしたり、冷えによる嘔吐にもオススメです。痰を取り、咳を鎮める働きもあり、とくに寒さによって引き起こされる症状に向いています。
解毒作用もあり、魚介の中毒による嘔吐や下痢を止めたりします。日本でも刺身に添えることがありますが、これもそのいい例で、理にかなったものなのです。
なお、よく皮と実の間に薬効があるといいますが、生姜の皮は利尿作用が高いので、水分代謝が悪くむくみやすい人は、ぜひ皮をむかずにそのまま使用してください。皮はたわしでこすったり、汚れをスプーンなどでこそぎ取ればOKです。
○「すりおろし生姜のスープ」のレシピ
ここで、身近な食材で簡単に作れる風邪対策の「すりおろし生姜のスープ」を紹介しましょう。
■材料
生姜のすりおろし……大さじ1、ねぎ……1/2本、溶き卵……1個、鶏がらスープのもと……大さじ1、片栗粉……小さじ1(水小さじ2で溶く)、塩こしょう……少々、水……400cc、香菜……お好みで(なくても可)
■作り方
1.長ネギは縦横十文字に切ってから、1センチ幅に切る。
2.お鍋に水と鶏がらスープのもと、刻んだ長ネギを入れる。
3.長ネギが柔らかくなったら、水で溶いた片栗粉を入れてかき混ぜ、たまごを少しずつ流し入れる。
4.塩こしょうで味を調え、火を止めてからしょうがのすり下ろしを入れる。お好みで香菜をそえて出来上がり。ちょっと寒気がするときや、外が寒くて冷えているときにササっと作れるので、覚えておくと便利な薬膳レシピです。このままスープとして飲むほか、ごはんがあれば、よそってスープご飯にしたら主食にもなります。
風邪の初期は早く対処することが一番ですので、このスープを飲んだら温かくして眠ること。汗をかいたら着替えて眠れば、翌朝にはすっきりし、体調も復活していることでしょう。
○薬膳は「その人や季節に合わせた食事」
ちなみに……こんな有能な生姜ですが、向かないタイプもあります。たとえば汗っかきで暑がりな人。
こういうタイプが生姜を多めに食べたら、余計熱くなって汗をかきます。また、乾燥気味の人も要注意です。摂りすぎると発汗作用によってカラダに必要な水分まで失い、カサカサ肌になる可能性も。
また、生の生姜は発散作用や止嘔作用が高いのですが、刺激も強いので、胃腸が弱い人がたくさん食べると胃を荒らします。生姜は加熱したり蒸すことで温める作用が高まるので、用途や体質によって使い分けるとベストです。
このように、だれもが同じものを食べれば同じように健康になれる、といわないのが薬膳です。つまり、薬膳は「その人や季節に合わせた食事」であることが大前提なのです。
寒がりさんや風邪対策に生姜はうってつけですが、ほてっていたり、乾燥していたり、ニキビなどの炎症がある場合においては薬膳とはいえません。
なので、キャッチーな健康法にすぐ飛びつく前に、「これって私の体質に合うかな?」と一度考えてみたり、試した後自分の体調の変化をよくチェックしてみましょう。
そしてちょっとでも自分をいたわる習慣を身につけ、旬のものを口にしたり、自分の体調に合ったものを食べ、ますますキレイで元気になりましょう。
<著者プロフィール<
杏仁美友(きょうにん みゆ)
漢方&薬膳アドバイザー。一般社団法人 薬膳コンシェルジュ協会 代表理事。国立北京中医薬大学日本校、遼寧中医薬大学付属日本中医薬学院を卒業し、国際中医師、中医薬膳師の資格を取得。テレビ・新聞・ラジオなどの取材、レストランのメニュー監修、商品開発、講演会などのほか、2011年に薬膳コンシェルジュ協会を設立し、実践的な薬膳を短期間で学べる資格講座の運営に力を注いでいる。近著は『朝に効く薬膳、夜に効く薬膳』(大泉書店)など。杏仁美友サイト 薬膳コンシェルジュ協会サイト