フリスクケースサイズの筐体でWindows8.1が動く! 「m-Stick MS-NH1」を試す
マウスコンピューターが11月28日に発表したスティック型PC「m-Stick」シリーズ。フリスクケースのような極小筐体にWindows 8.1がインストールされているという衝撃の大きさで、現在も話題沸騰中だ。その第一弾となるモデル「MS-NH1」が、12月5日15時に送料・税込19,800円という価格で発売された。なおすでに初期ロットは完売状態となっており、高い人気がうかがえる。ファーストインプレッションはお伝えしたが、短い時間では追えなかった点も含め、この「MS-NH1」を改めてご紹介しよう。
○Windows 8.1をポケットに忍ばせて持ち運べる衝撃
まずはそのサイズから確認していこう。外形寸法は驚きのW100×D38×H9.8mm。重量もわずか44gほどだ。
この大きさをどうにか伝えたいが、なにぶん筆者の手は非常に小さいため、手近にあるデバイスをかき集めて比べることとしよう。並べたのはiPad mini 2、iPhone 5S、ニンテンドーDS、マウス、SDカードだが、MS-NH1のサイズが伝わるだろうか。
続いて筐体を詳しく見てみよう。まずマウスコンピューターのロゴが入った面だが、こちらに用意されているのはLEDのみ。これは電源ランプとなっており、電源投入時には青色に輝く。側面にはそれぞれUSB2.0端子、microUSB端子(電源供給用)、電源ボタン、microSDスロットが用意されている。同梱品は、microUSB to USBケーブル、USB給電タイプのACアダプター、HDMI延長ケーブルとなる。このUSBケーブルとACアダプターは電源供給用のもので、MS-NH1のmicroUSB端子に接続することで本体が駆動する。
HDMI延長ケーブルはディスプレイなどのHDMI端子周辺に干渉物があるときに使用するものだ。ACアダプターは10W (5V/2A)仕様となっており、これといって特別な製品ではない。つまり、安定した2A出力を確保できればMS-NH1の動作は可能ということになる。
○HDMI端子に本体を差し込めばすぐにWindows 8.1を利用可能
それでは実際にWindows 8.1を起動してみることにしよう。ディスプレイの空いているHDMI端子に本体のHDMI端子を直接差し込むか、HDMI延長ケーブルを介して接続。ACアダプタにUSBケーブルをつなぎ、もう一方のmicroUSBコネクタを本体に接続。あとは電源ボタンを押せば、見慣れたWindowsの画面が確認できる。インストールされているOSは「Windows 8.1 with Bing」。
これは検索エンジンのプリセットにMicrosoftの「Bing」を採用することでBTOメーカーに無料で提供されるOSで、19,800円という価格を実現できた理由はこの点にある。ただし安いからと言ってBing以外の検索エンジンを使用できないということは無く、あくまで初期設定がBingになっているだけ。購入後には通常のWindows 8.1同様、自由に検索エンジンを変更できる。
本機の操作は他のWindows搭載機同様キーボードとマウスで行う。BlueToothを内蔵しているためワイヤレスで操作できるのだが、初期設定時のみUSB接続に対応したキーボードやマウスが必要となるので注意しよう。またUSB端子は1系統しか備えていないため、2つのデバイスを利用するためにはUSBハブなどを利用しなければならないこともある。一つのUSBアダプタでマウス・キーボード両方が使える製品を準備しておくと便利だ。また本体への電源供給量が少ないだけに、USB機器に供給できる電力量も少ない。
USBハブを利用する場合はバスパワータイプではなく、必ずセルフパワータイプを使おう。
●小さいけど意外に動く! 各種ベンチマークで性能をチェック
○MS-NH1が備えるハードウェアスペックを確認しよう
MS-NH1のCPUは動作クロック1.33GHzの「Atom Z3735F」。インテルのモバイル向けCPUの定番モデルだが、4コアを内蔵しているため思いのほか処理能力は高い。メモリはDDR3L-1333となり、2GBをオンボードで実装している。ストレージは32GBのeMMC。実際に利用できるのは25GBほどとなるため、容量は少々心もとないだろう。メディアファイルなどはMicroSDカードに記録するようにしよう。有線LANは搭載していないが、Realtek製のIEEE802.11 b/g/n対応無線LANおよびBluetooth V4.0を内蔵しているため、一度設定してしまえばネットワークも入力デバイスもワイヤレスで利用できる。
○各種ベンチマークで性能をチェックしておこう
スペックを見る限りハードな利用は想定されていないと思われるが、最後にベンチマークテストで本機の性能をざっと紹介しておこう。計測したのは、「Windowsエクスペリエンス インデックス スコア」「PCMark」「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」の3点だ。現行のデスクトップPCやノートPCではWindows 8.1の動作に大きな負荷を感じることはすでに無いが、本機のようなデバイスではこういった基本的なベンチマークのスコアが体感に影響してくるだろう。
結果としては、CPU自体の動作クロックやメモリコントローラは数年前のPC並みだが、ストレージの速さが他のデバイスの速度を補い、体感速度を向上させている印象を受けた。2GBというメモリ空間を考え、ハードを特定の処理に集中させることでなかなか快適に利用することができるだろう。一方厳しめのスコアとなるのはグラフィックス項目。「艦隊これくしょん~艦これ~」などのブラウザゲームやフルHD程度の動画再生であれば問題なく動作するが、3Dゲームなどは難しそうだ。
●モバイルバッテリーでも動作可能な驚きの省電力
○モバイルバッテリーでも動作可能な驚きの省電力
最後にちょっとした実験をしてみよう。
MS-NH1はタブレットOCなどと同様、2Aの電源供給で動作している。ということは、モバイルバッテリーでも動く可能性が高い。試しにDC 5V/2.1A出力が行えるモバイルバッテリーを接続してみたところ、問題なく動作が行えた。ついでにDC 5V/1Aのバッテリーも試してみたが、こちらは起動できず。供給されているかのようなわずかな挙動ののち、電源が落ちてしまった。なおモバイルバッテリーでの動作は公式に動作を保証されたものではない。不安定な電源供給によりデータが破損するといった可能性も考えられるので、利用時はしっかりと付属のACアダプターを利用しよう(ただし、自己責任で)。
○何に繋ぐ? どう使う? いままでにない利用方法が考えられるスティック型PC
Windows搭載機としては過去に類のない小型サイズで、衝撃のデビューを果たした「m-Stick」シリーズ。
購入してすぐに便利に使えるという手軽さがある一方、その小型化により性能的な代償も小さくない。しかし逆にそこがハードウェア好きの心をくすぐる部分でもあるのではないだろうか。そのサイズを活かした本機の用途は、思いつくだけでもさまざまだ。家族のブラウジング用としてテレビに接続するもよし、音楽再生用にAVアンプに接続するもよし。また大型ディスプレイを簡単にデジタルサイネージ化したり、プレゼンテーション用スライドの再生機としてプロジェクターに差し込んでおくなど企業ユースの使い方も考えられる。マウスコンピューターは今後もm-Stickシリーズを継続していく方針で、将来的にはハイエンドな製品を発売する計画もあるという。まずはこのMS-NH1で使い勝手を試しつつ、利用方法を模索してみてはいかがだろうか。